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人生“初”体験と“再”体験

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐々島由佳理(チーム天狼院)
 
 
「わ〜! お母ちゃん、すごいね!!」
 
あまりにも褒められるので笑ってしまい、
もうすぐ顔を覆うほどの大きさになろうかとしていた風船ガムは
ぱん! と乾いた音を立てて割れてしまった。
 
なんのことはない。
ただただ、風船ガムを2、3個ほおばり、プゥーっと膨らませただけのことだった。
はて、そう言えば風船ガムなんて何年ぶりだろう?
膨らませるタイプのガムを噛んだ記憶が、いつからかプッツリ切れていた。
それでも身体は覚えているみたいで、口の中で何度か噛んでいると「あぁそろそろだ」とガムの弾力で良き頃合いが分かるし、息の吹き出し具合もちょうど良い塩梅で調整できる。
ただ懐かしい遊びを久しぶりに披露しただけのことで、スタンディングオベーションばりにピョンピョン跳ねては拍手喝采する娘たちに、私はすっかり気を良くしてしまった。
 
娘たちは「私も! 私も!!」と次々ガムを口の中に放り込み、必死にやって見せるのだけれど、膨れるのは可愛いほっぺただけだった。
「ふふふ。まだちょっと難しいかな」
私はまた娘たちのワクワクした顔見たさに、プゥーっと風船ガムを膨らませるのだった。
生まれて初めての驚きや感動が、娘たちの中に記憶されていく。
そんなひとときを胸に刻みながら。
 
 
風船ガムを食べて、それを大きく膨らませる。
私にとっては他愛もないことが、生まれて6年の長女、4年の次女にとっては人生“初”のイベントになる。
そんな一大イベントは、家にも、街にも、日常にも、いたるところに溢れている。
 
そうだ。
お風呂場で手と泡で大きなシャボン玉を作った時も、ただ牛乳と液を混ぜてフルーチェを作った時も、長い髪を編み込みにしてあげた時も、一緒に塗り絵をしながら私が色を重ねてグラデーションにした時も、スキップをした時も。
特別なわけではないのに、ただそれらを披露した私のとなりには、どんな時もキラキラした眼差しと、身体いっぱいのワクワクで弾けそうな娘たちがいた。
私の毎日は、実はそんな “初体験”の立ち会いの連続だし、その場をつくってもいる。そう思うと、私の日常は一瞬にして今までと違った彩りを帯びてくるのだった。
 
 
以前は仕事で都内を飛び回っていた私も、ほぼ毎日、地元湘南で過ごすことが多くなった今の生活。海と山、自然を行き来し、のんびり緩やかな時間が流れる。
けれど、子供たちは生まれてから都内の大きな街にまだ行ったことがないから、きっと全てが刺激的で驚きの連続に違いない。
だから、たまに仕事で都内まで足をのばす時は、私の目に街の全てが、細部が、せわしなく飛び込んできて忙しい。子供たちのフィルターがかかり、昔なら意識せず通り過ぎていた街の風景や様子も、一つ一つ、新鮮で愛おしさをまとっているからだ。
 
オフィス街の高層ビル群や東京タワーなど巨大な人工物、道路の下を走る電車、銀杏並木に続く黄色い葉っぱの絨毯、イルミネーションでキラキラ輝く大きな通り、若者たちが頬張るポップでキュートなスイーツ。
何を見ても、何に触れても、「きゃ〜」だの「わー」だの「すごーい!」だの、嬉しそうにはしゃぐ娘たちが頭をよぎり、私は一人ワクワクが止まらない。
 
 
私はまるで、生きているそばから、人生をもう一度生き直しているみたい。すでに私の中にある何十年分の記憶や感覚が、彼女たちとともに再び色を取り戻し、たっぷり私を満たしていく。彼女たちの人生“初”体験に湧く感動は、私に人生“再”体験の感動を届けてくれる。そんな、お互いに与え合う、不思議な循環を生きている。
 
 
私はこれから彼女たちに何を届けてあげられるだろう。
取り立てて大げさなことじゃなくてもいい。
春には満開の桜の木の下で、落ちてくる桜の花びらを空中でキャッチしたりするんだ。
夏は、波で丸く削られたシーグラスを拾って瓶に集めよう。
秋は、落ち葉の上を歩いてポテトチップスみたいな音を楽しむのもいいね。
逆に冬は、降り積もる雪の音にならない“静寂の音”を探しに行こうか。
 
 
そして、いつからだろう。
私の中には経験則がなく、彼女たち自身で体験し記憶し、乗り越えていく世界も出てくるだろう。
いずれも、嬉しくて楽しいことであってほしい。
どれも「わー!」「すごーい!」と目を輝かせる瞬間であってほしい。
けれど、きっと、辛いことや痛いこともあるんだ。
 
だから、そんな人生“初”体験の時にだって
「お母ちゃん、すごいね」
そう言ってもらえるように、日々、人生“初”体験と“再”体験の連続をこれからも楽しんで生きていきたいなと思う。
 
この世界には、行ったことも、食べたことも、見たことも、聞いたことも、感じたこともないものが、この世界にはまだまだたくさんあるよ。
これからも、それを一緒に見つけようね。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 


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2021-04-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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