メディアグランプリ

学歴コンプレックスを砕いた受験。


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記事:蔵本貴文(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
大学入試センター試験は9時半からの開始だった。
受験会場は通いなれた学校。隣に住んでいるので9時に起きる。
 
教室に入ると周りを見渡すと緊張をしている受験生たち。
まさかこの受験生の中に、僕みたいに昨日夜中の2時までバイトをしていた奴なんていないだろうなと考えると、妙に楽しい気分になった。
 
 
 
 
高校時代、部活はすぐにやめてしまった。高校生活をエンジョイした記憶もない。
だから、いま振り返って覚えていることなんて、受験勉強しかない。
 
そして、その高校生活の全てをかけて臨んだ大学入試。
第一志望の国立大学には不合格。結局、滑り止めで受けていた私立大学に通うことになった。
 
しかし、本当にその大学に通うかどうか、直前まで悩んでいた。
浪人して、もう一年頑張った方が良かったのではないかと……。
 
でも、受験勉強が続くのも嫌だったし、浪人したところで来年合格できる保証なんてどこにもない。そんな不確実なものにお金と時間を使うのも、辛く思えるようになってきて、結局滑り止めの大学に入学することにした。
 
 
大学に入学して、理系だったので多少は勉強もしたが、一番打ち込んでいたのはアルバイトだった。時給750円で毎月10万円以上は稼いでいただろうか、バイト先のレストランにいるフリーターの人と肩を並べるくらい働いていた。
 
しかし、その頃の私は本当にイヤな奴だった。
大学の中でも、自分は○○大学を落ちてきたから、少し違うと思っていた。バイト先でも、「俺は頭が良いのだから」と、周りの人を少し上から目線で見ていたと思う。
本当に恥ずかしい奴だった。
 
 
そうやって大学生活を始めた1年目の夏くらいだっただろうか?
当時は大学生活やバイトにも慣れてきて、そこそこ充実した生活をしていた。
 
しかし、同時に学歴コンプレックスがどんどん高まっていて、○○大学を落ちた自分というのが、どうにも許せなくなってきたのだ。
そこで、大学に在籍したまま、受験をやり直してみることにした。いわゆる仮面浪人というやつだ。
 
しかし、大学生活もあるし、バイトも楽しい。だから、3重生活を始めることにした。
常識的に考えれば、これではまともに勉強している現役生や浪人生になんて勝てるわけがない。でも、この時はこの選択がベストなような気がしていた。
 
 
書店で捨ててしまった受験参考書を買いなおした。その日から少しずつ、大学の図書館の地下の書庫前で、受験勉強を始めることにした。
もちろん、学校の授業やバイトの合間だ。相変わらずバイトは月に100時間以上していたし、大学の単位もきっちりとっていた。だから、受験勉強の時間は少ない。
 
でも、なぜか受験生の時にはない余裕があり、勉強を楽しめたような気がした。
親の金でなく、自分の小遣いで受ける模試は、何かイベントに参加しているような感覚だった。
現役の時には見たことのないB判定を取ることもできて、「これはもしかしたら」と思ったこともあった。
 
そして、1月に大学入試センター試験。私の志望校はセンター試験の配点が少ないこともあり、余裕モードだった。
大学会場は自分の通う大学である。住所で割り振られるので当たり前か。なんせ、私は大学の裏の下宿で生活していたのだから。
 
前日、夜中2時まできっちりバイトをして、試験に臨む。
会場は普段通っているキャンパス。前日は深夜までバイトをしていたこともあって、試験開始の30分前まで寝ていた。
周りの緊張している受験生を横目に、「この中で昨日の深夜までバイトしていた奴なんて、俺くらいのものだろうな」と考えると、なんか楽しくなってしまった。
 
そうやってリラックスして臨んだセンター試験だったが、結果は上々だった。特に英語なんて、現役の時の模試も含めて、最高点をとることができた。
やっぱり、リラックスすると、かえって結果が良くなるものなのだろうか……。
 
 
そして、それから一か月ほど後に、二次試験の日がやってきた。
実際のところ、ほとんど勉強はしていない。ただ、受験を止めるという選択肢はなかった。この時は受験料も自分の小遣いから払っていたから、もったいないという気持ちもあったのだろうか?
 
さすがに二次試験は前日までバイトというわけにはいかない。コンディションを整えて、しっかり調整して試験会場に向かう。
 
そして、試験に臨んで……。
センターはなぜかうまくいったが、本当の力が試される二次試験でそれが通用するはずはない。絶対的に勉強不足なのだ。現役の時よりは多少ましだったかもしれないが、手ごたえは少ない。
合格者の受験番号が書いてあるレタックスという郵便を受け取り、自分の番号が無いことを確認して、私の二回目の受験は終わった。
 
 
残念な話と思うかもしれない。
しかし、この日を境に自分の中で大きな変化が起こったのだ。
 
もう、この大学に対するこだわりはなくなってしまっていた。
だから、今の大学で残り3年の大学生活を充実させていこう、と気分が切り替わったのだ。
 
もう学歴コンプレックスにも苦しまなくなっていた。〇〇大学と聞いても、心が動かされることもなくなった。
その後の3年間は、勉強もそこそこしたし、バイトでお金も稼いだ。そして、人生初の彼女ができるなど、人並みに充実して楽しい大学生活を過ごせたのではないかと感じている。
 
 
しかし、今でも考えることがある。もし、私がこのとき仮面浪人をしていなかったら、もう一回受験していなかったら、その後社会人になっても学歴コンプレックスに悩まされていたのではないだろうかと……。
 
 
この時、受験してみたことは、私の人生における「素晴らしい行動」のベスト5には入ることだと思っている。再受験を決めた過去の自分をほめてやりたい。
 
例えば、「好きな人に告白しょうか」とか、「海外に飛び出してみようか」とか、「本能的に良いと感じている会社に転職するか」とか、悩んでいる時、とりあえずやってみたら良いと思うのだ。
行動には後悔という感情を、打ち砕いてしまうような力があると信じている。
 
 
 
 
***

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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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