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上司は大物タレント


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中村 光昭(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「おーい! ジジイはまだ来てないのか?」と部長が席から叫ぶ。
 
ジジイとは僕の上司のあだ名。若い頃から白髪なので親しみを込めて、みんながそう呼ぶ。意外なことに、本人もこのあだ名を気に入っている。上司と言っても威厳はなく、ダメっぷり全開のいじられキャラ。良い意味での会社でのムードメーカーだ。
 
「そういえば、まだ来てないですね」とYさんが答えた。Yさんは僕の同僚で部の面倒を一手に引き受けてくれるできた人。ジジイの席の隣に座っている。
 
Yさんがジジイの携帯に電話をかけても応答なし。ジジイは予測不能な人なので、まあ仕方ないなあ程度にしかみんな気にも留めていなかった。しかし、お昼近くになってもまだ来る気配がない。今まで無断欠勤をしたことはなかったので、さすがにみんな心配になってきた。それというのも、昨日は部の忘年会。ジジイは大の酒好きで毎度のことながら、相当飲んでいた。いつものことなのでその日はみんな気にしていなかったが、お昼になっても来ていないということは、どこかでトラブルに巻き込まれているとか、あるいはのたれ死んでいるのか。さすがに心配になってきた。
 
「ちょっと自宅に電話してみて!」部長が半ば呆れ気味にYさんにお願いした。
 
Yさんがジジイの自宅に電話してみると、奥さんが電話口で答えた。
「昨日は帰宅していないし、携帯にもでない。行方不明。クレジットカード会社から電話があり、高額な引き落としを試みた形跡があり、カードを使用停止にした」とのこと。
 
ジジイは東海道新幹線通勤なので、時々、飲んで終電を逃しては帰宅せずに東京に泊まっている。奥さんは毎度のことで慣れていたので、帰宅しないのは気にしていなかったが、今回はさすがにカード会社からの電話と会社からの電話でただ事じゃないと思ったようだ。
 
それにしても連絡がないということは事件性が大きい。対策を練り始めた矢先、ジジイがひょっこりと現れた。ジジイはさすがにバツが悪そうに見えたが、何食わぬ顔で自席に着いた。みんな呆れて「まあ、ジジイなら仕方ない」という諦め。
 
そこで僕がジジイに事情聴取をすることにした。
 
「なんで連絡しなかったんですか」と僕が詰め寄る。
「スマホをなくした。連絡先の番号もわからなくなった」とジジイの言い訳。
スマホはiPhoneで、最近、機種変更したばかりで失くしたことにショックを受けていた。
 
「どこにいたんですか?」
「うーん」ジジイの口癖。なかなか言い出さない。
 
「何してたのですか?」
「終電に間に合わなかったので、新橋に行った」と白状。
 
その後の顛末はこうだ。
新橋で中国系女性に声をかけられ飲みに行った。本人もよく覚えていないと言っているが本当に覚えていないのかは定かではない。そのお店でも散々飲んで、そこで寝てしまったらしい。起きたら朝になっていて、財布から現金がなくなっているし、カードも抜かれていた。iPhoneも見当たらない。どこで目覚めたかは教えてくれなかったけど、途方にくれ、まずは帰宅しようと東京から新幹線に乗ったそうだ。そしたら、そのまま寝てしまい。気付いたら京都。スマホはないし、どうしようもなかった。慌てて東京行きに乗り、また寝てしまったので、連絡を怠ったと。それにしても京都まで、寝ていて起きなかったのは凄い。
 
ジジイの体より、みんなが心配したのは忘年会の会費。ジジイが幹事だったため、本人がカードで立替ていて、みんなから集めた20万円ほどの現金を持っていたはず。それもやられたのではないかと。そしたら幸運にも書類に現金入りの封筒が挟まっており、気づかれずに無事だったそうだ。みんなは「ジジイ偉い。よくやった」と褒め称えた。
 
それにしてもジジイは現代会社員とはかけ離れた精神の持ち主。近頃の新人は真面目で優等生が多く、おとなしいと言われているが、ジジイは昔ながらの大物。タレントで言ったら「ビートたけし」か「明石家さんま」並みの大物の貫禄。出世とか会社のシステム全く気にしない。昔は年功序列の時代だったので幸い管理職になれた。過去の武勇伝は数知れず、みんなに迷惑をかけているのだが、本人は全く気にしない。酔って新幹線ホームから転落し、肋骨を数本骨折。いつも新幹線で爆睡しているため、同じスリに4度スられた。た。福岡中洲でぼったくりバーの用心棒と喧嘩して、ワイシャツまでビリビリにされる。海外に行けば、ディスコで朝まで踊り、会議中はほとんど居眠り。英語はあまり上手じゃないのに外国人とのコミュニケーションは誰よりも得意。「出川哲郎」のように誰とでもすぐにお友達になってしまう。なかなかこのキャラクターを今の会社で見つけるのは困難だと思う。サラリーマン天然記念物かも知れない。
 
この一件はいつもの事として笑い話で片付けられた。みんなから愛されている証拠。さすが大物タレント、本人は反省の色を見せず、残ったのは新しく買ったiPhoneと買ったばかりでなくしたiPhoneの2重ローン。本人はそれが一番堪えているらしい。
 
そして、追い討ちをかけるように同僚のDくんがジジイに言い放った。「京都に行ったなら、みんなにお土産を買ってこないとダメでしょ」っと。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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