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苦痛と快のマーケティング「ニンニクは入れますか?」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:あかばね 笑助(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「あぁ食べ過ぎた。気持ち悪い」
 
都内北区にある、お気に入りのガッツリ系ラーメンを食べた後は、いつもこうだ。
でも、不思議に食べ過ぎた気持ち悪さが治まると、食べたい気持ちがムクムクと沸き起こる。
次、いつ来ようかともう考えている。
当たり前だが、非常にこの店のラーメンは旨い。
もし最後の晩餐があるなら、間違いなく、この店のラーメンを選ぶ。
私がイエス・キリストならダ・ヴィンチの絵画の中央には、富士山のように野菜が盛られた、この店のラーメンが描かれているはずだ。
そのくらい好きなのである。
でも、ふと考えた。
 
旨いだけでここまで好きになるか?
ひょっとして私は、あのラーメン店主の販売戦略にまんまと乗せられているのではなかろうか? 
 
店主は「私、ただ一所懸命にラーメンを作っているだけです」的な顔をして、裏では客の気持ちをコントロールしようと必死に計算しているのではなかろうか?
次に行った時、観察してみよう!
世の中の商売の大切なポイントが見えてくるかもしれないと私は思い立った。
 
 
 
いつもの景色だが行列が出来ている。
二十年通って、すんなり入店できたのは2、3回しかない。
毎度のことながら一時間以上待たされる。
苦痛である。
そして店内は狭く、12人くらいしか入店できない。
食べ終わった客と、これからの客が、店員の誘導で徐々に入れ替わるシステム。
行列の先頭を確認すると、なかなか興味深い「客の行動」が見られる。
他のラーメン店でも見られるが、この店は顕著なのである。
 
店内を何度もチラ見する客。
ポケットに手を突っ込みながら、体を小刻みに震わせる客。
突然、缶コーヒーを買いガブ飲みする客。
 
要するに「イライラ」している。
何故なら店のすぐ前なので強烈にこのラーメン特有のにおいがするから。
においの説明は困難だ。
このラーメンはトンコツ系でもなく、味噌、醤油、辛い系でもない。
あえて言うなら「豚の旨味と野菜の旨味」系ラーメンかもしれない。
もう少しで入店の位置が、最高にイライラして苦痛だ。
 
 
順番がきて入店する。
「いらっしゃいー!」
店主は言いながら客をじーっと見ている。
あまりにも見るから、見返そうかなと思ったが、店主と見つめ合う、その空気感に耐えられそうもないので中止。
食券を買う。
食券の種類は「ラーメン」と「豚入りラーメン」、有料トッピング、ビール・ウーロン茶と少な目だ。
私はいつも「ラーメン」と「別皿アブラ」「生卵」「野菜」の食券を購入。
店員に誘導され、一人ならカウンター席に案内される。
座ったら食券を店員に渡し、待つのみ。
店主を観察すると、入店時の客を記憶のフォルダーに収めるように集中して見ている。
そして出来上がりが近くなると店主に聞かれる。
 
「ニンニクは入れますか?」
 
これは「無料トッピングあるけど、入れますか?」の意味。
私はいつも「ニンニクで!」と答える。
 
 
ラーメンがカウンターに着丼。
ラーメンのドンブリの淵に表面張力でギリギリ保っているスープ。
それをこぼさないでカウンターから下ろすのは無理なので、私は予めオシボリを敷き、その上にラーメンを置く。
圧倒的に旨そうなにおい。
食べるのは、麺の上の野菜から。
野菜はラーメンのスープで煮込まれて、クタクタになって味もしみている。
そこに別皿アブラを乗せ、食べていく。
別皿アブラとは、煮豚を作った際に出る肉や脂肪のカス肉のことなのだが、これが煮汁がしみていて旨い。
この野菜とアブラをご飯の上に乗せて食べたら至福だろうと思うが、麺が食べられなくなるので無理だ。
ある程度、野菜を処理した後、麺を食べるのだが、かなり太めの国産小麦の自家製手打ち麺。
一日麺を熟成させてから客に出すそうなので、小麦の風味が強いのも納得。
そのゴワゴワした食感の麺に戦いを挑むつもりでかぶりつく。
 
そう、そのくらいの意気込みがないと完食できないのだ。
入店時の店主の視線の意味は「この客を腹いっぱいにする麺の量はどの位だろう?」だと思う。毎回、ギリギリの完食。食べ終わった直後は、食べ過ぎて気持ち悪いのだ。
いつも苦しい。
 
並ぶのは苦痛だし、旨いとは言えギリギリの完食は腹が苦しい。
ただ胃が落ち着いた後に感じるのは、旨かったという記憶と完食できた達成感である。
もう満足の「心地よさ、快」しか感じていない。
ここに商売のポイントがあるような気がした。
 
軽い苦痛をもたらす目標、状況を顧客に持たせる→顧客に達成させる=顧客は満足を感じ、その店のファンになる。
 
この流れにそって、この店は経営してるように感じる。
知ってか知らずか、私にはわからない。
ただ一つ言えることは、また週末に私は並んでいるということ。
苦痛と快を求めて。

 
 
***

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2018-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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