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おままごとでしょうか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三澤純子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ケアマネージャーからメッセンジャーに送られてきた写真には、小鉢の中に乾電池と切り刻まれたUSBが入っている。
 
「カボチャを煮た、と言っています。お砂糖を入れて煮たようで、お鍋がベトベトです」
 
マジか? 乾電池、煮るか!? USBコード、切るか? 砂糖、入れるか?
 
母の様子がおかしくなってきたのは約1年前。それまでは、食事の支度は自分でしていた。一人暮らしの母は、ひとりで近くのコンビニに行って、自分の好きなものを買って食べていた。遠くのスーパーに行くのはしんどくなっていたので、週末に実家に帰ると一緒にスーパーで買い出しをした。万一に備えてカップ麺も常備していた。それがどんどん減り始めたのは去年の6月。1ヶ月で30個のカップ麺がなくなった。これはまずいだろう。
 
ケアマネに相談して、デイサービスに週3回通い始めたのが夏。デイサービスに行かない日のお昼は、お弁当の宅配をお願いした。毎日1食は栄養のあるものを食べられる。朝夕は、電子レンジでチンできるご飯と長期保存パンなどを用意した。スーパーには一人暮らし用のおかずパックが、かなり充実していていることを知った。調理済みのひじき、卯の花、切り干し大根、お豆さんなどが一人前ずつパックされて売っている。ポテトサラダ、卵サラダ、ゴボウサラダなど、サラダパックにもお世話になっている。週末に帰れない場合もあるので、2週間分、昼はいらないので28食分の食品を冷蔵庫に入れておく。最初は野菜やベーコンなども入れておいたが、母は、ほぼ料理をしなくなってしまった。
 
デイサービスではお風呂も入れるので、着替えと老眼鏡を持って行く。小さなバックひとつで済むところなのだが、通い始めて少し経ったころ、デイサービスから電話が入った。「バックを6つ持ってきています」
 
週末、実家に帰って確認すると大小さまざまなバックがパンパンだ。「どうしたの?」と聞くと「修学旅行に行くから準備したの」と言っている。中には昔行った富山や北海道のパンフレットと大量の服やタオルがぎゅうぎゅうと詰め込まれている。「いやいや、これは日帰りのデイサービスだからいらないよ」と説明して元に戻すのだが、バック問題はしばらく続くことになってしまった。
 
デイサービスから「使わないバックを目の届かないところに隠してしまいましょう」とご指導を受けて、やってみた。バックの数は減ったのだが、デイサービスの準備をすることが、母にとっては一大事となってしまっている。朝4時ごろ電話が入る。「持って行くものがわからない」 それから2時間、電話越しに持ち物の準備をする。下着と老眼鏡とマスクとカギだけでいいのだが、わからない、わからない、が続く。本人、パニック状態。ケアマネに相談して、デイサービスの準備のために朝だけヘルパーさんに来てもらうことにした。ほっとした。ヘルパーさんが着て準備してもらえることで、母のパニックは収まった。私も朝の混乱から解放された。
 
週末に帰るとまずはテーブルの上に散らかった食事の残骸を片付けることから始まっていたのだが、ヘルパーさんが一日おきに入ってくれたために、食事の片付けもしてくれるようになり、時間が有効に使えるようになった。ある日、ヘルパーさんからの連絡が入った。「テーブルの上に小皿がいっぱいに並んでいて、お皿の上にティッシュや靴下が載っていました。ゆうべお友達が泊まっていったと言っています」
 
宴会したか? いや、誰も泊まりに行っていない。でも、母からの連絡では誰かがしょっちゅう来ている。もちろん、誰も来てはいないのだが。
 
うちは一般家庭だが、昔は父の同僚たちが大勢で飲みに来ていて、居酒屋みたいだった。母はそのたびに料理をふるまっていた。おでん、天ぷら、里芋の煮っ転がし、風呂吹き大根、筑前煮など、大鍋で大量に作っていた。枝豆や空豆の下ごしらえや酢の物や白和えを手伝ったな。漬物も樽で漬けていた。子どもの頃の私は、母が料理をするのは当たり前に思っていた。でも、今にして思えば、あれだけ大量の料理を用意するのは、大したものだ。そういえば、冷蔵庫が二つあったけ。小さい冷蔵庫にはビールがいっぱいだったね。先に酔いつぶれたお父さんの傍で、若い男ども相手にお嫁さんの世話なんかも焼いていたね。男兄弟がいない私だけど、お兄ちゃんと呼べる人が何人もいるのは、お父さんとお母さんのおかげだね。なかなかできることじゃないって、大人になってから思ったよ。貴女は頑張った。
 
大量にあるお皿や徳利や調理器具が使われなくなってからずいぶんと経つ。今、母は昔に戻って、お兄ちゃんたちに料理をふるまっているつもりだ。
 
週末、台所のいろいろなものに感謝しつつ、ガス台にロックをかけた。できるだけ長く、自宅で過ごせますように。家内安全、火の用心。
 
 
 
 
***

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2021-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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