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白い粒2錠の優しさはどこへ!? ちっちゃい『ッ』の効能


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岩井さとり(ライティング・ゼミ:平日コース)
 
 
おや? この感じはもしや?
 
薄っすらとこめかみに感じていた違和感が次第にはっきりとしたものになって来て、思わず私は呟いた。
 
「あー……、頭いたぁーい……」
 
どうやら、頭痛襲来。
 
「あら? 大丈夫?」と隣にいる母が運転しながらもこちらをちらちらと覗き込む。
 
元来丈夫な私ではあるが、人間生きていればそんな日もあるようで、久しぶりに片頭痛に見舞われてしまったようだ。
 
何気ない週末の一時、買い物へ向かう途中の出来事、目的地までハンドルを握る母は助手席の私に向かって心配そうに問いかけてくる。
 
「バッッッファリン! ないの?? バッッッファリン、持ち歩いてないの?」
 
世の中、鎮痛剤は数多く存在しているが、幼い頃から常備薬として自宅に置かれていたこともあり、私にとって頭痛の際に飲む薬と言えば、そう、鎮痛剤バッッッファリン……いや、ちょっと待て、バファリンである。
 
「お母さん、そんなにちっちゃい『ッ』入ってないでしょ!? バファリンだよね……」
 
母はちょくちょく横文字やカタカナの名前、固有名詞などをいい感じで間違えてくる。
それが時になんとも絶妙かつ天才的で面白かったりもする。
 
そして今回は、バッッッファリン! (読み方: “バ ” をフォルテシモで)
 
母のそんな些細な言い間違いに私は思った。
ほんのちょっと詰まった発音になっただけで、なんとも強そうな感じではないか。商品のイメージががらりと変わってしまうものだな、と。
 
そして何よりも、痛みに苦しむ頭に響く……。
 
かつて「頭痛にバファリン~♪」との軽やかなCMソングと共に紹介されていた白い2錠の粒は、確か半分は優しさで出来ている代物ではなかっただろうか、いや、正確には有効成分と共に体への負担軽減も考えられた胃にも優しいお薬のはずだが、バッッッファリンとなった途端、なんとも有効成分ガンガンの痛みさえなくなれば他の臓器がどうなろうと知ったこっちゃない、手段を選ばない強い薬のようなイメージになる。
 
バッッッファリン、思いがけない効果を発揮。
 
あのぉ、その薬……認可、下りてますか?
 
一気に優しさが吹き飛んでしまうようなネーミングに頭痛に苦しみながらも吹き出しそうになった私は音のイメージから脳内でアフリカの大平原を砂埃立てて邁進するバッファローの大群(個人の感想です)を連想しながら、カバンの中をガサゴソ、確かポーチに忍ばせてたであろうバファリンの白い粒2錠を探しあてた。
 
「よかった、あったわね。早いとこ飲みなさい、バッッッファリン!」
 
いや、母よ。バファリンである……。
 
バッファローの大群を想起しながら手元にあったペットボトルで白い粒を喉に流し込む。
 
バッッッファリンとバファリンかぁ、名前が消費者に与えてくるイメージがだいぶ変わるように思うが……やはり名称と言うものも商品の売れ行きを左右するのだろうか。
 
痛みの和らぎを切に願いながら、無造作にそんなことも思った。
 
そんなバファリンが日本に上陸したのは東京オリンピックを翌年に控えた1963年、以来バファリンの名で慕われ、痛みから人々を救ってきた。
そのバファリンという名前は「胃にやさしいアスピリン」という意味の造語だそう。“緩和するもの”という意味のBuffer(バッファー)とAspirin(アスピリン(アセチルサリチル酸))を組み合わせバファリンとされたとのこと(バファリン公式ページより)。
 
先にも述べたように自分は元来丈夫であり、実を言うとあまり薬を飲むことがない。
そんな私でも比較的お世話になっている市販の鎮痛剤、それがバファリンなのだが、多数存在する鎮痛剤の中でバファリンとは果たしてどのような薬なのだろうかと今更ながら改めて疑問に思った。
 
鎮痛剤とは正式名称、抗炎症薬のことでステロイド性と非ステロイド性のものがあるそう。バファリンは非ステロイド性のものであり、主成分はアスピリン。
ふむふむ、薬学の知識などないのでネット情報をまるかじり。
他にも鎮痛剤の成分としてはロキソプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン……などがあるそう。
 
はいはい、聞いたことあるぞ。
CMとかでよく聞くぞ。
そして、また母が変なところにちっちゃい『ッ』を入れちゃいそうだぞ。
 
ちなみに強はさ……なんと、バファリン、弱い! いや、この表現には語弊あり。
アスピリンを主成分とするバファリンは他のものに比べて効果が穏やかで使用しやすいとのこと。なるほど。
 
例えばジクロフェナクを成分としたものなどは比較的強い効能を持ち、商品の有名どころではボルタレンなどがあるそうだ。なるほど、確かにこちらも聞いたことある。
 
そう思うと、やはり彼の名前はバファリンで正解なのではないか。
まるでボルタレン越えのようなバッッッファリンと言う強い感じのネーミングだったら、「名前負けだ!」「商品名がイメージと合わないよ!」 などなど、今頃みんなから言われていたかもしれない。
これからも時に、私が痛みに襲われた際は、その穏やかな効きめで救っていただきたい。
優しさと共に私の隣にいて欲しいのは、バッッッファリンではなく、バファリン、あなただ。
 
白い粒2錠を喉に流し込んだ私は助手席のシートにぐったりと全身を預け、目をつぶり、バファリンの優しい効き目がやってくるのをじっと待った。
 
「どう?? バッッッファリン、効いて来た!?」
 
眉間にしわを寄せ、しばし痛みと戦う娘の顔を心配そうにのぞき込んでくる母にバファリン、いや、バッッッファリン以上の大きな優しさを感じる。
 
そんな母の優しさを全身に感じつつ、私はもう一度心の中で呟いた。
 
母よ……。バファリンである……。
 
 
 
 
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2021-03-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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