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18年前の夏、人生の転換点

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大木 淳(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今日から1か月お世話になります!」
 
長野県茅野市。駅まで迎えに来た副店長に元気よく挨拶をして車に乗り込んだ。
 
最初が肝心だ。明るく元気よく! を心掛ける。
 
車はやがて山道を登り始め、いくつかのカーブを曲がりながら上へと向かう。
 
駅から1時間経った。標高1,000m程。これからお世話になる旅館が見えた。
 
夏には家族連れで賑わうリゾート地の旅館。
 
夕食にバーベキューも選べる。
 
街の慌ただしさを忘れ自然の中で過ごすことができる旅館。
 
手ごろな価格と温泉が人気だ。蓼科湖が近くにある。
 
大学2年生の夏。単身で1か月の間、旅館でアルバイトをすることに決めた。
 
リゾートバイトというやつだ。
 
憧れていた海外への1人旅に行く勇気が出ず、アルバイトで稼いだお金をすぐに消費してしまう何でもない大学生にはぴったりの選択だったと思う。
 
高級リゾートホテルでは無く、自分でも受け入れてくれそうな雰囲気を感じてこの旅館の募集に応募した。
 
到着すると、店長やスタッフの方々に挨拶をして、館内を見学してから、これからお世話になる部屋に案内をされた。
 
旅館から徒歩1分のコテージ。明日から来るアルバイトの方々と相部屋になるとのこと。
 
一番乗りなので気に入った場所を陣取り、明日から一緒になる仲間を迎え入れることにした。働くのは明日からになる。
 
翌日の朝。さすがは標高1,000m、毛布が無いと風邪をひいてしまう。
 
10時に集合してロビーや客室清掃に取り掛かる。
 
勤務はシフト制で、朝からフルタイムの日もあれば、10時から開始の日もある。
 
明日は早朝6時集合。
 
朝食の準備や片付けから始まり、昼間はロビーや客室清掃。
 
夕方になると夕食の準備、バーベキューのセッティングや布団敷きを分担する。
 
最後に夕食の片付けをして1日が終了になる。
 
中でも布団敷きが好きだった。
 
夕食時間に客室を回り布団を敷いていく。
 
コンビを組むのは70歳のおじいさん。
 
背が低く、寡黙な性格で、みんなからは「なりちゃん」と呼ばれていた。
 
なりちゃんは、昔名古屋にいたそうだが、訳があってこの旅館で働いていた。
 
休日に街へ出てパチンコをするのが趣味で、テレビはNHKしか見ない人だった。
 
なりちゃんのお気に入りだった名古屋の喫茶店の話を聞きながら布団敷きをすることが好きだった。
 
リゾートバイトのメンバーは自分を含めて12人だった。
 
相部屋には京都からの大学生3人組。1つ年上で、3人とも夏は3年連続でこの旅館でアルバイトをしていた。分からないことがあれば3人の内の誰かに聞けば何でも解決した。
 
相部屋で生活するのは初めてで、最初は慣れなかったが、「チャンプ」というあだ名を付けてもらったりと、自分が溶け込めるようにしてくれたことは今でも感謝をしている。
 
他には東京から来ていた男性2人組。少し風変りな性格で他のメンバーからは距離を置いていた。
 
女性陣は6人。名古屋、京都、神戸からそれぞれ2人組で来ていた大学生。
 
ここへ来なければ出会わなかったメンバー達。
 
毎日多くの仕事をこなさなければならなかったが、みんなと協力しながらとりかかり、
 
夕食の片付けの最後の皿洗いが終わった後、みんなで賄いを食べることが楽しかったし、充実した気持ちになれた。
 
休みの日には誰かを誘って蓼科湖や近くのロープウェイへ遊びに行ったことが懐かしい。
 
8月も終わりにさしかかり、早くも後1週間でアルバイトが終わりになる頃。
 
東京からの2人組、風変りな男性2人と夕食に行くことになった。
 
旅館から歩いて30分くらいのイタリアンレストラン。リゾート客でとても賑わっていた。
 
2人ともとても楽しそうで、気に入ったメニューを次から次へと頼んでいた。
 
ワインも無くなるとすぐに追加して、一緒にそれを飲んだ。
 
2人の話を聞いていて分かったことがあった。
 
1人は自閉症で、この旅館へ来るまではずっと部屋に引きこもっていたそうだ。
 
このアルバイトを通して、今までと違う環境や人たちと出会うことで何かが変わればと、
 
思い切って募集をしたということだった。
 
「この話をできて良かった。今までで一番楽しい夕食になった」と言ってもらえた。
 
今までは彼らと距離を置いて接してきたが、気持ちが分かり合えた時間になった。
 
別れの日。
 
9月にさしかかり、1か月前よりも寒くなった朝。
 
荷物をまとめ、仕事中のみんなに挨拶をしにいく。
 
自分だけが一足先に帰ることになっていたので、集合写真の自分は前列の真ん中にいる。
 
駅まで送ってもらい、電車を乗り継いで名古屋まで帰った。
 
久しぶりの名古屋は猛暑が続いており、そして都会だった。
 
18年経った今でもみんなのあだ名と顔は思い出すことができる。
 
短い夏の1か月、旅館で働くことの充実感、仲間と分かり合えることの大切さを学んだ。
 
今思うと、この1か月の体験が人生の転換点だった。
 
大学を卒業すると、旅館では無いがホテルに就職した。
 
そして今も、ホテルで働いている。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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