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メディアグランプリ

全力疾走で死にかけて見えた世界


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村人F(ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
僕にはもう、5分しか残されていなかった。
 
次の電車が出るまでの時間。職場から最寄り駅まで、いつもなら10分かかる距離。
普段だったら諦めてもう1本待とう。
そう思っていた。
 
しかし、その日は違った。
僕には、外せない用事があった。
天狼院書店の名古屋店で開催される「スピード・ライティング講座」
これを最初から聞くためには、5分後に出る電車に乗るしかなかったのだ。
 
やるしかない。
僕の中でギアが入った。
最後に走ったのはいつになるだろうか。
もはや記憶にない。
しかし、万年文化系の僕でも、全力で走ればギリギリ間に合うかもしれない。
 
僕は駆け抜けた。
夜の町を死にものぐるいで走った。
1分後にはもう息切れだ。普段どんだけ運動していなかったんだと恨み節が浮かぶ。
しかし、ペースは尋常じゃなく早くなっている。
2分で残り500mまで詰めていた。
その1分後、信号に捕まる。しかし30秒の休憩時間が得られたことを考えると、むしろプラスだった。
 
あと300m。
階段を駆け抜け、駅の構内からホームまで人混みを避けながら突っ走る。
あと少し。間に合え。最後の1分は記憶に残っていない。
記憶が復活したのは、ホームに着いたのと同時に、乗ろうとした電車が到着した瞬間だ。
 
間に合った。
職場から駅まで1km。
中学時代のベストで8分はかかっていた距離を、わずか5分で走りきったのだ。
 
しかし、もはや立つことすらできない。
運悪く椅子に座ることができなかったが、地べたに情けなく座り込んでしまった。
意識も朦朧としている。呼吸も満足にできない。
別にここまで走らなくても、講座の後日配信があるんだからそれ見りゃよかったじゃん、なんて思いも今更浮かんでくる。
 
だが、それ以上に脳内で快感物質が満ち溢れていた。
あの全ての細胞が全力疾走をすることだけを考えた時間。
そこから得られた達成感が強くあった。
薄れゆく意識の中だったが、尋常じゃない疲れと心地よい感情が入り混じった不思議な時間だった。
 
そういえば、全力で何かに取り組んだのはいつぶりだっただろうか。
最近は仕事でもなんでも、余裕を持ってやることが推奨されている。
だから、スケジュールを徹底的に管理し、作業も細かく分解するなど、色々な努力をしたものだ。
その効果もあって、7割くらいの力でそつなくこなせる感じになった。
しかし、代償として何かに全力で向かう体験がほとんど無くなったように思う。
 
その体験を久しぶりにしたわけだが、やってみるとそれは大変もったいないことに思う。
あの全力で駆け抜けていた5分間、僕のパフォーマンスは人生の中でもトップクラスに活性化していたからだ。
 
あのとき、体中の筋肉全てが、本気で走ることだけを考えていた。
雑念が浮かぶこともなく、脳から足まで、電車に間に合うためフルパワーを出していた。
その結果、中学時代を遥かに超えるベストタイムを叩き出したのだ。
 
逆にいうと、普段余裕を持った生活を心がけている僕は、持てる力をほとんど使えていなかった。
そのせいでミスを出して怒られていたのかもしれない。
どうやら人間が本気を出すには、ギリギリの状況に自分を追い込むことも重要らしい。
 
そういえば、朦朧とした意識で受けた「スピード・ライティング講座」でも、そういう話があった。
全力疾走の大事さを体験した直後だったから、骨身までその言葉が染み込んだのをよく覚えている。
 
だが、普段の生活で全力疾走しなければならない場面を作るのはリスクが高い。
今回は間に合うか間に合わないかギリギリだったが、これは偶然できるような代物であり、通常時で設定できるものではないだろう。
こんな状況が頻発するなら、作業計画が破綻している可能性もある。
そういった生活を続けると精神と身体をすり減らしてしまうはずだ。
間違っても狙って作るべきではない。
 
だから僕は、全力でやればギリギリで間に合うかもしれない状況を、天からの恵みと考えることにした。
なぜなら、これが危機的な場面だからだ。
通常ならパニックになり普段通りの力が出せるか怪しいだろう。
 
しかし、全力で駆けるために神が用意した舞台だと頭を切り替えると、見える景色が180度変わってくる。
絶望的な場面が、超えられそうな壁になる。
そうすれば、萎縮するようなところでも、むしろギアをチェンジして普段以上のパフォーマンスを出せるようになる。
こうすることで、逆境が自分の力を200%向上させる場になるのだろう。
 
数年ぶりにやった全力疾走。
その成功体験は、わずか5分走っただけなのに相当なものだった。
あのときの快感を、今でも鮮明に覚えている。
こういった未来が待っていることを考えると、ギリギリをいくのも悪くない。
 
これからの人生、何度も危ない場面に出くわすだろう。
そのとき、僕は思い出す。
乗り越えた先にあるのは、最高のパフォーマンスを出した自分だと。
そう奮い立たせ、壁を超えてやる。
 
 
 
 
***

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2021-06-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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