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メディアグランプリ

色眼鏡を外す世界


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:りお(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
帰国子女がなんとなく羨ましかった。
私が苦手な英語を自分のものにしているような存在。高校生の時は身近に一人もいなかった帰国子女が、大学生になった私の近くに突然現れた。
 
その子は、外国人の先生と楽しそうに英語で会話をし、授業中、難なく先生が話す英語の指示を理解していた。雰囲気も性格も明るくて、話していると楽しい気持ちになれる。洋服もおしゃれでメイクも可愛い、私にとって憧れの子。
 
彼女との出会いは、1年生の外国語の授業だった。能力別に分けられた英語クラスの初日、まだ友達がいなかった私の隣の席は空いていた。
その子が教室に入ってくる。なんて可愛らしい女の子なんだ。知っている子がいないのかな……? 考えるよりも先に声をかけていた。
 
「良かったら、私の隣どうぞ」
 
私の中のどこにこんな勇気があったのだろう。その子は「ありがとう」と可愛い笑顔で隣にきてくれた。
 
「あの時、本当に嬉しかったんだよね」
 
2年生になって、出会った頃のことを思い出す。彼女はまさか初対面で自分に声をかけてくれるなんて思っていなかったらしく、当時のことを嬉しそうに話してくれる。勇気を振り絞った甲斐があった。ただ、私たちは他の授業であまり会わなかったので、お互い外国語の授業で見れる姿しか知らない。
 
「帰国子女は、とても苦労している」
ふと読んだ学術論文にその一言を見つけた。わたしは教育学部の英語科の勉強をしていたので、異文化理解だの英語教育だの、そういった類の参考資料を読み漁っている時期があった。
 
その一文を見つけたとき、咄嗟に彼女のことを思い出した。いつもニコニコしていて、明るい彼女は帰国子女であるがゆえに苦労をしているのか……? 信じられなかった。しかし、冷静になってみると、私は彼女のすべてを知っているわけではないし、とっても仲が良いわけではない。私が一方的に彼女のことが好きで英語をペラペラ話す彼女に憧れていただけだった。
 
次に彼女に会うまでの間、帰国子女に関する本を読みまくった。
「帰国してから英語力を維持するのに精神的な苦痛を伴っている」「日本人なのに日本語がうまく話せないことを引け目に感じている」「帰国子女であることがいじめに繋がった」
読めば読むほどネガティブワードが溢れていて、私は悲観的になっていく。
 
「帰国子女って辛いの……?」
 
論文で知識を詰め込んだ私は、彼女にいきなり聞いてしまった。すると彼女は「ん? 辛いと思ったことはないかな~。急にどうしたの、りおちゃん笑」と笑顔がこぼれる。
 
もっと知りたくなってしまった。本の中の世界と帰国子女の葛藤と彼女のこと。
そして、3年生のとき、私は帰国子女をテーマに卒業論文を書くことに決めた。
 
文献を読むだけだと、真実が分からないと気づき始めたので、帰国子女にインタビューとアンケート調査をすることに。4年生の就職活動と並行して、何人かの帰国子女の方に協力をお願いした。ほとんどが友達の友達。初めましての方に、インタビューをするのは緊張したけれど、本命の彼女とのインタビューの時が、一番胸が高鳴った。
 
「帰国子女であることで苦労していることってある?」
「英語の勉強が好きって思われがちだけど、本当は全然好きじゃない。外国でも日本でもやらざるを得なかったから続けていたって感じかな」
 
彼女の心の声を初めて聞いた気がして、ドキドキが止まらない。そっか、彼女は英語が好きではないのか。私は彼女の英語への憧れを抱いていたけれど、なんだか複雑な気持ちになった。
 
「帰国子女だからこそ経験したことはある?」
「やっぱり、外国での生活は日本と全然違くて刺激的だった。帰国してきて、日本の仲いい友達に、私が変なことを言うと冗談で『海外経験あるからね~』と言われることがあるけど、私はその言葉を嫌と感じたことはないかな。だって、外国にいた時間がとても楽しく誇りに思っているから!」
 
彼女はいつもの可愛らしい笑顔で答えてくれた。
これが彼女のリアルで、本当の気持ちで、論文にも他の帰国子女の方々のインタビューでも知ることができない姿だった。
 
知らず知らずのうちに、私は彼女に対して色眼鏡を使っていたのかもしれない。帰国子女への憧れ、苦労している可能性。しかし、彼女自身が語る言葉は、帰国子女だから出てきたエピソードではなく、彼女だからこそ感じた気持ちや経験でいっぱいだった。
 
人は人を知っていく時、何を見ているのだろう。自分の思い込みで、自分の知識や経験だけで相手をはかってはいないか。その人自身から発せられている言葉を純粋な眼で見つめられているだろうか。
 
今は宮城県でお仕事を頑張っている彼女。最近起きた地震の時、真っ先に彼女のことを思い浮かべた。連絡を取る。無事だと知る。ああ、久しぶりに彼女に会いたいな。
 
 
 
 
***

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2021-02-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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