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ゴミ拾いから始まった山の整備活動


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記事:亀村佳都 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ものすごいゴミの量だよ」
「あの山には、暗くて怖くて一人で行けないよ」
 
大岩山と呼ばれる、私の住むまち、京都にある山のことだ。
日本一の山と呼ばれる富士山でさえ、ゴミの不法投棄に悩まされているのだから、似たような問題を抱えている山は全国どこにでもあるのだろう。
 
大岩山は、昔は薪を切ったり、子どもたちがカブトムシを探したりする、人の出入りがある山だったそうだ。薪を使わなくなり、様々な電化製品に囲まれた暮らしをするようになった1960年代から、人の出入りが減り、家庭や業者のゴミが捨てられるようになった。
 
「このままゴミが捨てられ続けていいのか?」
「子どもたちには、自然豊かな山を残したい」
と、近隣住民と行政が、大岩山のゴミ拾いを始めた。
環境問題に関心があった私も、そのごみ拾いに参加した。
 
大岩山は、標高180mの山なので、20分ほど歩けば頂上に着く。
「空き缶やペットボトルを拾えばいいのかな」と気楽に思っていたら、とんでもなかった。空き缶や本、ぬいぐるみなどの家庭用品に混じって、中身が入ったままのペンキ缶が200個、タイヤ200本、古いテレビや浴槽、バイクなどが捨てられていた。
 
「ここにも、そこにも、あそこにも!」
至るところにゴミが捨てられていた。道路脇に落ちているゴミを一つ拾うと、またその先にあるゴミを拾う。ゴミを辿って一歩ずつ、山の中へと入っていった。
 
目の前にゴミがあれば、きれいさっぱり片付けたい。
私たちは、土の中に埋もれているゴミをどんどん掘り起こした。一人で引っ張れないカーテンのような大きなものや重たいものは、何人かで引っ張った。山の奥で見つけたゴミは、10人くらいが列を作り、ゴミを手渡しながら車道まで運んだ。綱引きやバケツリレーをするように、みんなで掛け声を合わせながら汗を流した。
 
私たちは毎月山に入り、ごみを拾った。
30人くらいで始めたゴミ拾いは、口コミで参加者が増え、100名を超えるようになった。
100人の力は大きい。1年間で約100トンのゴミを拾い、目に見えるゴミはほぼ無くなった。
 
最後に残されたゴミ拾いの場所は、道路からは崖になっていて入れないところだった。頂上から山の斜面を伝って歩いていけるが、草と木で覆われていた。
車の荷台にゴミを積んで、ゴミを崖下に投げ入れてしまえば、一瞬にしてゴミが見えなくなるため、崖下は、捨てるにはもってこいの場所なのだそうだ。
結局、頂上から少しずつ雑木をチェーンソーで切り、足場を作ってから崖下のゴミを拾った。
 
「そうだ、頂上に展望所を作ったら、大岩山を歩く人も増えるんじゃない?」
ゴミを拾い終えた後、参加者から提案があった。木を切って、視界が開けると「アベノハルカス」などの大阪市内のビルが遠くに見えたからだ。
暗くて人が寄り付かない山ではなく、明るくて山歩きを楽しめる方がいい。
人の目があれば、山にゴミを捨てる人も減るだろう。
山の持ち主の理解を得て、目に見えるゴミを拾い終えた次の年、私たちは展望所を作るために山に入った。
 
ゴミ拾いをしていた頃は地面ばかり見ていたので気づかなかったが、ゴミが無くなり、山全体を見る余裕が出てくると、どんぐりの木や竹林、池、神社に目が向くようになった。
神社から山頂まではたった80m。うっすらとつながる道があったので、草を刈って整備した。山のふもとから頂上に至るまで、「展望所まで100m」などの道標を立てた。大岩山にある樹木を調べて「アカマツ」「コナラ」などの標識を木の幹に飾った。
頂上には、3畳ほどの展望台を木で作り、座りながら景色を見られるようにした。桜を植え、花壇を作ってパンジーなど水をやらなくても育つ花を植えた。展望所から見える建物や山の解説板も置いて、展望所らしくした。空気の澄み渡る青空の日に、大阪の街並みや正面に見える山々を眺めながらお弁当を広げるのにぴったりの場所になった。
 
その後も、10年かけて、定期的にゴミを拾い、山に光が入るように枯れた竹や木を切り、神社の周りを掃除した。私も、毎回ではなくとも参加した。
 
行政、住民、農家、地元の高校生や大学生、社会人ボランティアなど、色々な人たちが集って、「ゴミを拾おう」「山をきれいにしよう」と整備した山は今、「京都一周トレイル」というトレッキングコースの一部になっている。他府県からも登山者がやってくるようになった。
 
「一人では無理でも、みんなでやればできるもんだね」
「途方も無い量のゴミも、一つ一つ拾ったら無くなったしね」
自分のまちを良くしていくことに、傍観せずに、動いてみることの大切さを、大岩山は教えてくれた。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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