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【ママのお仕事は何屋さん? -現在進行形専業主婦の日常の1コマより-】


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和泉あんころ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ママはなんのおみせやさん?」3歳になる前の息子に聞かれた。
 
最近ハマっているなぞなぞ風の質問だ。普段ならテキトーに答えられるわたしが、返答に困っているのには理由がある。
 
わたしの職業を聞いているのだろうか? わたしは現在、無職。絶賛子育て中の専業主婦だ。
 
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【専業主婦の年収はいくらなのか?】
 
―という議論は以前からもあったように思う。
 
数年前にドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が社会現象を巻き起こすほどの人気ぶりになり、ニュースやSNS上でも専業主婦の対価は話題になった。ドラマの中では契約結婚というカタチで、専業主婦が職業のひとつとして取り上げられた。ドラマをきっかけに、専業主婦の働きに対する価値や給与について、世の中の人々の関心ごととなったのは記憶に新しい。
 
ある統計では、「専業主婦の年収=約1000万円」という数字が叩き出されていた。これはすべてをプロに頼んだ場合の算出方法であり、【自分が年収1000万円の働きをしているか】と問われたら胸を張って自己主張は出来ない。むしろ、そこまでプロフェッショナルな家事を毎日毎日求められること自体、わたしには重荷である。
 
「夫から毎月いくら支払ってもらえたら、気持ちよく専業主婦ができるのかな?」
 
今の自分の大変さや、めまぐるしい子育て、家事に報酬がもらえるとしたら……金額に換算するとして、月収どれくらいなら折り合いがつくのだろうか。
 
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普段は考えないようなことに思いをはせたのは、昨晩、夫と軽い言い争いになったことが原因だろうか。「軽い言い争い」で済んだのは、毎度、揉めるたびにわたしが折れて謝るからだ。短気な夫は、虫の居所が悪いときには手がつけられない。わたしが諦めるほうが、圧倒的に楽だし時間の節約にもなるのだ。
 
普段は「仕事が忙しい」の一点張りでほとんど家を空けているクセに、たまに家にいてくれると思えばすぐに口論になる。
 
子どもが生まれてすぐのころは、大人ひとりでは心細いからできれば夫に早く帰ってきてほしいと思っていた時期もあったが、今はその感情すら持てない。
 
幼い子どもの前で喧嘩をするくらいなら、いないほうがマシだと思うようになってきている自分がコワイ。恋人のときは、もっと一緒にいたいから結婚を決めたはずなのに……。まだ数年前なのに、まるで夢の中の出来事のようだ。
 
わたしに対する八つ当たりならまだ我慢できる。
 
これまでも一方的に怒られることに不満がなかったわけではない。けれど、夫のイライラが自分に向けられたものであれば、友人に愚痴って消化したり、寝てすっかり忘れたりすることも簡単だ。
 
しかし、子どもに向く理不尽な怒りに対しては、わたしも黙ってはいられない。子どもは何も悪くない。大人の勝手な都合で怒鳴られる子どもの身にもなってほしい。
 
親として、人として、その振る舞いはいかがなものか。
 
「結婚、早まったのかなぁ……?」
 
と思うたびに、慌てて思い直すようにする。
 
そんなことはない。そんなことを思ってはいけない。
 
結婚していなければ、かわいくて仕方がない息子にも出会えなかったのだから。
 
数年前までは存在していなかったはずなのに、子どものいない人生なんて考えられなくなっている。わたし自身は、本来、特に子どもが好きなタイプではなかったはずなのに……。
 
独身時代は、記憶喪失だ。子どもがいない人生で、わたしはこれまで何を考え、何を基準に選択をして、どのように生きてきたのだろうか。全くと言っていいほど思い出せない。
 
もうすぐ3歳になる息子は最近は特にスポンジのようだ。カラカラのスポンジが一気に水を吸収するように、ものすごいスピードで言葉を覚えていく。
 
なぞなぞにハマっている息子にあわせて問題を出し合いっこすることが、わたしたちの日課になっている。正解できる質問をわざと出題しては、相手が答えられたら「せいかーーーい!」と大げさに褒め称えて、ふたりではしゃぎあう至福の時間。
 
こんなにも何でもないことで笑ったり、はしゃいだり出来る自分がいるなんて、息子と出逢う前までは知らなかった。
 
日常がこんなに新鮮でおもしろいことに、この子がいなかったら気付かずに通り過ぎてしまっていた。連日がバーゲンやタイムセールのようで、わくわくして足を止めざるを得ない瞬間の連続なのだ。
 
子どもが生まれてから、すっかり子ども中心の生活になった。
 
自分の服なんてもうずっと新調していない。けれど、自己犠牲とも違う。自分の服を買いに意気込んで出掛けても、結局は子ども服ばかりに目が行き、買い物カゴは子ども服であふれている。
 
子どもが生まれてから変わった、と自分でも思う。
 
【性格が】ではなくて、【優先順位が】である。
 
夫からしたら「結婚してから嫁は変わってしまった」と思われているかもしれない。一方で、父親になったにもかかわらず何ひとつ生活を変えない夫の態度に、わたしはモヤモヤしているのかもしれないという考えにたどり着く。
 
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突然「ママはなにやさん?」ときいてきた息子に対して、わたしはどう答えるべきか……。
 
専業主婦のわたしは現在、特に仕事をしているわけではない。家事? と答えが頭をよぎるけれど、若干3歳の息子が家事という言葉を理解できるはずもない。
 
「パパはくるまやさんでしょ? ママはなにやさんでしょう?」
 
と畳みかけるような息子の言葉に、「ごはんやさん?」とか「おそうじやさん?」とか息子が納得しそうな返事をしてみるものの、全部「ちがーーーう!」と言われてしまう。
 
「うーん……どうしよう、ママ、わからないなぁ」
 
とお手上げをしてみせる。そろそろこの問答に終止符を打ちたい。
 
息子は満面の笑みで
 
「ママはねぇ、がんばりやさんなんやよ!!」
 
気が付いたときには、抑えられないくらい涙があふれ頬をつたっていた。
 
わたしは対価が欲しいかったわけでは決してない。こうして誰かに、だいすきなひとに、自分の頑張りや存在価値を認められたかっただけなのかもしれない。
 
こんなにも近くで見てくれている息子がいるなら、わたしは、もう大丈夫だ。
 
「誰かに認められなくても、褒められなくても、ちゃんと目の前にいるひとに向き合っていこう」
 
最大の味方である愛息子の、ちいさい手を握りながら心に誓う。
 
なんてったって、わたしは【頑張り屋さん】なんだから。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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