君のことをずっと見ていたいと思うよ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Sakko(ライティング・ゼミ日曜コース)
いま始めるのかぁ~~~!!
平日のど真ん中、水曜日の夜21時。
その日は、お迎え時間のギリギリまで仕事して、保育園に子ども2人を迎えにいき、夕食を作って食べ、お風呂に入り、「さあ、寝よう!」とするときだった。
ベッドの上で、毎晩恒例の絵本の読み聞かせを行う。
0歳のよちよち太郎には、お気に入りの「いないいないばあ」
5歳のおしゃべり花子には、自分で選んできた「しらゆきひめ」を読んであげていた。
もう、へとへとで、すぐにでも眠りたかった。
花子を寝かしつるためにはじめた絵本の読み聞かせは、いまや私の睡眠導入儀式となっており、読み終わると一日の終わりを感じ、安らかな気持ちとともに、ゆっくりと眠気が訪れるようになっていた。
そして、2人の子どもに挟まれ、ちょっと窮屈に感じながらも、安堵感と幸せな気持ちを抱えながら、気づいたら寝落ちしている。
それが毎日のルーチンだった。
その日も、いつもと同じようにそのルーチンを終えようとしていた。
絵本を読み終わり、電気を消して、太郎の授乳を終え、2人を横たえる。
ルーチンどおりに、私も眠りにつこうとしていた。
ふと、異変を感じて、暗闇の中でうっすら目を開けると、太郎が仁王立ちしていた。
お、立ってる?
ハイハイもスムーズになり、最近はつかまり立ちも頻繁にするようになっていた。
そろそろ一人で立ち上がることが出来るようになるかもと思っていたころだった。
太郎は、仁王立ちの状態から、すぐに布団に手をついた。
そしてすぐさま、立ち上がり、また手をついた。
それからは、まるで、電池式の動くぬいぐるみのように、同じ動作を何度も何度も繰り返した。
立っちをして、たまに少し長くバランスを保てると、パチパチと拍手したりもする。
数回で終わるかなと見守っていると、いつになっても終わる気配がしない。
こ、これは、もしや「敏感期」だな……。
敏感期とは、マリア・モンテッソーリが考案した幼児教育「モンテッソーリ教育」に出てくる用語である。
モンテッソーリ教育は、欧米では広く普及している教育方法で、オバマ前大統領や、Microsoftのビル・ゲイツ、Facebookのマーク・ザッカーバーグが受けた教育法として日本でも有名になった。最近では、将棋界で活躍している藤井壮太二冠もモンテッソーリ教育を受けていたといわれている。
とにかく、すごそうな教育法ってことだ。
そのモンテッソーリ教育の中に「敏感期」という言葉がある。
敏感期とは、もともと生物学用語のようだが、ここでは、子どもが成長する過程で、心身の発達をとげるために、ある一定の期間、強烈に強い興味・関心をもって熱心に「何か」に取り組む時期のことをいう。
簡単に言うと、「〇〇したい!!」と時間も場所も忘れて取り組むことである。
子どもを育てた経験のある方は、ぴんとくるかもしれないが、延々と階段を上り下りしたり、ティッシュ箱からティッシュがなくなるまでシュッシュと出し続けたり、箱にものを入れては出したり、とにかく「どうしたの? 大丈夫??」というくらいに1つのことを集中して繰り返すことがある。
これは、本人の気がすむまでやらせてあげると、達成感や満足感につながり、幼児期の成長の上でも大切だとされている。
だから、できるだけ、温かく見守ってあげていたい。
が、しかし!
いま、この時に始めるのか!!! ということも多々あるのである。
その日の立っちの練習もそれである。
もう眠りたいのに……。
花子も楽しそうにみているが、明日も仕事だ。早起きしなくてはならない。
夜更かしをしたら、明日、子どもたちはちゃんと起きられるだろうか。
でも、見ていると本当にかわいい。
暗闇で、何度も挑戦する太郎。
うれしいそうにパチパチと手をたたく。
そんな姿を前にすると、「敏感期」の大切さを思い出す。
心の中で睡眠時間と敏感期のどちらを優先するか考える。
う~~ん。
今日は、「敏感期」の勝ち!!
最後までつきあう覚悟を決める。
立っちの練習は、それから2時間近く続いた。
気づけば、花子はすでに眠っていた。
太郎も力つきて、ベッドの上で少しゴロゴロ転がった後、ぱったりと動かなくなり、すやすやと寝息を立て始めた。
私もそれを見届けた後、吸いこまれるように眠りについたのだった。
敏感期の時の子どもの顔は、本当に生き生きと、そしてとても真剣な顔をしている。
うれしいときは満面の笑みを浮かべ、喜びの叫び声をあげる。
こんな顔をいつまで見ていることができるだろうか。
3歳にもなると、簡単な嘘もつくようになり、本当に純粋な笑顔がみられるのは、おそらく2歳くらいまでな気がしている。
この時の笑顔を目に焼き付けておきたい。
君のことをずっと見ていたいと思う。
でも、ずっと見ていることはできないから、今は、この瞬間は、すべてを忘れてじっと君のことを見つめる。
***
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