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空き巣の気持ち


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤 謙介(ライティングゼミ 秋の集中コース|11月開講)
 
 
「あなたは空き巣に入られたことありますか?」
 
私はあります。
 
これは私が大学生の時のお話しです。
当時の私はお金がなく、必死でアルバイトしないと生活できない状態だったので、住んでいたのも洗濯機を玄関の外にドカッと置くような古いアパートでした。
 
そんなアパートに空き巣が入ったのです。
 
確かに私も不用心でした。1階の角部屋で窓は立て付けが悪く、鍵がしっかりかからなかったので、外から開けようと思えば簡単に開けられました。
 
しかし「こんなボロいアパートに泥棒なんて入らないだろ」と高をくくっていたのです。
 
ところが12月の下旬のある日、私は当時習っていた空手の道場の忘年会に参加し、久しぶりにお酒を飲ませてもらい、上機嫌で帰宅しました。
 
ドアを開けて中に入り電気をつけると、散らかった部屋が見えました。もともと男一人が住んでいる小さな部屋です。きれいに片付いているわけがありません。
 
酔った私は「あ~あ~、相変わらず汚い部屋だなぁ」と自分のだらしなさをちょっと鼻で笑いまいした。
 
ところが、それにしても汚い。
 
机の引き出しはすべて開けっ放しで、中身もぜんぶ床に散らかっている。押し入れも中に入っていた布団が放り出されたように出されている。どう見ても、いつもの自分のだらしない部屋以上に散らかっている。
 
そして窓が全開に開いて、風でカーテンがバサバサと揺れていました。
 
私は一気に酔いが冷め、そして
 
「空き巣に入られた」
 
という現実に気づきました。
 
 
◆大事なものを失った悲しみ
すぐに110番に電話をかけました。
 
簡単に事情を説明し、住所を伝えると「10分ほどで到着しますのでそのまま待っていてください」と言われ電話は切れました。
 
とはいえ、空き巣に入られたショックが大きく、何を盗まれたのかを調べようとあたりを見渡しました。
 
ところが驚いたことに、金目のものはほとんど盗られていないのです。
 
当時オーディオだけは父親が買ってくれたDENONの良い機器がそろっていましたが、それはちゃんとある。他にもノートパソコンや家電製品も全部そのままでした。
 
ところが、一つだけ無くなっているものがあることに気づきました。それは若い大学生にとっては宝物と言ってもいいものでした。
 
それは、私がこれまでコツコツ買いためた、しかもお気に入りだけ残していた「エ〇本」のコレクション。
 
なんとこれが一式全部なくなっていたのです!!
 
「ない、俺のコレクションがない!!」
(というか、それ以外は全部ある!!)
 
衝撃で私は部屋の中に一人立ちすくんでいました。
 
 
◆警察官とのやり取り
その時「ピンポーン」とチャイムが鳴り、警察管が2名到着しました。
 
警察官は私に「大変でしたね。ちょっと調べさせてもらいますね」と言って慣れた感じで部屋の中を見回し始めました。
 
またもう一人の警察官はアパートの外をぐるりと見て回り、そして外のエアコンの室外機から窓を開けて侵入した可能性が高いことを私に教えてくれました。
 
そして刑事ドラマでしか見たことない、あの指紋を採取するための「白いポンポン」を始めました。
 
一通り調べた後、警察官から「では盗られたものを確認させてください」と言われ、戸惑いながら私は
 
私:「特に盗られたものはないのですが、男性週刊誌5冊と付属のDVDが」
警官:「男性週刊誌?ああ、エ〇本ね」
私:「はい、エ〇本です……」
警官:「それだけですか?」
私:「はい、それだけです」
警官:「……」
私:「……」
 
そして約1時間の実況見分が終わり「何か気づいたことがあったら連絡ください」と言って警察官は帰っていきました。
 
私は部屋の片づけをしながら、起こったことがまだうまく呑み込めず、とりあえず寝ようと布団をひき、しっかり戸締りして眠りにつきました。
 
 
◆空き巣の置き土産
翌朝、私は前夜に空き巣に入られたことを思い出しながら大学に行く準備をしていました。
 
洗濯するために外に置いてある洗濯機まで行き、蓋を開けたとき、私の目に衝撃的なものが映りました。その衝撃で私は「バンッ」と蓋を閉じてしまいました。
 
「え、嘘だろ??」
 
心臓の鼓動が早くなるのを感じました。
 
そして恐る恐る再度蓋を開けて中をのぞくと、そこにはパンティとブラジャーが「満杯」に入っていたのです!!
 
私は自体が呑み込めませんでした。
昨夜空き巣に入られて、今朝洗濯機の中を見たらパンティとブラジャーが「満杯」に入っている。
 
「え、どういうこと??」
「犯人は空き巣に入って俺のコレクション盗んで、代わりに下着を「満杯」して置いていった??」
 
訳は分からないけど、そのまま洗濯するわけにもいかないので、中身を取り出し、ビニール袋に入れて駅前の交番に行き、昨夜あったことを説明し、「満杯」の下着をすべて預けて大学に行きました。
 
 
◆空き巣の気持ち
そして、その日の昼休みに、大学の友達に昨夜から今朝にかけて起こったことを話しました。
 
「空き巣に入られたこと」
「コレクションが盗まれたこと」
「白いポンポン」
「洗濯機に満杯に入っていた下着のこと」
 
そしてひとしきり盛り上がった時に、友達の浜ちゃんが一言、
 
「その空き巣さぁ、佐藤君のことが好きなんじゃねーの(笑)」
 
と言ったのです。
 
そこからプロファイラー浜ちゃんの推理は加速します。
 
「実はずっと佐藤君のことが好きでさ、それでいない間に家に入ってなんか持っていこうと思ったんだけど、コレクションを見つけて、それで『私以外の女を見るなんて許せない』って思って、それだけ持っていったんじゃない?」
「その代わり、自分の存在を知ってもらうために、自分の下着を置いていったたんだよ、きっと。絶対それ佐藤君のストーカーだよ(爆笑)」
 
私は浜ちゃんのプロファイリングを聞いてゾッとしました
 
「いや、そんな人いたらマジで怖いでしょ……」
 
とはいえ、聞いてみるとその推理もなくはないと思いました。
 
「自分にストーカー。それもかなり癖が強い・・・」
 
その後、警察から犯人の情報はなく事件は迷宮入りしました。
 
しかし、あれから20年たったいまも、私は時々「空き巣の気持ち」を考えてしまうのです。
 
「あの空き巣はどんな気持ちで私の家に入ったのだろうか?」
 
12月が来るたびに、これからも私はあの時のことを思い出すでしょう。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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