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私とアキちゃんとハーベスト


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:本間 八重(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
転校を経験したことありますか?
 
この問いには、たくさんの回答があると思います。
親が転勤族であったり、家を建てたり、やんごとなき事情であったり、もしくは一度も経験がない方もいると思います。
 
私は、社宅から家を建てる時に隣町へ引っ越しました。
小学校3年生の時でした。
 
各学年2クラスしかない田舎の学校、そしてあまり人の出入りが多くないようで、転校から1週間は「物珍しさ」だけでチヤホヤされました。
1週間が過ぎてなんとなく周りも落ち着き出した頃、私はあることに気付きました。
 
2列向こうの席に「アキちゃん」という子がいつもポツンと一人で座っているのです。
 
近くの友達に、聞きました。
「アキちゃんは何でいつも一人なん?」
 
友達は
「アキちゃん、好きやないわー、なんかいつも綺麗ちゃうし……みんなそう言ってるで」
と答えました。
 
まだまだ小学校3年生、9歳の子供、しかも今と違って極度に引っ込み思案で、自己肯定感の低い自信無し子ちゃんだったので、反論も庇うことも出来ず、何も言えませんでした。
 
ただ一つ言えるのは、その友達の発言に違和感を感じて共感しなかったということです。
 
私は、その違和感の原因を探そうと思いました。
 
そしてチャンスはあっさりと巡ってきました。
ある体育の日、アキちゃんと並びが隣同士になったのです。一言もまだ話したことのないアキちゃんがどんな人物なのか興味津々でした。
ゆっくりと隣を見た時、アキちゃんの体操服はお世辞にも綺麗とは言えないものでした。
だけど、私は勇気を出して話しかけよう!と思いお天気や気温など、たわいもない話を振ってみました。
実は無視されたらどうしようと少し怖かったんですが、アキちゃんは少し微笑んで小さな声で話に応じてくれました。とても優しい、おとなしい子でした。
 
そして、さらに勇気を出して、言いました。
「今日、学校終わったら遊ばへん?」
内心ドキドキでした。
 
そうしたらアキちゃんはとっても笑顔で「ええよ」と答えてくれました。
 
学校から帰って、ランドセルを置いて、急いで待ち合わせの堤防へ自転車で駆けつけました。
 
私の母に少しだけアキちゃんのおうちはあまり裕福でなさそうなことを伝えてありました。
母は、簡単だけどおやつに小さなおにぎりを二つラップにくるんで私に「アキちゃんと食べな」と渡してくれていたのです。
 
堤防でオニギリを食べて、その後は小学校へ遊びに行きました。
鉄棒をしたり、タイヤの遊具で遊んだりしていたら、私たちを見つけた担任の先生が走ってこちらに来ました。
先生は私に「アキちゃんと遊んでくれてありがとう」と言いました。
私はなんだかそれはおかしいと思って「先生、ありがとうってなんでかわかんない、私はアキちゃんと遊んでみないい子かどうかもわからんし、私が遊んでみたいと思っただけ」
そうして「先生、ありがとうって変だよ」と言ったら、普段はすぐ雷を落とす、怖い怖い先生がなぜか涙ぐんで、ちょっと待ってと言って職員室へ戻り、私たちに「ハーベスト」を一つずつ渡して職員室へ戻りました。
(※ハーベスト:セサミ風味の薄いビスケット)
 
その時は何で先生が涙ぐんでいたかわからなかったけれど、今ならわかります。
先生は、クラス内でお友達のいなかったアキちゃんのことが心配でたまらなかったのだろう、先生も悩んでいたのだろうと。
 
アキちゃんと楽しく遊んで、その日はバイバイしました。友達になれた気がしました。
 
そして、その日から何日か経ったある日、突然告げられたアキちゃんの転校……
アキちゃんから何も聞いていなくてショックだったけれど、家庭の事情があったと後から風の噂で聞きました。
 
携帯電話もない時代の話、私はもしかしたらアキちゃんが話すのを忘れてたよって、あの日待ち合わせをした堤防にいるのではないかと、何回も学校帰りに寄りました。
だけど、アキちゃんが現れることは一度もありませんでした。
 
その時は二学期の終わりでした。終業式でもらった通知表をみてビックリしました。なんと、学習と反対側の生活面が「オールA」後にも先にも、オールAをもらったのはこの時だけです。狙ったことでは全くなかったのですが、先生がそんなに評価をしてくれるとは驚きました。
 
私が人の噂に流されず、自分に素直に行動したことを評価してくれた先生。
当時、自信無くて人前で自分の意見が言えなかった私に、自信と自己肯定感を少しだけ持たせてくれた事に感謝しています。
 
3学期、私は勇気を出してクラスの中で、班長に立候補しました。
学級委員とか言えればカッコ良いのですが、当時の私にはまだまだそれが精一杯。
 
だけど、自分自身が勇気を持って踏み出せた第一歩だったことに間違いありません。
 
今でも、自信が無くなった時にこの話を思い出します。
人にの意見に流されず自分の心に正直になって、また小さな一歩から踏み出せば良いんだよということを。そして、お茶うけにハーベストも忘れずにね。
 
 
 
 
***

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2021-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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