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私だけのキャンペーン


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:永久保宏代(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は子供の頃からとても気が小さくて心配性だ。引っ込み思案で新しい環境に慣れるまでが大変。失敗したら嫌だし、先が見えないととても不安になる。少し我慢さえすれば現状のままでいけるし……など、本質的な性格はこんな感じだ。
 
コンフォートゾーンから一歩を踏み出すのはとても勇気が要る。どうしたら軽やかに新しい世界にチャレンジできるか。いきなり軽やかにチャレンジするのは難しいので最初はごくごく身近で小さなこと、些細なことから始めた。例えば、駅へ向かう道を変えてみる、普段入らないようなお店に入ってみる、買ったことのない花を買ってみる、食べたことのない国の料理を食べに行く、などなど。本当に小さなことだ。
 
どうしようもなく臆病で弱音ばかり吐くこの私でも、意識的に些細な一歩にチャレンジし続けてきたことで、その小さな体験の一つ一つが貯金のように積み重なって、大きな一歩の踏み出しが容易になるのを何度か体感してきた。
 
決して小さな一歩を侮ってはいけない。その一歩がそれまでの世界とは異なるものを見せてくれる。更には、新発見を楽しむことで、気分転換やストレスマネジメント、自己肯定感の高まりにも繋がっていく。小さな意識は習慣化され、年月と共に以前より積極的な自分になっていった。
 
ところがある時、自分のやる気が低下していて何もかも億劫になっている自分に気づいた。振り返れば仕事に没頭して、暫く新しいチャレンジをしていない。そこで、毎月最低1回は新しいことにチャレンジする、という自分だけの「月1キャンペーン」を思いついた。不思議な事に決意しただけで少しワクワクしている自分がいた。
 
まずは、勇気を出して以前から話してみたかった人をランチに誘った。会話からその人の視点を知るのは新鮮だったし勉強になった。他にも、これまで馴染みのないジャンルのアートを観に行ったり、興味あるセミナーに参加したり、普段あまり飲みに行かないのに思いきって独りバーも体験した。小さなチャレンジも見るとやるとでは違いがあって、不安を抱えつつ、やったから分かること、体感覚の変化、物事の捉え方の変化を感じた。そして何より自分の中で達成感が広がった。
 
次に、とにかく都心を離れて、山々に囲まれて美味しい空気をたっぷり吸いたいと思った。
 
友人に伝えたら話にのってくれて、お互い仕事が休みの日に、電車やバスを乗り継ぎ、徒歩も入れると片道3時間もかかる山奥の「渓谷カフェ」へ向かうことになった。
 
当日は晴天だった。目的地が近づくにつれ車窓は緑が多くなり空気も澄んでいく。それだけで固まった心と体はほどけていった。
 
カフェへは、バスを降りた後に山道を20分ほど歩かなければならず、普段坂道を登り続ける事などない二人の息はすぐに上がって、お昼近くの高い太陽に照らされて汗も吹き出した。やっとのことで辿り着いたカフェは二人の日常では有り得ない深い緑の中にあった。汗をかいた体に山から吹いてくる風が実に心地いい。
 
カフェのメニューを見ながら、喉がカラカラだった私と友人は目を合わせてビールを頼んだ。美味しい空気と美味しいビール。ああ、なんて幸せなんだろう。
 
健康であること、働けること、今日まで生きてこられたこと、どうも文字にすると年寄りみたいな会話だが、二人で幸せの基本を心から感じて笑いあった。
 
私の密かな「月1キャンペーン」はしばらく続いた。
 
ほどなくして、職場の同僚からラフティングのお誘い。以前なら怖さが先にたって断っていたと思う。「よし、行ってみよう!」と、ちょっと勇気を出して自分で自分の背中を押した。
 
しぶきを浴びながらオールを漕ぎ、仲間たちと叫びながら川を下るのは予想以上に爽快だった。
 
当然、頭で分かっている事だけれど、川には流れがあって体が簡単にもっていかれること、足をすくわれて流されるとはこういうこと、と私も仲間も初めて体感した。それもやってみて初めて分かったことだった。
 
その後、別の知り合いから、なんと滝行に誘われた。こんなに軽やかに滝行に誘う人もいるのかと可笑しかったが、その軽やかさこそ彼女の魅力だ。これも以前の私ならまず行かないが、人生で滝行に誘われることもなかなか無いと思い行くことにした。過去に企業の研修でも使われてきたその滝行は誰でも参加できる。ただし、滝行の場は信仰する方々にとっては神聖な場所なのでやや緊張しながら敬意を払って臨んだ。
 
見た目には細くて大したことなさそうな滝も、体にあたる衝撃は想像を遥かに越えていた。脳天など、あたる場所によっては穴が開くこともあるそうで、冷たさに震えながら滝があたる箇所には注意が必要だった。そんなこともやってみて初めてわかった。滝行について難しいことは未だよく分かってないが、やってみて爽快だったことと、体験そのものが私にとってはとても大きな一歩だった。
 
年齢が上がれば上がるほど人の好奇心は減っていく。知識も経験も一通り積んだ、と分かったような気になってしまい、生活に新しい風を入れることを億劫に感じ、同時に変化に対しても少しずつ臆病になる。ホルモンの影響もあるのかも知れない。だから初めは本当に些細で小さなチャレンジでいいと思う。
 
不思議な事に、小さなチャレンジを重ねて行くうちに本当にやりたかったことが見えてきたり、かつて描いていた夢を思い出す事もあるので、私は全ての年齢の方におススメしたい。
 
小さな経験の積み重ねは挑戦へのハードルを低くし、ここぞという時の大きな一歩が踏み出しやすくなる。また、小さな経験は仮に失敗したとしても大した影響はなく、逆に失敗への免疫力がつく。
 
そしてその経験は、立ち止まって自分の行動パターンやテーマを見つめる事になるので、自分を大切にすることになり自己肯定感が高まっていく。
 
最近読んだ本に、日々の生活でのごく僅かな違いが私たちの未来を左右するとあった。確かにそうかもしれない。僅かな違いを疎かにしないで、時々は休んだりしながら新たなチャレンジやそのプロセスを楽しんでいきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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