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夫が、頼まれたことを全然やらない本当の理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:戸田奏(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「アンタさ、私がこれお願いしたの、どれくらい前やったか覚えてる?」
 
「……ゴメン」
 
 
夜10時。
ようやく娘が寝静まったあと、私と夫はダイニングテーブルに向かい合って座っていた。
私は、頭から湯気を出さんばかりに怒りながら。
対する夫は、本当に大汗をかいてしょぼくれながら。
 
体重90キロの巨体が、ちんまりと肩をすぼめて下を向いている。
まるで太ったアルマジロだ。
 
 
いつも娘が寝たあとに、私と夫は「大人のごほうび」と称して、お酒や、娘に見つからないよう隠していたお菓子を持ち寄り愉しんでいるのだが、
今日のダイニングテーブルには、マグカップ一つ置いていない。
 
 
「世帯主からの連絡じゃないとダメって言われたから、ゴメンやけど電話してねって言ったやん?
 電話した? って聞くたび、明日やるわって、生返事ばっかりで……。
 結局、一カ月以上経ってしもたやんか!」
 
 
私の怒りが過ぎ去るのを待っているのだろう、夫はアルマジロのポーズを取ったまま、また「……ゴメン」と言い、じっと下を見たまま動かなくなってしまった。
 
 
そう、夫は頼まれたことを全然やらないのだ。
しかも、理由もはっきり言わない。ただひたすら「……ゴメン」とつぶやくだけなのだ。その態度にも腹が立つ。
結婚して何年も経つが、私達夫婦は、しょっちゅう同じような内容のケンカを繰り返している。
 
私に責められた後の数週間は、一生懸命やってくれるようになるものの、またすぐに元に戻って、やらなくなってしまう。
 
何回同じ内容のケンカしているんだろう……。私はもう疲れてしまっていた。
夫にどうしたら変わってもらえるのだろう。せめて理由をもっと具体的に知りたいのに、いつも黙ってばかり。
 
 
私は、ふと思いついたことを言ってみた。
 
 
「なあ、なんでいつもやってくれへんのか、メールで理由書いて送ってくれへん?」
 
 
私は夫に言った。
夫はもともとあまり喋らない。例えば、夫から喋りかけてくる言葉は、大体「おはよう」「行ってきます」「ただいま」「お風呂入るね」「おやすみ」で、一緒にいるときは、ほぼ私が喋っていて、夫は「へえ~」とか「そうなんや」と言うだけだ。
夫のように、話すことが上手くない人に対しては、メールの方が、相手に言いやすいこともあるかも知れない。
 
 
「……わかった」
 
夫は、まだ下を向いたままだったが、返事をした。
 
 
 
数日後、約束通り夫からメールが来た。
普段の夫からは、ひっくり返しても出てこないような、長い長いメールだった。
 
メールには、主に次のように書かれていた。
 
 
 
まず、大前提として分かって欲しいのは、自分はやるのを忘れた訳でもなければ、やらないつもりだった訳でもない。「まだやっていない」だけである、ということ。
 
理由は、
・いつまでに、という期日がなかったので、急ぎではないと判断した。
・電話した? と聞かれた時も、いつまでに、と言ってこなかったから、まだ急ぎではないと判断した。
・仕事(夫はこれでも営業マン)をしている人間に、日中電話をしろというのは非常に無理があり、仕事か電話かと言われれば、仕事を優先させるべきだと思ったので電話は後回しになった。
・期日のない用事を、まだやっていないからと言って責められるのはおかしいと思う。
・ならば初めから断れと言われそうだが、断るつもりはない。なぜなら「できることならやりたい」と思っているからだ。
 
 
 
 
もちろん、「え? なんでそうなるの?」と、ツッコミを入れたい部分もある。
でも、頑張って作ったのであろう長文のメールを見て、夫に感謝のメールをしながら、私は少しだけ、目からウロコが落ちたような気持ちになった。
 
 
夫の感覚では、私の言い方にも問題があったのだ。
 
確かに、急ぎの用事ではなかったので、期日なんかはない。
ただ私の中では、「お願いしたことは、すぐやってくれるはずだ」という思い込みがあった。
 
対して、夫の中では、「期日がないことは、いつやってもいい」という思い込みがあり、仕事やほかの優先すべきことに埋もれていき、結果的に一カ月以上放置することになったのだ。
 
 
この文章をもらうまで、私は夫の言うような「期日」の感覚など、仕事の中でしか使わない感覚だった。まさか夫が、家族の間でこの意識を持っているなど、思いつきもしなかった。
 
夫も、後日話を聞いたところ、私の考えを聞いてびっくりしていた。
逆に「じゃあどうやって、やるべきことの優先順位を決めてるの?」と聞かれてしまった。
 
 
今回、メールで伝えてもらうようにしたことで、「夫がお願いしたことを全然やらない」のではなく、「やろうと思っているが、後回しにしているだけ」だということが分かった。
夫婦とは、たとえ何十年一緒にいて、お互いのことを分かっているように思えても、こういうズレが起こるのだ。
もと他人だが、死ぬまで一緒にいる家族。理解する努力もしていかなければならないのだ。
 
 
それ以降、お願いしたいことがあれば必ず、いつまでにやってほしいか伝えるようにした。さらに、仕事を優先すること、無理なら無理と言うこと、も付け加えた。
すると、今までの夫とは別人のように、お願いしたことをきっちりやってくれるようになった。
 
伝え方一つで、こんなに変わる。
こんなことなら、言葉で責め立てたりしないで、早く理由を聞けばよかったと心から思った。
 
 
そして先日、「大人のごほうび」時間に、ふと思って聞いてみた。
 
「ていうかさ、あんなに考えてることがあるのに、なんでいつも言い返さなかったん?」
 
その返事は
「……怒ってるときのお前、ホンマにめんどくさいから」
だった。
 
私は、ポテトチップスを一口齧って、言った。
「ふ~ん……。じゃあ、どこがめんどくさいのか、メールで理由書いて送ってくれへん?」
 
夫がまた、アルマジロになった。
さて、次はどんなメールが来るのだろうか。とても楽しみだ。

***

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2018-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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