メディアグランプリ

さらば中央線。青春時代の終わりと飲みニケーション


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ゆうすけ(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
「あ、もしもし? 今、仕事終わった。今日はどう?」
「いいねえ! いつもの場所? 了解」
 
今から10数年前。ほぼ毎日のように仕事帰りにJR中央線沿線に住む友人たちと飲み歩いていた。集合場所はだいたい西荻窪のやきとり屋「戎」と決まっていた。当時、最高にエキサイティングな遊び。それが毎夜繰り返される飲み会。気の置けない仲間たちとの語らい。仕事の話、恋愛の話、音楽の話、小説の話、話題が尽きることはない。そして、酔狂。
 
2004年から8年間、30代のほぼすべて、吉祥寺に住んでいた。
中央線沿線には名高い老舗の飲み屋が点在している。吉祥寺の「いせや」、高円寺の「大将」、西荻窪の「戎」しかり。昼間から立ち飲みする人たちであふれかえり、平日は学生やサラリーマン、週末はカップルや親子連れでにぎわう。その香ばしい炭火の煙と威勢の良い掛け声につられ、まるで蛍光灯に虫があつまるように、その活気に吸い寄せられていく。
 
22時を回ったころ、沿線に住むマイフレンドたちが、段々と集まってくる。
そのほとんどが大学時代の音楽サークルの仲間だ。二十歳そこそこの子供が、社会にでて挫折を繰り返しながらなんとか大人になり、仕事帰りに気軽に飲みにいける気持ちの余裕とお金が出来きてきた頃、それが私の30代の始まりだった。
皆、同じような境遇だったように思う。それぞれ業界は違うが、社会に認められたくて、成果を出したくて、ある時は嫌々でも、より良く生きるために精一杯働いていた。それほど優しくない、どちらかと言うとキツイ毎日の繰り返しで、つかの間の現実逃避と明日への活力を得ようと集まっている。大学のサークル仲間なんて、肩肘張らずにくつろげる代名詞みたいなものだ。馬鹿馬鹿しい話にゲラゲラ笑いながら夜は更けていった。
 
そんなこんなで、毎度終電を逃す。午前1時を回ったころ、お開き。タクシーで1~2メーター位の距離に帰っていく。翌朝、ボーっとする頭を抱えながら、満員電車に揺られて仕事へ出かける。そんなことを週3~4日くらい。今から思えば、まあよく飲み歩いていた。無邪気で平和な時間。そして体力もあった。今ではもうそんなことはできない。思いっきり二日酔いだ。考えただけでも気持ちが悪い。
 
ある時こんなことがあった。今でも強烈に覚えているシーンだ。
 
「あのさ、ホリエモンって凄くない?」
「そうかね、俺あんまり好きじゃないけど」
「いやだってさ、年1コしか変わんないんだよ? 俺たち毎晩飲んでていいのかね~」
「……」
 
丁度、ライブドアが近鉄バッファローズの買収に名乗りを上げてた頃だ。テレビには、球場でメガホンを振っている1歳年上のホリエモンの姿が映し出されていた。当時、ヒルズ族などという言葉も流行り、一部の成功者たちが持てはやされていた。
同世代のビジネスマンが世間を驚かせている姿と、やきとり屋のカウンターで杯を傾けている自分との姿にギャップを感じ、どこか歯がゆかったのだろう。軽い冗談で放った私の一言は空を切り、話題はすぐに変わった。そして、恋愛や音楽や本や、いま一番話したい話の続きに戻っていく。でも、あの瞬間、みんなはどう思ってたんだろう?
 
そうした時間が2~3年は続いただろうか。しかし、終わりは確実にやってくる。
ひとりふたりと、段々と中央線沿線から離れていく。転勤したり、結婚したり、生活が変わったり。いつまでも無邪気に飲み歩いてばかりもいられないのだ。ステージが変わり興味の対象が移っていったのだと思う。自然と足を運ばなくなっていった。
そして2012年、私も結婚を機に吉祥寺を離れた。以来、仕事終わりにサークル仲間に電話をかけることは無くなった。
 
今から思う、あれが青春時代の終わりだったのだと。
人生には一見無駄な、でも、かけがえのない時間がある。
私にとってそれは、西荻窪で飲み明かした日々だった。
あの時を思う存分に楽しんだからこそ、今を精一杯生きようと思える。
 
近ごろは若者の酒場離れが進んでいると言われるが、実際どうなんだろうか?
毎晩飲みにいくことを奨励するつもりはないけれど、気の置けない仲間たちと飲み語らうことほど、インプット/アウトプットできる場面もそうそう無いと思う。
仲間との語らいを通して、会話力やコミュニケーション力も磨かれる。時に誰かの優しさが身に染みる。お酒を交わすことではじめて気づく人情の機微にもたくさん触れることが出来る。そして、酒場の活気が明日を生きる原動力にもなるのだ。
 
これはごく平凡な、とある中年男の思い出エピソードだが、もしあなたが今の生活に窮屈さを感じているのなら、気の合う仲間を誘ってとりあえず飲みに出かけることをおススメします。きっと相手も喜んでくれるはず。酒場は身近な、非日常。たまには思いっきり語り合ってハメを外しても良いのではありませんか。何か新しいステージが始まるかもしれませんよ。
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2018-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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