メディアグランプリ

足りないピースを集めた先に


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:宍倉惠(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
『丁寧に暮している暇はないけれど。』という本が流行った。丁寧に暮したいけど、なかなか思い通りにいかない。でも心地よければ良いんじゃない、と、自分なりの豊かな暮らしを探していく、完ぺきとは程遠い自分の毎日にもちょっと優しくなれる本だ。
 
何を隠そう私も美しい丁寧ならしを実践できないことにモヤモヤしながら日々を過ごしてきたから、タイトルの裏にある思いも、この本を手に取る人の気持ちもよくわかる。
 
それでも、社会人生活も5年目に差し掛かり、少しずつ自分なりにバランスがとれるようになってきたように思う。私にとって自分の暮らしを考えてつくっていくことは、なかなか完成ないパズルのピースを一つずつ探してパチリとはめていく作業のようだ。はまるピースを探すには、焦らずに、無理せずに、気軽に色々試してみることだと思う。最初は他の人と自分を比べて、できない自分にがっかりした。でもがっかりしたところでできるようにはならない。ひがんでも始まらないので、自分ができる範囲でたぶんなかなか完成しないパズルのピースを、ひとつずつ探し当てていくしかないのだ。
 
一番わかりやすいのが、DIYだ。自分で設計図を書いて棚をつくっていくのだが、けっこう適当でも、とりあえず使う分には申し分ないものができたりする。既製品ではなんだかしっくりこないんだよな、ぴったりこの隙間に入るものが欲しいし、やっぱり木の家具がいいな、そう思ったときはDIYの出番だ。なんと言っても自分好みの大きさに仕上げることができる。まさに足りなかったピースを埋めるみたいに、ここにこんな家具があったら良いなと妄想しながら、ネットで探した理想的な家具を模して設計図を描いて、週末の数時間を使ってモタモタと少しずつ、何週もかけて作っていく。モノを減らすのも、綺麗に収納するのも苦手だが、取り出しやすい見せる収納を意識して作っていくと、なんとなく様になる。
 
こうして収納スペースができてモノが少し片付くと、新しいことがしたくなって、お菓子を作りたくなったりする。ひとつピースが埋まったから次のピースを探し出す。
ちょっとしたおやつは、買うのではなく自分で作るという選択肢ができた。パウンドケーキなんかは、材料を混ぜてオーブンで焼くだけなので手軽だ。シンプルな甘さが嬉しいし、なにより「ちょっと豊かなことしたな」と満足感に浸れるのが最高の効能だ。最近はコーヒーの焙煎にも挑戦することもあるが、私には少しレベルが高くて、上手くピースがはまらない。そうやってはまらないピースも挑戦しないとわからないので、何にしても試してみることだ。2年前くらいまではDIYをやる気なんてさらさらなかったが、やってみたら案外としっくりきた。迷っていることがあれば、最初のハードルを低くして試してみると良い。
 
他の人と自分が、同じピースを持っていることもある。やってみてよかったなぁと今思っているのが、畑仕事。片道1.5時間かけて京都から奈良に通っている。農家さんから土地を貸してもらえるという話になり、最初はとても悩んだ。平日はバリバリ働いて、疲れた土日にそんなに時間をかけて定期的に通うなんて無理だろうと最初は思った。でも、農的暮らしを諦めきれず、ギリギリ会社に通える範囲の田舎に移住しようかなとまで考えていたので、お試しダメ元でやってみようくらいの気持ちで踏ん切りをつけて、初めて見ることにした。と言っても一人でやる気はさらさらなく、土に飢えていそうな同僚に声をかけて、最初は3人くらいで始めることにした。
 
なんだかんだ半年がたち、今では10人近い人数で、交替で畑に通っている。これは間違いなく、周りの人と一緒に始めたから続けられているのだと思う。行ける人が行きたいときに行くことを基本として、気楽に参加できるようにして細く長く続けるという算段だ。荒れた土地を開墾するところから畑づくりをして、心なしか結束力も高まった気がする。普段凝り固まった運動不足の身体も、畑仕事を1日すればくたくたになって、夜はよく眠れる。摘みたてのほろ苦い菜の花や小さくて甘くて可愛いニンジンがご褒美だ。
こうしてスキマのピースがはまる人たちと一緒に始めたら、一人では続けられないことも、楽しみながら続けられて、「ちょっと丁寧な暮らし」が実現できたりする。
 
たまにはまらないこともあって、費やしてしまった余計な時間や不器用な自分に落ち込むこともあるけれど、悲観する必要もないだろう。だってはまるピースが見つかった時のワクワク感でそうした時間すら無駄じゃなかったと思えるのだから。
 
やれなかったことを、小さくやってみよう。私はしばらく足りないピースを探し続けるだろう。今はまだ真っ白なピースでも、いつか、このパズルを完成させたときに見えてくる絵の輪郭を捉えられる日が来るのだと信じている。
 
 
 
 
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2021-04-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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