メディアグランプリ

恋人とすれ違いつづけた僕が、アマゾンから教わったこと。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

http://tenro-in.com/zemi/62637
 
記事:西田博明(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「ごめんね! お客さんからクレームがあって……」
無理やり時間を作った、3週間ぶりのデートなのに
何の連絡もなく、遅れてきた彼女。
 
イライラしながら待っていた僕は、
「仕方ないよね。お店、予約の時間もきてるから、早くいこう!」
なんて彼女の手を取る。
 
でも、自分の笑顔が、ちょっとひきつってるのが、自分でもわかる。
 
そして、ディナーはなんだか、気まずいまま。
 
ほんとにコミュニケーションが上手な人なら、
おちゃめに怒ってみせたりとか、
素直に、「さみしかった」と伝たりとかして、
あとは笑顔で過ごすんだろうな……
 
 
コミュニケーションが難しい。
 
家族にムカついたとき、
仕事仲間と、もめたとき、
恋人と、すれちがったとき。
 
 
そんな時、なんていっていいのか、わからなくなる。
 
わかってもらおうと、何とか伝えようと、
頑張れば頑張るほど、カラまわり。
 
子どものころから、
「西田は何を言いたいんだかわかんない」
とよくいわれてた。
 
 
小学生の先生は、保護者面談で、
「西田クンは、人の気持ちもわからないし集団行動もとれないし、
特殊学級に入れたほうがいいのではないでしょうか」
と、僕の母にいったらしい。
 
 
何とかしようと、いろんな本をよんで、
いろんなセミナーに行って、いっぱい勉強した。
でもやっぱり、大切な場面では、うまくいかない。
 
大切な人ほど、カラ回り。
相手の、冷たい反応がイメージできちゃって、
余計にいえなくなる。
 
 
 
そんなとき、ヒントをくれたのが、
ネットの本屋さん、アマゾン.comだった。
 
 
アマゾンは親切だ。
山登りをはじめたいなと思って、
アマゾンで、「山登り」を検索する。
 
そうすると、
「初めての山登り」みたいな初心者むけの本から、
「都内からすぐ行けるステキな山」みたいな、雑誌、
そして、「登山者の生理学」みたいな、やたらマニアックな本まで、
ぜんぶ画面に、ならべてくれる。
 
 
本だけじゃなくて、
登山靴や、トレッキングウエアーの3点セット、
小さく折りたためる帽子まで‥‥‥
 
 
関係しそうなものは、ぜんぶ、画面にならべてくれる。
 
そのうえ、
おすすめ商品に印をつけたり、
それぞれのグッズの価格と機能を表にしてみせてくれたり。
 
おかげでこっちは、
いろいろ興味がでてきて、
最初に探してたもの以外も、買いこんじゃったりする。
 
 
色々ならべてくれるからこそ、
こっちも快適に、買い物できる。
新しいなにかが、みえてくる。
 
 
そっか、と思った。
 
 
僕は、いきなり商品を買おうとしてたから、
うまくいかなかったんだ。
 
 
コミュニケーションの先生は、
「相手にもわかりやすく伝えましょう」
なんていうけれど、
 
 
自分の気持ちが、一言になることなんて、ほとんどない。
 
 
たとえば、彼女がデートに遅刻したとして。
 
 
やっぱり会えて、うれしい自分もいる。
どれだけイライラしながら待ってたか、知ってほしい自分もいる。
僕のことは大切じゃないのかなって、不安でいる自分もいる。
「せめて連絡くれたら、本屋さんで時間つぶしたのに!」って思ってる自分もいる。
そんなこと気にせず、水に流して一緒に楽しみたい自分もいる。
 
 
いろんな自分がいる。
そんな自分をめんどくさいと思ってる自分もいる。
 
大切な人と何かが起きたとき、
たった1つの、シンプルな気持ちでいることなんて、
ほとんどない。
 
むしろ、いろんな気持ちが入り乱れてる。
 
 
 
そんな時に、教科書に書いてある通り、
わかりやすい一言で伝えるなんて、やっぱ無理。
 
 
むしろ、今あるラインナップを全部、
伝えてしまえばいいんじゃないか?
 
「こんな自分も、こんな自分も、こんな自分もいる。
 それにこう思ったりもしてる」って、
 行ってしまえばいいんじゃないか?
 
 
 
って、複雑な気持ちは、複雑なままに、
全部言っちゃえばいい。
 
 
そう思って、遅刻してきた彼女に、
今度はこう言ってみた。
 
 
「忙しい中来てくれて、会えてうれしいよ。
 でも、ずっとやきもきしながら待ってたから、
 ちょっとイライラしてる。
 連絡もくれないなんてって、
ちょっとスネた気持ちにもなってる。
 ほんとは水に流して、一緒に楽しみたいけど、
 なんだか今は素直に笑えない。
 自分でもめんどくさいやつだなぁって思うんだけど……」
 
 
そしたら彼女は、
「そだよね、ごめんね。連絡したらよかったよね。
 もう目の前にお客さんがいて、携帯さわれなかったんだ。
 ほんとにごめんね!
 今日の飲み物おごるから、許して!」
 
なんて、手をあわせ、僕をおがむしぐさ。
 
「仕方ないなぁ~」なんていいつつ、
こっちの気持ちも、すっきりしてる。
 
 
こいつ、ちょっとかわいいじゃん……
 
 
一緒に歩く彼女は、
彼女は、なぜか僕を見ながら、ニヤニヤしてる。
 
 
複雑な気持ちは、きれいな文章にしなくていい。
だって、複雑なんだもん。
 
 
たった1人の、わかりやすい自分でいなくていい。
自分の中に、いろんな自分がいていい。
 
 
「当店には、現在これだけのラインナップがあります」
って、関係のある自分の気持ちや考えを、
全部、画面の中に並べてみる。
 
 
できればアマゾンが、
「ようこそ!」ではじまって
「ありがとうございます!」で終わるように、
 
ポジティブな気持ちから始めて、
ポジティブな気持ちでしめくくれたらもっと素敵。
 
そうすることで、
いつもとちがう、展開が待っている。
 
 
困ったときは、深呼吸。
少しだけ、自分の中のラインナップをみてみる。
なんだったら「ちょっと待って」、っていって、
ほんの少し時間をもらってもいい。
 
そして、ラインナップを全部、伝えてみる。
 
あなたが、いろんな自分を見せたとき、
いろんな表情を見せたとき、
 
あなたの大切な人も、
今まで知らなかった表情をみせてくれる。
 
 
 
……ようこそ!
今日は一緒に、どんな買い物を、しましょうか?
 
 
***

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2018-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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