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たとえ、誰も見ていなくても、あなたはそれを知っている


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
馬場 さかゑ(日曜ライティングゼミ)
 
放課後、なにげなく、教室に行ってみると、マリがいた。
「あれ、まだ帰ってなったの」
声をかけられて、振り向いたマリは、しまったという顔をした。
 
黒板消しを使っても、チョークの粉や跡は残る。
マリは、その上から濡れた雑巾で拭いていた。
 
「ありがとう。黒板をきれいにしてくれているんだね」
そう言えば、このクラスの黒板は毎朝、とても綺麗だった。
 
「毎日、マリが掃除しているの?」
「はい」
「えらいねえ」
「黒板が綺麗だと気持ちがいいでしょ」
「そうだね」
「でも、先生、誰にも言わないでね。みんなに知られるとやりにくくなっちゃうから」
 
だから誰もいない放課後、部活の後で教室に戻って綺麗にしているのだという。
 
素敵な子だと思った。
誰にも褒められないけど、でも、いいと思ったことはやる。
こういう子は、素敵な社会人になるし素敵なお母さんにもなるだろうと思った。
 
新人教師として赴任した学校は、地方のしかも田舎の公立中学。
男女差別がはなはだしかった。
県内を見渡しても中学校ではまだ女性校長などいなかった時代である。
新卒の男性教師はすぐに担任を任されたが、先輩の女性教師は3年間たってもまだ担任をもったことがないというありさまだった。
 
中学の担任は、若い女には無理。
そんな暗黙の空気があった。
 
私は2年生の国語担当だった。
主要5教科担当は、そのまま持ち上がるのが決まりのようになっていた。
初めての教師に3年生の担任を任せられるはずがなく、早くても私が担任を持てるのは再来年。
 
担任になることは教師の夢だ。やりがいだ。
2年間のお預けは、絶望的に遠い未来だった。
 
ところが、翌年、わたしは1年生の担任を任されることになった。
 
私の代わりに3年の国語を担当することになったベテランの教師は
「いきなり見知らぬ3年生を持たされるなんて、ありえない。あんたのせいだよ」
と文句を言った。
 
きけば、教務主任が強引に私を推してくれて、決まったのだという。
 
「二年生の昇降口の掲示板に、毎月、国語科の掲示をしていただろう」
 
いつのものかわからないような交通安全のポスターだけが、ポツンと貼られていた掲示板を交渉して貸してもらった。
生徒の作品や好きな詩などを月替わりで貼らせてもらうようにしたのだった。
 
「当直の見回りの時に、毎月、あれをみるのが楽しみだったんだってさ、教務主任。この子には来年ぜひ担任を持たせたいってずっと思っていたんだそうだ」
 
職員室から一番遠い二年生の昇降口。生徒以外に通ることはほとんどない。
生徒の素敵な詩や作文を、ぜひ、他の生徒に見てもらいたい。
私の好きな詩や短歌を、みんなにも味わってもらいたい。
国語を好きになってもらいたい。
 
そんな思いだけで、毎月ワクワクと楽しんで掲示していた。
 
その時、仕事に対しての確信と信頼ができた。
 
誰かが、きっと見ていてくれる。
 
仕事でお伺いしたある会社の社長が毎回受講者に話してくれる話の中に、こんな内容があった。
 
「迷ったらやりなさい。最悪、元に戻せばいいだけだから」
 
私も、いつもそう思っている、迷うんだったらやってみよう。うまくいかなくても、元に戻せばいいだけなんだから。
ところが、さすが、一流企業の社長の話はそこで終わらなかった。
 
「でもね、やる前の君と、やった後の君は、必ずかわっているはずだから」
 
そうだ。
結果は、同じように見えても、自分がそこに挑戦して得た経験は、必ず自分の力となる。
 
やればできたはず…と、自分に言い訳をしながら、挑戦を避けていたら得られなかった経験である。
そして、その言い訳をしている自分の不甲斐なさを一番知っているのは自分なのだ。
 
私は、仕事に対して信頼がある。
 
その信頼は、きっと誰かが見ていてくれる。というものだ。
たとえ、誰もみていなくても、自分は見ている。というものだ。
 
わたしは、怠け者だし褒められたがりだ。
 
だから要領がいい。
時間をかけないで効率的にやることは私にとっては美徳だ。
どうしたら褒められるか認められるかも計算していたりする。
 
だが、小手先の要領は必ずバレる。
バレなくても人の心をうごかすことはできない。
 
仕事には通用しない。
 
今、私は、企業研修の講師だ。
1日の研修をするには、最低でもその10倍の勉強が必要だ。
10倍勉強したということが自信にもなる。
それが、余裕にもなって、知らないことを知らないと言えるようになる。
人に聞けるようにもなる。
 
長年、4月は多くの新人とお目にかかってきた。
そして、毎年、
「誰かの役に立つ人になって欲しい、人生を楽しめる人になって欲しい」
と祈りながら送り出してきた。
 
体力の衰えを感じて、3年前から新入社員研修はすべて断っている。
でも、この時期になると、日本中の新入社員に心からエールを送りたくなる。
 
上から目線は承知しているが、還暦をとっくに過ぎた先輩の余計なお節介と笑って聞いて欲しい。
 
今年新社会人になった100万人のみなさん。
 
仕事を楽しんで欲しい。
それが、人生を楽しむことに繋がるから。
手を抜かないで挑戦して欲しい。
誰かが必ず見ていてくれる。
たとえ、誰も、見ていなくても、あなたは、それを知っている。
 
 
 
 
****

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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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