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メディアグランプリ

町中華が教えてくれるもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北川 亮太(ライティング・ゼミ日曜日コース)
 
 
「この、安心感はなんであろう」
 
どこの街にもありそうな、フツーな中華料理屋、いわゆる「町中華」で何とも言えない安心感を味わったことはないであろうか。
その安心感を自然と醸し出している町中華は、実はこれからを目指す社会のお手本となっていることにふと気がついた。
 
ここ数年、世間で注目され、社会も企業もメディアも堰を切ったようにSDGsという言葉を頻繁に使い始めた。
SDGsとはSustainable Development Goalsを略したもので一言で言えば、「誰にでも優しく、フェアで暮らしやすい社会を作って行こう」を実現するための目標。
と聞いたところで、やはり雲を掴むような話。言葉だけが一人歩きしているような感じだ。
ではどうするか。
あれこれ考えても、先が見通せない。まずはどの町にも必ずある身近な町中華に足を運んで、その在り方を観察してみよう。
 
まずは、入り口。趣のある店構えは店の雰囲気を物語る。
数十年は使い続けられている張りのない暖簾に、味のある店名の漢字フォントが載せられる。またきっと鮮やかな赤ではあったであろうテント屋根は銅色にエイジングしている。
「長く使えるものを愛し、それを最大限に利用する。限られた資源を大切にする」そんなことを無言で語りかけてくる。
持続的に成長する店の在り方のお手本だ。
 
さあ、早速店内へ。
まず、存在感のあるオープンキッチンが目に飛び込んでくる。これが町中華の象徴。ここでは調理場の清も濁も全てが見通せ、何も隠さない。雑然とした店内、油のこびりついた空調、そしてビニール袋がぎっしり詰まった冷蔵庫。この潔さは小気味好い。
また、全ての調理工程が可視化されている料理のライブショーは、お客さんに興奮と安心を同時に与えている。
この透明性が人々を惹きつける。透明性は人々の信頼を得る一番の要素だ。
 
店内をよく観察して見ると、店員さんは皆同じように見えて実は個性的だ。同じ制服を着ているとは言え、絶妙な着崩し方をしている。ある人は前のボタンを外して純白とは言えないアンダーウェアをワイルドに見せたり、またある人は清潔のイメージとは真逆の金色にネックレスをヒップホップスターばりに首元に輝かせている。それぞれが制約された中でも自分のスタイルを確立しており、それが個性として自然に溶け込んでいる。
次にお客さんに目を向けてみよう。ランチタイムのわずかな時間でご飯をかき込むスーツ姿のサラリーマン。入店から会計まで一言も声を発しない常連のおじさん、インスタに載せるために料理にスマホを向けている若い女の子の集団。
普段混ざりあうことがない人々がその空間では不思議と調和し、心地よい雰囲気を醸し出している。
見事なダイバーシティだ。
 
注文からあっという間に料理が到着。テーブルに素早く配膳された皿から立ち上る湯気の向こうには、デフォルトで置かれた酢、醤油、辣油、にんにくペーストが乗った調味料セットが目に入る。
味変は町中華の一つの醍醐味であり、自分の好みや体調と相談しながら進むべき方向性を決めることができる。
また、慣れてきたら自分の好みを少し勇気を出し店員さんに伝えてみよう。
スープの味が濃かったら、薄めてくれたり。タレと料理を分けて欲しければ、別皿でくれたり。彼らにはノーという答えは基本的には無く、こちらの要望に最大限応えようとしてくれる。でも愛想まで求めてはいけない。何事も中庸が大切だ。
最低限のコミュニケーションを取りながら個人に合わせた味をパーソラナイズ。時代の最先端だ。
 
ダイナミックな中華料理に舌鼓を打ち心もお腹も満たされた。
ただ、調子に乗って、ちょっと頼み過ぎてしまった。残してしまうのも、もったいないし。
そんなことを躊躇していると、絶妙なタイミングで店員さんから声がかかる。
店員さんの手には先ほどの店頭のテント屋根と同じような色をしたプラスチックの容器が。さりげなく提案し、手慣れた手付きで残った料理をお持ち帰り用に包んでくれる。
フードロスという言葉は、ここには存在しない。
 
満足感と共に熱気に溢れた店内から一歩外に出ると、目の前にはいたって普通の日常の空気が流れている。
町中華の地域への溶け込み具合はやはり自然体だ。
町中華は優しく街を見守り、暮らしの中の駆け込み寺的存在として機能し、無くてはならない存在になっている。
長年培った地域との繋がり、絆を物語っている。
 
そして最後に思うのは、町中華の魅力を存分に味わうには、自分から関わっていく積極性が求められる。ただ食事をして、さっと店をあとにするのも、もちろん良い。でもここで流れている優しく包み込んでくれるような生暖かい空気を味わうには、自分から一歩踏み出し、繋がりを感じてみることが大切なのではないか。
これからの暮らし方も、環境問題も、社会との関係についても、自分から関わり、繋がっていくことから始まるような気がする。
 
持続的成長、透明性、ダイバーシティ、パーソナライズ、フードロス、地域との繋がり、そして積極性。
町中華にはこれらの要素がぎゅっと詰まっている。まるで目指すべきあり方の縮図のように。
そんな町中華は、いつものように、これからも私たちの未来を優しく見守り続け、そっと導いてくれるのであろう。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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