「ミセス〇〇」は田舎くっさい子から生まれた
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記事:本間 八重(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
「あんたの彼女、田舎くっさい子やねぇー」
それは忘れもしない、初めて彼氏の実家に遊びに行き、帰り際にご挨拶をし、靴を履き終えて出た瞬間……玄関の扉の向こうから聞こえてきた「彼のオカン」の言葉であった。
おそらく彼(息子)にだけこっそり言ったつもりだったのだろう。
「今なんて!?」あまりのショックに目の前がくらくらした。
そもそも、ちょっと待って。
当時(1990年代)私達は三重県に住んでいて、私は四日市市、彼は鈴鹿市に住んでいた。
私の住んでいた地域はそこそこ大きな「国道」が近くを通っており、彼の家は「田んぼのど真ん中」にあるような「ド田舎」だ。
東京で言ったら、23区と、23区以外の差があるくらい(個人的な尺度です)彼の住んでいるところの方が明らかに「ド田舎」なのだ。
そのド田舎住みで、割烹着で恰幅の良い絵にかいたような「THE・オバチャン」のオカンに「田舎くっさい子やねぇー」
と言われた私のショックは伝わるだろうか。
ただその時の私は、本当に田舎くさかった……そしてとてつもなく「ダサかった」
それは紛れもない事実である。
その日を境に、私の「綺麗になりたい」スイッチが発動した。
でも、どこから手を付けて良いかわからない。
まずメイクから手を付けてみよう!と少し有名なメークアップアティストのイベントに行ってみた。
「まぁ、この子すっごい太い眉毛ね~鯉の滝登りだわ~」大勢の前でネタにされた。
その場では笑ったが、本当は悔しくて恥ずかしくて後でこっそり泣いた。
次はヘアスタイルを何とかしようかなと「ソバージュ」をかけた。
そして、友人の集まりに参加したときは「ラーメンパーマかけたの?」と笑われた。
悔しいけど、出前一丁の袋麺を開けてみたら「クリソツ」であった。
※ソバージュとはウェーブパーマである
服装も何とかしようと近所の「ジャスコ」で2時間かけて選んだ。
太い毛糸で編まれたピンク色がベースのオーバーサイズな「水玉セーター」と、中途半端なひざ丈の「チェックのフレアスカート」それに「くるぶし丈のソックス」を足首で三つ折りして、足元は「ノーブランドのスニーカー」今考えたらありえないコーディネイトである。その格好で友人から誘われた「光GENJI」のコンサートに行ったら、友達のフリをしてもらえなかった。
手あたり次第やっているように聞こえるかもしれないが、私には1つだけ「ポリシー」があった。
それは「自分の持っているものを100%生かす」ということ。
すなわち「整形」などに頼らないということ。
しかし、何をやってもうまくいかない……
「綺麗」ってどうやってなればいいんだ?もうわからなくなっていた。
その時、私は閃いた!
綺麗って言えば「モデル」なのではないかと。
「モデル」として認められたら、綺麗になれたってことなのではないかと。
当時、三重県にモデルエージェンシーはなかった。
隣の大都会、愛知県をタウンページで調べてみたら7社ほど見つかった。
何もわからないけど、まず名前を聞いたことのある3社のモデルエージェンシーに履歴書と写真を送った。
結果「書類審査不合格」
現実はやはりそんなものだ。簡単に有名なモデルエージェンシーに所属できるわけがない。
だけど、あきらめたく無い。
次に名前は聞いたことはないが、残りの4社に送った。
そしてそのうちの2社で書類審査合格をするも、そのうちの1社は二次面接で落ちた。
残るは1社……もうここに望みをかけるしかない!
そしてそんな意気込みを感じてか最後の望みをかけたところで面接も合格した。
合格通知が届いた日、飛び上がって喜んだ! 私にとって「人生最大の快挙」であった。
事の発端となった彼氏とはその時すでに別れていた。
モデルになったはいいが、バブル崩壊後の時代で仕事がたくさんあるわけではない。
オーディションを受けては何度も落ちて、ウォーキング、ポージングなど努力を重ね、やがて大きなファッションショーモデルも勝ち取ることができた。
そこから7年間、途中で就職し社会人となるも、仕事と両立をしながらモデルを続けた。
モデルを引退したのは、結婚して子供ができた頃、どうにもモデルを続けることが難しくなった時だ。
その頃には「田舎くっさい子やねぇー」と言われたことはもう笑い話になっていた。
田舎くさかった当時の私の本来の目的はもう十分すぎる程、達成できていた。
そして、そこからさらに10数年経った2020年、私は新たなチャレンジをしようとミセスのビューティコンテストに応募したのであった。
「ミセスクイーン」という世界大会出場権を得るためのコンテストに応募し、書類選考、地方予選を通過し、なんと現在日本最終16名の「ミセスクイーングランドファイナリスト」となった。
(※ミセスクイーンの本質は社会貢献活動であり世界大会へ行くことがすべてではない)
さらに2021年2月のグランドファイナル(日本大会)で入賞したら「JAPAN」代表で世界大会へ行くことになる。
やっとここまでこれた。
(途中で腐らなくて本当に良かった 笑)
紆余曲折あったが……数々のショックな事をバネにし、諦めずに目標を持って進み続けた事は私の人生にとって「宝」である。
人生とはそんな「宝」の積み重ねなのかもしれない。
***
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