メディアグランプリ

ゼロ円の寄付で得られる幸福感


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記事:Aya Fukuhara(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
「寄付」と言うと、私にとってものすごくハードルが高い行為だ。
お金持ちではないから、できても少ししか寄付できないし、どこに寄付していいかもわからない。少額の寄付なんて、大した助けにはならないだろうし、ビル・ゲイツや宇宙に行けちゃうようなセレブな社長がドカっとするもんだと思っていた。
 
全く寄付に興味がなかったわけではないし、国内の震災・災害の時は、5000円程度は何度か寄付をしたことがある。
でも、「いい事ができた」とか、「助けになることができた」という気持ちになれたことは一度もなかった。
 
結局納得のいく寄付をできないまま、30年以上生きてきてしまった。
そうこうしているうちに、世界ではまた大変なことが起きてしまう。
観光業、飲食店、医療業界、様々なところで身近な人達が影響を受けていた。
対して私は幸いなことに、在宅で仕事ができるために感染リスクから離れながら、ぬくぬくと以前と変わらない仕事と収入を得ていた。
こんなに大変なときに、私はまた何もできないのだろうか。
 
自粛期間の暇を持て余した私は、手作りマスクを量産した。裁縫は趣味だしマスク不足らしいから友達にでも使ってもらおう。
思いの外好評で、友人の何人かが「お金出してでも買うから、絶対売るべき」と言ってくれた。
「うーん、でもこんなの素人の趣味の産物だし、お金をもらうのは申し訳ないな」
「手間がかかってるんだから、対価はもらうべきだよ!」
友人の言葉に自信をつけて、ハンドメイド品を販売できるWebサイトで販売することを決めた。
お金を取るのはやっぱり気が進まなかったので、売上金はWHOのコロナ対応基金に全額寄付することにした。
SNSに投稿すると、週末で作った分のマスクはあっという間に売れた。
売上金でWHOに5万円を寄付することができた。少なくとも私にとって5万円は大金だ。
元手ほぼゼロで、生まれて初めて大金が寄付できてしまった。
寄付金をオンライン決済するとき、こんなにクレジットカードの番号入力が嬉しかったことはない。購入者数十人を代表している気分でなんだか誇らしかった。
 
カナダの心理学者のエリザベス・ダンという人がこんなことを言っていた。
「お金を寄付するという行為はその金額の倍の収入を得るのと同じくらいの幸福感をもたらす。ただし、その幸福度は必ずしも金額に比例するものではない。
効果的なのは、自分のコミュニティが持つ善意を認識しながら行うこと。複数の人と一緒に協力しながら支援活動をすると、人はより喜びを感じる」
のだそうだ。
善意の輪、と呼ぶのもこそばゆいけど、つまりそういうことなんだな、と納得できた。
 
さて、この話はこれだけで終わらなかった。
販売が一段落ついた後、ほしいと言ってくれた友人数人にマスクを送って、支払いは断っていたところ、複数の友人が、
「Ayaへの御礼の代わりに、その分のお金を支援したい団体に寄付するね!」と言ってきたのだ。
マスク1枚で日本赤十字に1000円、ユニセフに2000円、国境なき医師団に3000円……
次々に支払い画面のスクリーンショットが送られてきた。あっという間に合計1万円が任意の団体に寄付された。
またダダで間接的に、しかも複数の団体に寄付できてしまった!
 
どうやらこの自粛期間中、友人間で、自分の特技を提供して、対価はもらわずに代わりに好きな団体に好きな金額を寄付してもらう。という活動が流行っていたらしい。
無料オンラインヨガレッスンをしてお代は寄付報告(金額問わず)、という人もいた。
誰が考えたのか知らないが、この仕組み、ちょっとすごいことだと思った。
 
①誰かが空いた時間で自分の特技を提供する。
収入や対価を目的としていない場合、感謝の言葉だけで十分満足できるのでその人の目的はこれだけでも達成される。
②サービスを受けた人はお礼の分だけの対価を自分の興味のある団体に寄付する。
普段だと寄付がなんとなく億劫でも、サービスの対価であれば抵抗なく支払いができる。
余裕がなければ寄付はしなくてもいい。お礼を言えばそれが対価になる。
③寄付した人はサービス提供者に寄付の報告をする。これで相手も間接的に寄付した喜びを得られる。
前述のエリザベス・ダン氏の研究で言えば、2者がそれぞれその寄付額の倍の収入を得るのと同じ幸福感を得られる。つまり同じ金額で倍々効果なのだ!
 
お金を取れるような特技がなくてもいい。普段からこういうことができれば素敵だと思う。
お礼を言う機会はだれにでもいくらでもある。
例えばホームパーティで手料理をご馳走になったお礼に、TABLE FOR TWO(後進国の子供に給食を提供する機関)に500円寄付するとか。
ちょっと仕事を手伝ってもらったお礼にコンビニの震災支援寄付箱に100円投げ込むとか。
私なら「先日のお礼です」と、とらやの羊羹みたいな高級菓子を差し出されたら恐縮しまくるが、「お礼に教育支援のNPOに3000円寄付しました」と言われたら絶対嬉しい。
 
もちろん寄付する人、サポートする人だけが偉いわけではない。
余裕がある人ができることを無理せずできる範囲でやる。
偽善でもなんでもなく、たまたま支援側に回る余裕があるという環境にいること、それに対する謝礼のようなものだと気楽に考えるようになった。
今どき、スマホで少額から簡単に寄付できる時代だ。
こうやってもっと寄付が身近になったら、普段から得られる幸福度は増すんじゃないだろうか。
 
 
 
 
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2021-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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