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メディアグランプリ

ブラック生まれホワイト育ちの仕事術


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Aya Fukuhara (ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
「えええ! 有給って親が死んだときしか取れないんじゃないんですか!?」
「ううん、それは忌引って言うんだよ。有給休暇はいつでも好きなときに取ってね。ちなみに普通の有給休暇とは別途で有給の病気休暇もあるから、体調が悪くて休むときはそっちで申請してね。
あ、もう5時だから早く帰ってね。お疲れさま〜」
 
新しい会社に転職した初日、上司に追い出されるように会社を出た。
ブラック企業叩き上げで毎日終電帰りだった私は、まだ日が沈みきっていないオフィス街の真ん中で途方に暮れてしまった。
前職は、福利厚生も整っていないイケイケのベンチャー企業。残業・徹夜は当然で定時きっかりに上がったことなんてなかった。
えーっと、これから寝るまで何しよう。馴染みのバーもまだオープン前の時間だ。
「と、とりあえず帰って今日もらった引き継ぎ資料でも読み返そうかな……」
会社を追い出されても何か仕事をしようとするところが往生際が悪い。
 
いや、ブラック企業で限界まで無理してきたからこそ、そろそろワークライフバランスがしっかりした会社で腰を落ち着けてキャリアを積みたい。そういう要望があっての転職だった。だからこれは全て私の望み通りなのだ。
そうなのだけど……それまで都市伝説だと思っていた有給やNo残業の概念が新鮮すぎて、ちょっと理解が追いつかない。
 
が……人間の適応力というのは恐ろしいものである。
3ヶ月の試用期間が終わる頃には、私はすっかりホワイト企業の環境に馴染みきっていた。
朝から集中して仕事をして、定時に帰る。
この会社では”残業が多い=仕事が遅い”というマイナス評価につながる。
限られた時間で最大限のパフォーマンスを発揮することが求められていた。だから上司も残業はさせないよう注意するし、有給も積極的に取らせようとする。
その反面、成果が出せないと容赦なくクビになる、という外資系企業によくあるドライなプレッシャーとも隣り合わせだったが、私には性に合っていたようだ。
ブラック企業で散々無理をしてきた後でホワイト企業の働き方に上手く調整することで、だんだん仕事のメリハリの付け方も上手くなってきた。仕事に優先順位をつけて、重要度の低い仕事は短時間でさっと片付け、重要な仕事は多少無理してでも頑張る。いざというときに無理が効くのはブラック仕込みの強みだ。
そのお陰で、繁忙期以外は堂々と有給を取って海外旅行にも行ける。最高のワークライフバランスだった。本当に、転職して良かった!
 
そんなパーフェクト・ホワイト企業でも不満が無いわけではなかった。
自分で責任を負おうとしない、いわゆる「他責思考」社員が多いことに苛立ちを感じるようになったのだ。
 
仕事を突き返してくる事務職の女性。
「こういう仕事は営業でやってください。他の仕事で手一杯なので」
(いや、これはあなたの仕事の範囲内ですよ! 忙しいって言いながらネットサーフィンしてるの気付いてるんだからね!?)
自分のミスがあっても対応してくれない制作担当者。
「この件、今日中に対応するとか無理です。前もって言ってもらわないと」
(いやいや、それはあなたのミスのせいで余計に発生した仕事なんですけど! 自分のケツくらい拭いてくれー!)
もちろん皆がみんなと言うわけではないのだが、自分の責任を認めず、人に押し付けてでも仕事量を最小限に収めようとする人達のスタンスには驚いた。
前職ではみんなで遅くまで残業して、協力しながら頑張って仕事をしていたのに。
 
思わず先輩に愚痴を言ってしまう。
「うちの会社って仕事しない人多いですよねー。責任感ないっていうか」
「……まぁ最後まで責任持って頑張って仕事しようとか、そういう考えをしない人もいるよね。”定時の間に最低限できる範囲のことだけやる”のが責任範囲っていう考え方もあるだろうから」
「そういう考え方なんですかねー。なんか納得いきませんけど、そういう働き方もありなんですねぇ……」
そんなんじゃ成長できないんじゃないですかねぇ、という言葉は飲み込んだ。
 
人それぞれの働き方に関して私が文句を言う権利は1ミリもない。
こうやってこの会社が回っているのだし、そういう人たちが仕事を断っているお陰で会社全体の仕事量が上手い具合にセーブされている側面もあるのかもしれない。
もし全員が自分の責任範囲を超えて頑張ってしまったら、仕事が増えすぎてホワイト企業ではなくなってしまうのかも。それに、会社員である以上ある程度仕事に線引きをすることも必要だ。彼らから見習うべきこともきっとある。
 
私は私でブラック企業で学んだ自責思考を大事に、ホワイト企業の職場環境と福利厚生に感謝して、自分の仕事を納得行くようにやればいいだけだ。
今では、体力がある20代のうちにブラック企業で働いていたことが、私のキャリア形成で重要なステージだったと胸を張って言える。
 
人生に、無駄な経験は何一つない。
 
※余談になってしまうが、大切なことなので最後に断っておきたいことがある。ここでは単に労働時間が長くなりがちな会社を”ブラック企業”と読んでいる。
パワハラやモラハラが横行するような漆黒のブラック企業は対象外だ。
私は短期だが後者のような漆黒ブラック企業でも働いていたことがある。結果、追い詰められて精神科にお世話になり、退職した。そういうブラック企業では良いことは何一つ無いと断言できるし心身に関わるので、全面的に否定したい。
 
 
 
 
***

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2021-01-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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