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メディアグランプリ

わからなくても「わかる」と言ってくれる人の愛


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小池恵美(ライティング・ゼミ平日コース)
 

「前向きにならないとダメだよ」
あぁ、はいはい、もう聞き飽きたそのセリフ。あなたの思う「前」が本当に「前」だと確信が持てる理由は何なんでしょう。あなたの思う「前」はもしかしたら「後ろ」かもしれないじゃないですか。
 

……などと心の中で屁理屈をこねて毒づいてしまうくらい、やさぐれていた時期がある。すさんだ気持ちを隠して笑うことができなかった私に、何人もの人が言った「前向きにならないとダメだよ」、そして「わかる」という言葉。
 

当時は、「前向きに……」と言われること以上に、「わかる」と言われることが癇に障った。
 

「わかる」ってことは、私と同じ感情を知っている、という意味だと思っていた。
けれども感情は空模様のようなもの。「晴れ」という天気でも同じ空は二つとないように、「悲しい」と言っても、持っている感情はひとりひとり違うはずなのだ。それどころかひとりひとり話している言葉だって厳密には違っていて、私の言う「友達」は、誰かの言う「友達」ではない。だから、「私、友達いないんだよね」という私に「え、いっぱいいるじゃん」と答える人を、もどかしく感じていた。
 

私という人間が他にいない以上、私と全く同じ感情を持つ人がいるはずがないし、私も他の誰かの気持ちをわかるなんてことは不可能だと思っていたから、「わかる」という言葉を自分では決して使わないようにしていた。誰かの気持ちを「わかる」なんていうのは、その人に対してとても失礼なことだと思った。
 

けれども時間というものは偉大で、そうやってヒリヒリした空気を撒き散らしながら生きていた私をも、ただのおばさんに変えた。若い子に悩みの相談や身の上話をされると、つい「わかる」と言ってしまう。もちろん私はその子ではない。だからその子と全く同じ感情は持てる訳がない。でもやっぱり「わかる」と思ったし、その言葉しかないような気がした。
 

自分に自信がなくて、怖くて、あがいて、大丈夫かもと思ったらやっぱりまた怖くなる気持ちや、自分は自分でいいと思おうとしてもどうしても人が羨ましくなってしまう気持ち。目の前で彼女たちが口にする思いに、同じように縛られて苦しくて、誰かにわかってほしくて助けてほしくて、もがき続けていたいつかの自分が重なるような気がした。
 

大丈夫、と言ってあげたいと思った。根拠なんかない、いつ抜けられるかもわからない。でも、大丈夫と伝えたかった。私もそんな気持ちのときはどっちが前かもわからなくて、どうやったら抜けられるのかもわからなくて、でも、今、こうして生きている。もちろん、私がいた暗闇と、その人が今いる暗闇が全く同じはずはない。けれども夜の次には朝が来るように、冬の次には春が来るように、今は信じられないかもしれないけれど、きっと光が見えるときがくる。
 

暗闇にいると、怖いよね。いつまで続くんだろうって思うよね。わかる。私もそれ、わかる。だから、がんばれ。大丈夫。きっと大丈夫。
 

できれば助けてあげたくて、力になりたくて、でも簡単に「こうすればいいよ」なんて言えなくて、でも応援したくて、出てくるのが「わかる」という言葉だった。
 

そうか、あの頃、私に「わかる」と言ってくれた人たちは、私を応援してくれていたのかと今になってやっとわかった。応援したくて、力になりたくて、でもどうしていいのかわからなかったんだな。全く同じ感情ではなくても、自分をどこかで重ね合わせてくれたんだな。少なくとも私を否定せず、力づけようとしてくれたんだな。
 

それを素直に受け取れなかったのは、私があまりにも疲れすぎていて、拗ねてひねくれていたからであって、その人たちは何にも悪くなかったんだなぁと今になって思った。でも、かつての私のように、がんばれって言われてもこれ以上どう頑張ればいいのかわからない、「わかる」より「わかってあげられなくてごめん」って言われた方が安心する人もいるかもしれないから、今でも慎重にはなるけれど。
 

「前向きにならないとダメだよ」の「前」というのは、もしかしたら未来のことだったのかもしれないということにもようやく思い当たった。そうか、時間が一直線に過去から未来へと流れているとすれば、「前向き」というのは「未来向き」ってことか。苦しくて下しか見てなかったからわからなかったな。
 

下しか見られなくなった人には、前を向けという言葉はつらいかもしれない。けれどももし、そっと横に立てたなら、横にいる私を見るために少しだけ顔を上げてくれるかもしれない。そしたら視界の隅で、前の方に少しだけ見える光に気づくかもしれない。
 

もし、私にまた悩みを相談してくれる人がいたら「わかるよ」と、優しく横に立てたらいいなぁ。あの頃、そうしようとしてくれた人がいた私は、しあわせだったなぁ。「わかる」と言ってくれて、ありがとう。全く同じ空模様は二度とないからこそ、空は綺麗だなぁと思った。
 
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2018-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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