メディアグランプリ

「正義のみかた、大恥を晒す」 の巻


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:射手座右聴き(ライティング・ゼミ朝コース)

 
 
「おっさんの、ダメな所を挙げてください」
 
お腹が出てる、自慢が多い、
いつまでも若いと思っている
セクハラ、パワハラをしていることに気づかない
言い出したら、キリがありません。
 
みんなが厄介と思う生き物、
おっさんが少しでも世の中の役に立てないか。
 
という主旨で始まったのが、
1時間1000円で、おっさんをレンタルできる
「おっさんレンタル」というサービスです。
 
ある日、こんなメールが来ました。
 
「射手座右聴きさん(私)に、彼氏の役を演じて欲しいんです」
 
もう一度、読みました。
 
「彼氏の役を演じて欲しい」
 
念のため、声に出してみました。
やはり「彼氏の役を演じて欲しい」とあります。
 
依頼者のA子さん(仮名)は、職場の男性から、しつこく食事の誘いを
受け困っているということでした。
 
断っても、断っても、誘ってくるそうです。
 
「周りの人には、相談したのですか」
 
と返すと、
 
「いいカップルになりそうと男性の肩をもっている」
 
とのことです。
 
なので、
「仕事が終わったら、迎えに来て彼氏の役を演じてもらい、
男性を諦めさせたいんです」と。
 
ウォーーーッ
 
頭の中に、ロックスターのシャウトが聞こえました。
 
映画で、ヒーローが地球を救うため出撃するときの様な、
バラードのシャウトです。
 
一生懸命職場で働いてる女性を、セクハラから守る。
 
「正義の味方」になる仕事です。
 
彼氏というには、歳がいってるけど、やってやろうじゃないの。
 
その日から作戦指示のメールが来るようになりました。
 
日にちは一週間後と決まりました。
 
迎えに行くのは勤務時間のおわり、
なんと朝10時過ぎだというのです。
 
夜勤を頑張っている女性なのに大変だな。
 
ウォーーーッ
 
また、頭の中でロックスターがシャウトし、
正義感のメーターがひとつ上がりました。
 
服装について依頼がきました。
「営業で外回りをしている彼氏と言ってるので、スーツでお願いします」
 
スーツとシャツをクリーニングへ。
 
さらに考えました。
「一目見て、諦めるような彼氏とは」
 
真面目な営業マンに見えないといけないだろう。
 
ヒゲは剃り、髪は短めの方がいいでしょう。
靴をピカピカにしましょう。
 
作戦3日前、
A子さんからメールです。
 
「私の退勤時間は、10時12分。
ビルの裏の通用口から出ます。
その時間に、男性は休憩をとりに外に出てきます」
 
ふむふむ。
 
「迎えに来て、手を振ってください。
付き合って半年と言ってるので、それらしく
私の荷物を預かり、エスコートして欲しいのです。
男性と目を合わせて、『A子がお世話になっています』
と言って。会釈をして欲しいのです」
 
メールは続きます。
 
「チャンスは1度です。彼氏がいること見せつけたいです」
 
ヒーロー映画に
スパイ映画のような任務が入ってきました。
 
メールを読み返しながら、イメトレを続けます。
 
作戦前夜。
 
「いよいよ、明日です。10時12分、よろしくお願いします」
 
「全力で守ります」
 
メールを返す指にも、なぜか力が入ります。
 
翌朝。
なんと、1時間前には、現場に着いてしまいました。
 
通行人を装い、ビルの通用口を確認してから、
コンビニのイートインで待つことにしました。
 
ひたすらイメトレです。
 
一番大事なことは、依頼者A子さんの服装です。
 
グレーのパンツスーツだそうです。
 
男性は、170センチ位、制服の特徴も聞きました。
 
10時8分、待機開始。
 
10分に「今から通用口に向かいます」とメールが。
 
運命の10時12分。
 
通用口から、グレーのパンツスーツの女性がでてきました。
 
作戦開始です。
 
いいか、私は彼女とつきあって半年だ。
 
おっさんだけど、堂々と彼氏を演じるんだ。
 
笑顔で彼女に近づきます。
 
彼女の顔が見えた瞬間、表情筋が不思議な動きを始めました。
 
笑顔ではなく、驚きの方向に動こうとするのです。
 
今、驚くわけにはいきません。
 
表情筋をぐわーっと戻します。
 
彼女の荷物を笑顔で受け取り
振り返り、制服の男性を探します。
 
「A子がいつもお世話になっています」と会釈しました。
 
2人で仲良く外へと向かいます。
 
角を曲がり、百M程歩いた後
 
A子さんが口を開きました。
 
「今日はありがとう」
 
任務完了!
 
いやいや。
 
とてもとても、大きな間違いをしていました。
 
「もっと若い子だと思ったでしょ」
 
冗談ぽく言ったA子さんは、
50代後半の方でした。
 
迎えに行った時の、驚きかけた私の表情を、
彼女は見逃さなかったのです。
 
正直「男性にしつこくされている」と聞いて
2,30代の女性を思い浮かべてました。
 
勝手に妄想して
正義の味方気取りのおっさんでした。
 
ああ、恥ずかしい。
 
何歳だろうと、好きでもない男性から追いかけられるのは
怖いことだ、ということに思いが至りませんでした。
 
セクハラに年齢は関係ない。
わかっていたのに。
 
正義の「見方」を間違えるようでは
正義の味方なんか、100年早い。
 
上手いこと言えてるかわかりませんが、
恥ずかしいこと。
 
恥を晒して、自分の「見方」を
変えたいのです。
 
 
***

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2018-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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