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ボランティアをする意味ってなんだろう? 


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山岡香夏(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「今日も皆さん、いい顔してますねー!」
ボランティアリーダーのAさんが、いつものように大声で長々と話し始める。
「Aさん、話が長いよー!」と声がかかり、みんなが笑う。
 
今日は月に一度の、セミナーの日だ。NPO法人が主催する、児童養護施設や里親家庭で暮らす高校三年生に向けたセミナーである。
 
児童養護施設とは、何らかの事情で、自分の家で暮らせない子どもたちが暮らす施設だ。原則として、子どもたちは18歳になって、高校を卒業したら、暮らし慣れた児童養護施設を巣立って、一人で暮らしていくことになる。親を頼れない子どもたちに、一人で生きていくための知識や情報を伝えるのが、このセミナーの役目だ。
 
セミナーはいくつかの街で行われていて、私は都内の大きな街で行っているセミナー会場のボランティアを担当している。
8月から1月までの間に、毎月一回、丸一日かけて六回のセミナーが行われるが、今日はその4回目だ。
 
毎回、グループ分けがあり、メンバーが違う。今日のグループをホワイトボードで確認して、指定された席に座ると、目の前でBくんが嬉しそうに、自分のファイルをめくっていた。
そこには、前回までのセミナーで、みんなから書いてもらった「メッセージカード」がファイリングされていた。
「こんなのもらったんだよ!」と、筆記体の英語で書かれた、かっこいいメッセージカードを見せてくれた。
 
隣に座ったCくんは、これまで出会った人間の中で、トップランクのおしゃべりだ。今日はじめて話したにもかかわらず、マシンガンのように色々なことを話してくれる。昨日の大学受験のこと、趣味のこと、部活のこと、家族のこと、好きな女の子のこと。
でもCくんは、自分のことを話すだけではなく、私の話もちゃんと聞いてくれる。たくさんのおしゃべりは、Cくんなりの気づかいだと分かった。
 
Cくんが突然
「俺がボランティアになるにはどうしたらいいの?」
と聞いてきた。
「えーっと確か……ボランティアになれるのは、社会人になって一年後からかな?」
答えながら、Cくんとボランティア仲間になれたらいいなと、嬉しい気持ちになった。
 
夕方、セミナーも終わりに近づき、メッセージカードの交換タイムがやってきた。メッセージカードは誰に何枚書いてもいいけれど、私はその日に、同じグループになった高校生だけに書くことにしている。
 
BくんとCくんにメッセージカードを書いていると、遠くの席からタタタっとDちゃんが走ってきた。手にはメッセージカードを持っている。私が差し入れたおせんべいに気づいて、そのお礼を書いてくれたのだ。
私も急いでお返しのメッセージカードを書いて、渡しに行った。セミナーの中で、Dちゃんが演じた寸劇のことをほめたら「無理矢理、やらされたんだよー」と、かわいい笑顔で照れていた。
 
高校生が帰った後は、大人だけで会場の片付け。みんなテキパキとよく働く。
 
最後に、振り返りの時間がある。その場で大きな円になり、立ったままで、NPO法人のスタッフとボランティアの大人たちが、その日の感想や情報を簡単に共有し合う。
 
その中で、Dちゃんの話が出た。大学の推薦入試に落ちたため、大学への進学はあきらめて、専門学校に進学するとのことだった。
 
1回目のセミナーで、同じグループになったDちゃんは、大学に行きたいと話してくれた。
「児童養護施設出身者は勉強ができないと言われないように、がんばってるんだ」
「施設の小学生に勉強を教えてる」
そう話してくれたDちゃんは、キラキラと輝いて見えた。
 
そのDちゃんが、高三の11月に、大学受験をあきらめるとは驚いた。大学の一般入試は年明けに行われるからだ。そして悲しい気持ちになった。
もし普通の家庭で育っていたら、一般入試のチャンスもあったのではないか。あれだけ勉強に熱心なDちゃんこそ、他の誰よりも、大学に行く資格があるんじゃないか。
色々な気持ちが浮かんでくるけれど、Dちゃんと私の関係は、児童養護施設で暮らす高校生とボランティアの大人、それ以外の何者でもない。私にできることは、次に会ったとき、Dちゃんが話してくれることを聞くことだけだ。
 
ボランティアの何人かが残って、ファミリーレストランにお茶をしに寄った。コロナ禍で飲み会は難しいけれど、マスクをしながら、高校生抜きで話せるお茶会は貴重な時間だ。
 
先輩ボランティアのEさんが、みんなに声をかける。
「来月はクリスマスが近いから、高校生に喜んでもらえることを考えませんか?」
 
次々にアイディアが出てくる。
「100円ショップでサンタの帽子を買って、当日はみんなで被ろう!」
「パーティー料理は無理だけど、せめて個包装のスイーツを用意したいね」
「コンビニエンスストアに、かわいいケーキがありましたよー」
みんな、高校生が喜ぶ顔を想像して、ニコニコしながら話し合っている。
 
タイムキーパーのFさんが、「あと2分で終わりにしましょうー」と声をかけてくれた。あわてて話をまとめて、席を立った。
「また来月、よろしくお願いしますー!」声をかけあって解散した。
 
ボランティアをする意味ってなんだろう? 私は自分の無力さから、ときどき考えてしまうことがある。高校生の親になれるわけでも、学費を出してあげられるわけでもない。他の誰がやっても同じだし、私がいる意味なんかないんじゃないか。
 
でも何より、私自身が、高校生やボランティア仲間に元気をもらって、明日からの毎日をがんばれる。相手のためというより、自分のためにやるのが、ボランティアをする意味だと私は思っている。
 
今日の私はどうしたんだろう。
Bくんがメッセージカードを見つめる嬉しそうな顔、Cくんがボランティアになりたいと言ってくれたこと、Dちゃんが書いてくれたメッセージカード。
そして、高校生のことを思いながら、楽しそうに話すボランティア仲間の顔を思い出すと、涙が止まらない。
 
来月も私は、スーツケースにクリスマスの飾り付けと、差し入れのおせんべいをつめて、セミナー会場に向かうだろう。
また、高校生たちの笑顔が見たいから。
 
 
 
 
***

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2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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