メディアグランプリ

化物呼ばわりされたことで解けたコミュ障の呪い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ニシモトユキ(ライティング・ゼミ5月開講/朝ゼミ)
 
立食形式の懇親会、あれを楽しめる人は心から凄いと思う。
誰と、どんなふうに、どんなことを話せばいいか、さっぱり分からない。
1人でいると、所在なくて、周りの目が気になるし。
誰かに話しかけられても、立食のちょっと話す時間に、何を話していいか分からない。
あんなに難しいコミュニケーションの場はないと、いつも思う。
そこで、私がたどり着いた解決策は、トイレだ。
信じられないかもしれないが、懇親会が始まり、乾杯の挨拶が済んだら、トイレへ。
そこで時間をつぶす。
そして、トイレで座ってスマホを見ながら、いつもむなしく思うのだ。
なんて自分はコミュニケーションが苦手なんだろう、と。
コミュ障なんていうけれど、これは本当に障害レベルだな、と。
懇親会だけではない。
セミナーに参加しても、隣になった人と、“ちょうどいい”会話ができない。
仕事関係の人と帰りの電車が一緒になったときも、会話がはずまない。
そうこうするうちに、そういう場面がどんどんおっくうになっていった。
疲れているときに参加するセミナーでは、「話しかけないで」オーラを出すこともしばしば。
帰り道が一緒になりそうなときは、「寄るところがあるので」と帰る時間をずらしたり。
ずっと、「コミュニケーションが苦手な自分」をコンプレックスに感じていた。
 
少し話がずれるが、ここ数年、年に1度、大学時代のサークルの同期女子3人と、“1年の振り返り会”をしている。
「去年こんなことがあって」と軽く近況報告しあう、みたいな気軽な会ではない。
まず、その日は、会議室を5時間押さえる。
手ぶらでは集まらない。
当日までに、前の年の主な出来事や、キーパーソンを書き込むシートを完成させてくることになっている。
1人の持ち時間は、1時間。
準備してきたシートをもとに、前年の自分の様子を紹介して、新年度に向けての目標や悩みについて相談する。
いつも、「こういうところが、やっぱり私たちワセジョだよね」と話す。
とことん本気の1年の振り返り女子会だ。
元をたどれば、大学時代にステージマジックのサークルという、かなり変わったサークルで知り合った。
年に3回の発表会があったのだが、発表会前には1ヶ月以上にも及ぶ毎日練習、そして、ほぼ徹夜で練習をし続ける泊まり込みの合宿がある謎の体育会系っぷり。
ステージマジックには種目があるのだが(例えば、鳩を出すのは“鳩”という種目、銀色の金属の輪をつなげたり外したりするのは“リング”という種目など……)、種目ごとに師匠から弟子へと技術が伝えられる師弟制。
ひとつのステージを完成させるためには、マジックを見せる演者以外に、照明、道具、音響などのスタッフも必要になるが、それらもすべて自分たちでこなす。
そんな濃厚な4年間を一緒に過ごした仲なので、お互いの性格もよく分かっており、多少のケンカも経験済みなので、言いたいことを遠慮なく言える。
過去の振り返り会でも、妊娠中なのに保活を全くしていなかった子に、仕事で保活に詳しい子が、「あんたは世界で一番のんきな妊婦だ」と言い放っていた。
今年の振り返り会は、2月11日だった。
いつものように、会議室を5時間押さえた。
前の年、「世界で一番のんきな妊婦」だった子は0歳児を連れて、ベビーカーやおもちゃとともにやってきた。
振り返り会が終わると、恒例の食事会。
今回は会議室から歩いて10分ほどの和食のお店だった。
どんな文脈だったか忘れたが、歩く途中、1人から言われたのだ。
「ユキはコミュニケーションの化物だからね!」
えっ? 私が? 耳を疑った。
「いやいや、コミュニケーション苦手だし、人見知りだし」
「はぁ? 何言ってんの?」
私から見れば、よっぽどコミュニケーションをとることの上手な彼女が、私のことを「コミュニケーションの化物」という。
一体、どういうことなのか?
「?」マークがぐるぐると頭をまわっていたのだが、食事の途中に、ふとひらめく瞬間があった。
それは、私がお店の人に料理の感想を伝えているときのことだった。
「この、うるいと鮪のぬた、とても美味しいです。ポテトサラダも山椒がきいていて、他で食べたことのない感じで……」
私は美味しいものが好きだ。
初めて出会う味や、「もう1回注文したいくらい美味しい!」という味に出会ったら、お店の人に話しかけずにはいられない。
「あ、これか」
そう思ったのだ。
彼女から見たら、私のこういうところが、「化物」めいてるんだな、と。
それから、自分のコミュニケーション能力への捉え方が変化した。
「とにかくコミュニケーションが苦手な自分」から、「コミュニケーションの化物なときもある自分」へと。
そしたら、不思議なことが起き始めた。
エレベーターで一緒になった人と、会話が弾んだり。
セミナーで隣になった人と話して共通の知り合いがいた、なんて盛り上がったり。
私のコミュニケーション能力が魔法のように上がった、というわけではない。
特にそこは変化していないのだが、「コミュニケーションが苦手な自分」と思っていたときには見えていなかった、「うまくやれている」場面が目にとまるようになったのだ。
そうすると、少しずつ、苦手意識が減ってきた。
もちろん今も、「立食形式の懇親会かぁ、嫌だなぁ」と思う。
けれど、「トイレには行かないでみようかな」とも思える。
私たちはよく、「自分は○○が苦手だから」、「私は✕✕なところがあるから」なんて口にする。
そうやって自分で自分に呪いをかけてしまっているのかもしれない。
本当はそんなことないかもしれない、変わっていけるかもしれないのに。
私は化物呼ばわりされたことで、トイレで過ごす懇親会を卒業できた。
今は、立食形式だって、ちょっとは楽しめそうな気がしている。
自分でかけた呪いから、解放されたから。
 
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2018-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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