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年齢詐称のクセ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:いそだのりこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私が初めて転職した時、面接は30分程度で終了した。全てが終了した後、面接官から「ひとついいですか?」と質問をされた。
 
「この、14歳っていうのは、狙いかな?」
 
「あの、どういうことでしょうか?」
 
「ほら、これ」
 
と、目の前に出された自分の履歴書に、ありえない文言があった。
 
「年齢 14歳」
 
注意力散漫が引き起こした大失敗エピソード。それは採用面接の時に持っていった履歴書で、間違えて10歳もサバを読んでしまったことだ。
 
当時、私は24歳。当たり前のことだが、10歳サバ読みは狙いでもわざとでもない。単純に書き間違えたことを、気付くことなく、そのまま提出しただけの話。自分の字で14歳と書かれた履歴書を見て、あまりの出来事に、私は思わず大笑いしてしまった。
 
「すみません!間違えました!!!」
 
14歳。そもそも、働けないだろ!と中学生だぞ!と、自分にツッコミ入れつつ、そんなミスをしたことがツボに入ってしまい、すみませんと謝りながら、笑いが止まらなかった。面接官も「分かってましたけどね」と言いながら、「14歳はさすがに雇えないんで」と笑っている。
 
自分の失態がおかしくて仕方なかった。面接官さんの「狙いかな?」の聞き方もなかなかのセンス。やってしまったものは仕方ないし、おもしろかったらか、まあいいか。その面接が失敗であることに違いはなかったけれど、笑いながら楽しく終了した。
 
「結果は後日、改めて」
 
と言われが、こんな基本的なケアレスミスを起こすようじゃ、絶対採用されない。よし、次を探そう。気持ちをさっさと切り替えたのだが、その夜、予想外のことが起こる。
 
「是非、我が社へ来てください」
 
晴れて私は、その会社の社員となった。
 
入社後、少し慣れたころに、面接を担当した上司に話を聞いた。明らかなミスと分かっていて、あえて質問してみたのは、その反応を見たかったからだそうだ。しかし私は上司の予想をはるかに超えて、面接の場で爆笑。それは強烈な印象だったらしい。
 
「決め手は、年齢詐称だね。あそこで爆笑出来たらたいしたもんだよ」
 
褒められたのかどうかは、今でも微妙だと思っているが、上司のこの柔軟な考え方のおかげで、私は転職することができたのである。
 
そんな初歩的なミスをした当人にも関わらず、私はその後、10年近く人事採用を担当した。履歴書でひどいミスをしておきながら、何万枚もの履歴書を見る立場になったのだから、人生は不思議だ。その10年の間、年齢を1歳間違えました!という自己申告は数回経験したが、10歳サバを読んだ履歴書は、一度も見たことがない。そう、私のミスはたまたま偶然のミスであり、なかなかあることではない。かなりのレアケースなのだ。だからこそ、14歳と書いて入社した事実は、過去のやらかしエピソードとして、人に話して笑ってもらうネタになっていた。
 
しかし、話はこれで終わらない。私はそのレアケースを再度やらかしてしまう。採用担当で、山ほど履歴書を確認していても、自分の年齢は間違えてしまうのだ。
 
2回目の年齢詐称の現場は病院だった。当時、私は34歳。最初の事件からちょうど10年後。サバ読みはネタとして使われるだけで、記憶も薄れている頃。そういう時にこそ、間違いは起こるものらしい。
 
「すみません、あの」
 
初めて行った病院で問診票を記入し、待合室で座っていたら、受付の女性がキョロキョロしながら近づいてきた。
 
「あの、診察は、ご本人様ですよね」
 
「はい、そうです」
 
「娘さんじゃないですよね」
 
「いえ、私です」
 
変なことを聞く受付さんだと思ったら、原因は自分だった。
 
「年齢が……14歳でして」
 
まさか!!また、年齢詐称!!しかもまた14歳!!
 
今度は笑いどころではなく、慌てて平謝りし、間違えました!すみません!と記入し直した。まさか、またやってしまうとは。あれはたまたまじゃなかったのか?レアケースではないと?懲りずに14歳。しかも今度は、20歳もサバを読んでしまっているではないか!
 
面接の場面では、単なる間違いだと気づいてもらえた。私自身も爆笑できた。しかし、34歳で14歳と書き間違えたら、単なるミスではなく、子供のことと思われてしまう恥ずかしさ。笑うというより、呆れてしまった。1歳間違えるならまだしも、なぜ10代と書いてしまうのか。サバの読み具合も酷くなっている。1回だけならネタで笑える。しかし2回目はダメだ。もう絶対に間違えない!
 
そう誓ってから、長い間、年齢詐称はしていない。書類を書いた後は、提出前に年齢をしっかり確認するようになったからだ。実は37歳の時に17歳にサバ読みしかけたが、事前に確認して慌てて回避したからセーフだろう。しかしその時も10代だった。いくつになっても10代と書いてしまうのは、クセなのだろうか。それとも深層心理の願望なのか。もう謎でしかない。
 
そして、40代。私は書類の年齢確認を、前よりも念入りにするようになった。なぜなら、サバ読みに恐怖を感じるようになったからだ。20代の時も、30代の時も、たまたま10代にサバ読みしたからよかった。笑って終わったり、間違えましたで済んだ。今だって、10代に間違えたなら同じように笑って済ませられるだろう。
 
しかし、40代の自分が、20代30代に間違えてサバ読みしたら……笑って済ませるどころの話じゃない。「間違いですか?」と確認してもらうことすらないかもしれない。この年齢で、10歳20歳サバ読みは、洒落にならないからだ。無理した若作り。バレる嘘をつく40代。痛いおばさんの道。そう思われるのは何としてでも避けたい。無意識の年齢詐称は、もう絶対に犯してはならないミスなのだ。
 
24歳、34歳でサバ読みをした私は、危険地帯である44歳を無事に終えることができた。しかし37歳でギリギリ詐称セーフだった事例を思うと、これからもうかうかしていられない。47歳の1年がやってきたら、より気を引き締めることを今から誓っている。
 
 
 
 
***

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2021-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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