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20年前、未来の自分に逢った

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐々島由佳理(チーム天狼院)
 
 
今から約19年前、私は未来の自分を見たことがある。
 
未来の自分とは、つまり今の私だ。その時見た今の自分は、当時「韓流四天王」の一人として日本で人気を博した俳優「ぺ・ヨンジュン」にがっつりハマるおばさまの姿をしていた。
 
たとえ韓流に興味がない人でも、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』など、この1年どこかで見たり聞いたりした人も多いのではないだろうか。
日本における動画コンテンツ界を賑わせてきた、韓国ドラマのタイトルだ。
コロナによる緊急事態宣言により、図らずもお家時間が増えた令和の時代に、生まれるべくして爆誕したと思われがちな「韓流ブーム」。
しかし正確に表すならば、私たちが今生きているのは“第四次”韓流ブームだ。
 
2000年代前半。
韓国ドラマ『冬のソナタ』が日本で初放送されると、日本列島に第一次韓流ブームが巻き起こった。
ブームの火付け役は主役の「ペ・ヨンジュン」、そしてブームを支えたのは「ヨン様」コールに沸くおばさま達だった。
私はその様子をよく覚えている。
ヨン様がファンのことを「家族」と呼ぶたび黄色い歓声をあげるおばさま達に、「あらあら、まぁまぁ」と肩をすくめていたのは20代前半の私だ。あえて「ペ様」と呼んで、ちょっとおちょくっていたところもあったように思う。
 
当時は、分からなかった。
「あらあら、まぁまぁ」と思われても仕方ないのは私の方だと。
90年代後半から、韓国がエンターテインメント強化に国家予算を投じた成果は、その頃から現れ始めていたのだ。文化の違いを差し引いても、長年親しんできた日本のコンテンツには生み出せない“何か”を、いち早く見出したおばさま達の感度の高さよ。
数十年後、韓国映画が米アカデミー賞「作品賞」を受賞すること=映画界の頂点に立つことなど、おばさま達には想定の範囲だったのかもしれない。
 
今なら、分かる。
韓国コンテンツは、最高でしかないと。
緊急事態宣言中の、不確かで閉塞感ただよう状況においても、私にとっては人生の新しい扉を次々と開けてしまう「鍵」のようだったから。
 
韓国の財閥令嬢がパラグライダーで北朝鮮へ不時着するとか、900年生きている不滅の鬼が現代で花嫁と出逢うとか……無駄に視聴者の顔色を伺ってこない、設定の思い切りの良さとチャレンジ。それが私にとっての「韓国ドラマ」だ。
今やハリウッドでさえ、リメイクだの、リバイバルだの、オリジナルコンテンツに苦戦している状況の中で、観るもの全てが“新しい”のだ。ストーリーライン、セリフ、設定、キャラクター、全てが新ジャンルであり、予測不能な状況に、どうして興奮しないでいられようか。
私は、開けてはいけない扉を開けてしまったようだった。
続く道には、深い“沼”が待ち受けていることも知らず、私は片っ端から韓国ドラマに手をつけていく。
 
「次はどれを観ようか」検索窓に入力したのは、“推し”俳優の名前だ。
純粋にエンターテインメントを楽しんでいたハズが、気づけば片足が“推し沼”につかってズブズブ沈んでいる。全くタイプでは無いのに、観るドラマ観る人全部好きになる、を繰り返し、これまで計8つの沼にハマってきた。
もう、病気でしかない、と思う一方で、自分の女性性にちょっとハリが生まれるような感覚が生まれていた。そうか、私は妻でも、母でもない、女性だったんだ。それを思い出す扉が、続けて開く音がした。すると、さらにその先に見えたのは、美しい韓国女性の姿だった。
 
さすが美容大国の韓国。女優さんも美しいのだ。毛穴もシミもシワもない陶器肌に、一重でも二重でも、最強に可愛く見せるメイク法。加えて、背が高いのに細くスタイル抜群でモデルなみ。
これまで「女性であること」を盛大にサボってきた私は、韓国女性に「近づきたい」欲がむくむく湧いてきた。
週一絶食する「月曜断食」でダイエットを始めたり、さらには、彼女たちが綺麗を維持するために何を食べてるのか? を検索しまくる。お酢だの、キムチだの、穀物プロテインだの……私はかたっぱしから試すのだった。こうして美の扉も何十年かぶりに開くのだった。
 
あぁ、もうこうなったら韓国に行きたい。
以前はハワイ大好きだった私が、緊急事態宣言明けにはまず韓国を訪れたいとまで思うようになった。エンタメ&美容大国で、美味しいものもたくさんの韓国。さぞかし刺激的だろう。
いつか使う日のために、と、私はついに韓国語の勉強も始めてしまった。
 
韓国ドラマから開いた扉は、世界へと繋がっていた。
 
 
人生で何かに熱狂的にハマることは、本当に嬉しいことだ。
寝ても覚めても、とにかくコレがあれば生きるのが楽しいもの。それも“熱狂的”に。
 
私にとってそれは、小さい頃から「映画」であり、自分も時間も捧げられるものとしていつも側にあった。大学を卒業し、仕事としても映画に関わることができた私は、20代、30代と映画の仕事一筋で生きてこれたことはとてもありがたかった。そして、30代後半からは出産・子育て・家事に脇目もふらず全集中がはじまり、一旦、熱狂的な自分は横に置いておくことになる。もちろん、愛する子供たちを産み育て、ともに生きることにこの上ない幸せを感じ、一人の人間としての自分や、仕事、趣味など想いを馳せることもないまま、時を重ねていくのだが。
だんだん子供に手がかからなくなってきたある日、自分自身にフォーカスできる時間がポツポツ生まれてきたとき、没頭できる何かに不意にグッとつかまれる反動がすごいのだ。
 
20年前に見たぺ様ファンのおばさまたちの何割かは、もしかしてこれと同じような流れにいたのかもしれない。あのおばさま達は、ほかでもない、私だったのだ。歳をとってしまっても、そんなことは関係ない。とにかく、こんなに熱狂的になれる対象があり、それに対して自分自身が生まれ変われる機会や意識に再びめぐり逢えたことが何より嬉しいのだ。
 
きっと、あの時のおばさま達も同じ気持ちだったのだろう。
 
何歳になっても、意識も人生も変えることはできる。
 
手始めに韓国ドラマ、一度観てみませんか?
 
 
 
 
***
 
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2021-03-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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