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協力隊経験は人生の宝物


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記事:亀村佳都 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「つまらなそうな人生だな」
 
大学4年の春、就職活動が本格化して、黒いリクルートスーツに身を包んだ学生が東京の駅のあちこちにどっとあふれた。
周囲の大人や社会が伝える「個性を大事に」という言葉が嘘っぽく感じた。
あの時、リクルートスーツで就活をする流れに違和感さえ抱かなければ、私は、今とは全く別の人生を歩んでいたと思う。
結局、私は就職しないまま卒業し、「面白そうだな」と思って見つけた青年海外協力隊に参加した。
 
青年海外協力隊は、20歳から69歳までの日本人が、開発途上国の発展のために自分たちの技術を活かしながら活動する国の事業だ。毎年約2,000人の隊員が90か国で活動している。活動内容は、教育、福祉、スポーツ、看護など120種類あり、その中に私が大学で学んだ「環境教育」もあった。
 
試験と面接を受けて、採用通知が届いた時、私が行く国は「ニカラグア」と記されていた。今では、応募者は希望する国を面接で伝えられるが、当時は、自分では選べなかったので、「受かるかな」「受かったらどの国に行くのかな」とドキドキした。
 
ニカラグアへ行く前に、長野県にある訓練所で、約2ヶ月間「派遣前訓練」を受けた。午前中は語学習得に励み、午後は国際理解や安全対策などを学んだ。約200人と寝食を共にした。食事の配膳をしたり、運動したり、キャンプをしたりしてずっと一緒に過ごしていると、これまでなら友達にならなかったような人たちとも打ち解けるようになった。親戚のような、仲間のような。仲良しでなくても、金子みすずの詩に伝えられているように「みんな違って、みんないい」と思えるようになった。私も仲間の一人として、周囲に受け入れてもらった。
 
派遣前には、皇太子(現在の天皇陛下)を表敬訪問し、出身地の都道府県庁へ挨拶に出かけた。青年海外協力隊は国の事業だということを肌で感じた。
 
訓練を終えていよいよ、ニカラグアへ出発した。
青年海外協力隊には様々なサポートがあり、渡航費だけでなく、現地での生活費も支給された。定期的な健康診断を受けた他、私がデング熱にかかった時や犬に噛まれた時には、病院の手配をしてくれた。
 
そのようなサポートを受けながら、2年間「ニカラグアの人のために」と思い続けて現地の人たちと一緒に行動した。これまでの人生で、あんなに他者のためだけを思って過ごした時間はない。具体的には、ホームステイをしながら、小学校で環境教育の授業をした他、「ゴミのポイ捨てをしないように」と呼びかけながら清掃活動をして、子どもたちの教育に携わった。
 
ニカラグアでは、異文化にたくさん触れた。
例えば、ニカラグア人はほぼ毎日、同じものを食べていた。
「ガジョピント」と呼ばれる、小豆が入ったお赤飯そっくりの焼飯は、ニカラグア人のソウルフードだ。私は「飽きないのかな」と思ったが、毎日3食、幸せそうに食べていた。
 
また、日本ほど血縁関係を気にしないようだった。
私のホストファミリーは12人の大家族。離婚と結婚を繰り返す息子や、結婚しないまま妊娠する娘がいて、すぐには家系図を理解できなかったが、「誰の子どもか」はさほど大きな問題ではなかった。派遣先の小学校では、教師の9割はシングルマザーで、両親や親戚、新しいパートナーと一緒に子育てをしていた。日本よりももっと広い範囲で「家族」を捉え、愛情を持って子どもに接していた。
 
課題を探ろうと尋ねてみても、「家族がいるから幸せ」と答える人が多かった。「お金がもっとあれば幸せ」という人にはほとんど出会わなかった。
 
価値観の異なる国で過ごすうちに、「私もなんとか生きていけるだろう」と大らかな気持ちになった。
 
帰国すると、国内にも多様な暮らしがあることに気づいた。大学生の頃は、「卒業後は企業に就職する」という道しか知らなかっただけのことだった。
私は、結局、給与をもらって働く勤め人になったが、仕事を通じて商店主や農家、アーティスト、デザイナーとして生計を立てている人に出会った。
 
大学の頃を振り返ると、自分は何も知らない井の中の蛙だったと思う。「つまらない」と思えた就職も、自分の捉え方次第だったことに、青年海外協力隊という回り道をして、ようやく気づいた。
 
40代になった今、私は地元の青年海外協力隊OB会の役員をしている。毎年、異国に派遣される隊員を見送り、帰国後は彼らが得た経験を聞かせてもらう。また、協力隊の応募相談を受ける。
応募相談会では、「いつ参加するのがいいですか」とよく聞かれる。
そういう時の私の答えは「いつでも」だ。
学生を終えてすぐ参加するのもいいし、社会人経験を積んでからでもいい。定年退職後でもいい。人生のどのステージにおいても、協力隊への参加によって世界とのつながりを感じられるし、日本にいるだけでは得られない経験ができる。
 
一生に一度は協力隊。きっとあなたの人生の宝物になるだろう。ぜひとも経験してみてほしい。
 
 
 
 
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2021-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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