メディアグランプリ

この本を読むと、何故、ノーベル文学賞を受賞出来たのかが解かる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田THX将治(リーディング俱楽部)
 
 
「えッ! マジか!!」
5年前の秋、東京天狼院のこたつ席で声が上がった。
横目の広いスペースでは、私も参加している別のイベントが開催されていたにもかかわらずだ。イベント講師は、一瞬嫌な顔をしたが、直ぐに話を続けた。
何故なら、こたつ席の一団には、天狼院の三浦店主も居たからだ。
 
5年前の東京天狼院は、多少の手直しは行われていたものの、その殆どが開店当初の風景を残していた。その典型的例は、天狼院名物のこたつ席だ。5年前のこたつ席は、現在の天狼院各店舗に備わった、ちゃんと一段上がった座敷に在った訳ではなく、狭い店舗の一角の床に直接二帖の畳が置かれているだけだった。
その、床に地か敷きされた畳の上にこたつが在り、それが名物と化していた。
 
外から著者であり講師である方を招いたイベント中でありながら、横のこたつ席に三浦店主を含めた一団が集結していたのは、それなりの訳があった。
その訳とは、その日、ノーベル文学賞の受賞者が決まることになっていたからだ。その年のノーベル文学賞で本命視されていたのは、日本の村上春樹氏だったのだ。三浦店主等は、村上春樹氏が受賞する瞬間を共有しようと、固唾を呑んでPCを見詰めていたのだった。
イベント前、三浦店主は、
「いつか天狼院から、ノーベル文学賞は兎も角、芥川賞や直木賞の受賞作家が出るかも知れない。今日は、その予行演習さ」
と、強気なことを言っていた。
 
御存知の通り、その年のノーベル文学賞を村上春樹氏は逃した。
代わって受賞したのが、意外なことにアメリカのミュージシャン、ボブ・ディラン氏だった。三浦店主でなくとも、驚きの声を上げたことだろう。
何せ、本業が作家ではなく、長編の著作が無いミュージシャンがノーベル文学賞を受賞する等、前代未聞のことだったからだ。
 
ボブ・ディラン氏といえば、1960年代から活躍している人物だ。『風に吹かれて』や『ライク・ア・ローリング・ストーン』等、一度は耳にしたことがあるだろう。今や、“フォーク”や“ロック”といったジャンルにとらわれない、スタンダードな音楽となっている。
かくいう私は音楽には詳しくないが、1978年に行われた初来日公演(日本武道館)へ行った覚えがある。それ程までにディラン氏は、日本の一般大衆に影響を与えたのだ。
 
但し、ノーベル文学賞の対象となったディラン氏が綴(つづ)る歌詞が、どれだけ賞に値するものなのか、私を含めた英語非ネイティブの日本人は理解出来ないでいた。英語の歌詞を読むと、綺麗に“韻(いん)”を踏んでいることは解る。
しかし、大概の英語詩は韻を踏んでいるものだ。
日本語での解説書は無いし、英語の解説書は解読出来る筈もない。
私は、ボブ・ディラン氏のノーベル文学賞受賞を、単なる知識として記憶するしかなかった。
 
今年の3月に入り、私は、『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』(ヤマハミュージックエンターテイメントホールディングス・ミュージックメディア部・刊、リチャード・F・トーマス著、萩原健太・監修、森本美樹・翻訳)という本に出遭った。
監修を務めた萩原健太氏は、著名な音楽評論家だ。著作も多い。
ハーバード大学に関しては、世界最高峰の学問の府としてコンセンサスを得られることだろう。
そして、著者のリチャード・F・トーマス氏は、ハーバード大学の古典文学を指導する教授だ。
『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』の目次を見ると、この本はハーバード大学の新入生向けに開講された講義を採録したものとある。
 
ハーバード大学の講義といえば、NHKで放映された『マーク・サンデル教授の白熱教室』でその熱量がお解かり頂けるだろう。
この『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』も、読み進めるとかなり熱のこもった授業だと想像することが出来る。しかも、新入生向けの講義とあって、若年層にも理解し易い言葉で行われている。
そこには、ボブ・ディラン氏の歌詞の何が、文学的なのかという、ノーベル文学賞受賞時に私が感じた本質的疑問に答えている。しかも、ボブ・ディラン氏の歌詞を一曲一曲解き明かす‘縦割り’ではなく、古典文学を引き合いに色々なディラン氏の歌詞を縦横無尽に渡り歩く形で解説してくれている。
 
文学的リテラシーが低い私には、もう少し読み込む必要があるが、それでも何となく、ボブ・ディラン氏がノーベル文学賞に値するのだということが解かってきた。
 
それにしても、“フォーク”や“ロック”といったポップ系音楽を、単なる娯楽として片付けるのではなく、最高学府で講義として扱う点は、日米の文化度の差を見せ付けられた様で、羨ましくも有るものだ。
 
『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』の巻末には、ボブ・ディラン氏が授賞式を欠席した為、詳細が報じられなかった授賞式の内容が、採録されている。
¥2,700.-+消費税と、少々高価な一冊ではあるが、授賞式の様子が伺えるだけでも、価値が高いともいえる。
 
音楽や文学に興味がある方は、一度手に取ってもらいたいものだ。
 
 
 
 
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2021-04-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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