fbpx
メディアグランプリ

家をオフィス化する


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:縞隈 千代子(ライティング・ゼミ平日コース)

みつからない! ほんとにみつからない!
かれこれ探しものをはじめて3時間。たったひとつのものを探すのにまだ見つからない。部屋の中はぐちゃぐちゃだ。

本、書類、領収書。同じようなペンがいくつも。こんなもんがよく押入れのみならず、棚の引き出しにはいっていたなぁ、と驚くばかり。

—-
結婚してはや10年。いや、夫婦間で「お互いがお互いのことを口出ししない」が暗黙の了解となってはや10年だ。家具を共通で使っているものの、それぞれのエリアの棚や押し入れの領域は治外法権。なにが入っているかはわからない。

去年話題になった契約婚ではないのだが、それに近い「独立」に近い生活をしてきた。つまり、わが家は合衆国政治。

かといって、それぞれの実家と交流がないというわけではない。お互いの独立を認めるならば、お互いを尊重することも大事なこと。夫の実家にいったときも、わたしはのびのびと義母とお酒を楽しみ、麻雀の勝ち負けで地団駄を踏むような状態だ。

このような話をすると、「理想的だわー」と言われることが多い。

でも、わたしはこの生活は間違っていたのではないかと、探し物をしながら思っていた。

なぜか? それは、あまりにも夫に対して構わなすぎたような気がしているからだ。

このモノ探しは、夫の急な入院で発生したこと。看護師に渡された入院生活リストを元に、鉄板のパジャマやメガネ、歯ブラシ、スリッパなどを夫の棚からひっぱり出した。

さらに今回はもうひとつのものを持っていこうとしていた。それは、wifiルーター。病院からは「wifi設備は病院にありませんが、ご自身のを使っても大丈夫ですよ」と話を聞いたので、夫から持ってきてほしいとリクエストがあった。

そのためのルーターはどこにある?
「部屋の右側にあるチェストのひきだしか、左側にあるチェストの上にある箱の中のどっちかにあると思うよ」がヒント。

まあ簡単に見つかるだろう、と甘く見ていた私がいけなかった。

ガサガサ。ない。ガサガサガ。あれ? 言われた棚にはないぞ。どこだ?

一応共有棚の引き出しの中をひっくりかえす。これは思った以上の作業で、大掃除というより引っ越しに近い感じになった。中身をひとつひとつ検品していく。「これNINTENDO-DS」「これは使っていないバッテリーチャージャー」ああ、引っ越しというよりも、突然現れた遺跡の調査に似ている。一つ一つを確認しなければならない。

それでもWifi ルーターは見つからない。

私の一人遺跡調査は押入れに突入した。今度は夫のエリアだけではない、私のエリアもだ。そこにあるのは、スーパーマリオの着ぐるみだったり、イカのかぶりもの……。なんと、わたしの黒歴史まで発掘してしまっている。

その結果。Wifiルーターは私のエリアで見つかった。カンフー映画「燃えよドラゴン」をフィーチャリングした肩もみ器と一緒に箱にはいっていた。
なぜ!? と何度も叫んでしまった。でも、よくよく思いだすと、夫からルーターを借りて、あたしがそこにいれていたのだった。

見つかったはいいが、あたり一面ひっくり返したあとだ。これを片付けなければならなのか? と思うとトホホモードだった。

でも。そもそもこんなトホホホモードにならなければいけなかったのはなぜだろう? それはわたしたちの生活が10年たっても「共同」になっていなかったからだ。「お互いを尊重する」「お互いを侵犯しない」その言葉に隠れて、知らなければいけなかったこと、知らせなければいけなかったことを伝えあっていなかったのだ。

もし、もっとお互いがわかりやすいようにものをおいていれば。
わたしのモノ探しも早く終わっただろう。
もし、もっとお互いがおせっかいをやいていたら。
夫は倒れなかったのかもしれない。

もしも。もしも。

そんな言葉が繰り返されると、夫が入院してしまったのも、わたしにも責任があるのだとずっしり重みを感じる。

かといって、入院中の夫に「ごめんなさい」と謝ってもすぐによくなるわけではない。わたしは夫がいない間に家を快適なオフィス化しよう! と決めた。

快適なオフィスは、居心地の良さと仕事の効率性に優れている。今の住居には住み慣れているので、居心地の良さはあるだろう。足りないものはただひとつ。「だれにとっても使いやすいか」という視点だ。

そこで手を出したのが、テプラを代表とするラベルライター。
多くの人が、ラベルライターはオフィス用と思っているだろう。でも、フォントの種類も多く、ラベルも透明なものを選べば、「ガチガチのオフィス感」は弱められる。

なので、とりあえずはわたしのルールでものをまとめ、棚を整理した。
棚の扉や引き出しに「コピー用紙」「携帯ケーブル」などバンバン貼った。
マスキングテープのラベルを使ったので、夫がわかりにくいと言えば置き場所の移動も、ラベルの張替えも簡単だ。

すべての作業にトータルで10時間はかかったのだろう。でも、前よりはどこに何があるのか? が簡単にわかるようになった。

それだけではない、わたしもつい「どこかにおいてわからなくなった」というのもなくなった。所定の場所がすぐにわかり、そこの戻すようになったからだ。
「オフィス」で長く働いていたから、その形になれてしまったからこそなのかもしれない。

オフィスみたいな家でも、より快適で過ごしやすい生活ができるのならいいではないか! と今は思う。退院した夫も「どこになにがあるかわかりやすくなった!」と大喜びしているしね。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

★満席御礼!【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事