メディアグランプリ

お悩み相談ホイホイ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:落合健太(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
ある時は、
「こないだ退職届を出したんですけど受け取ってもらえなくて……」
またある時は、
「こんな個人的な話、誰にも相談できなくて、ちょっと聞いてもらってもいいですか?」
などなど、私の周りには日々悩みごとが集まってくる。
 
私は経営コンサルタントという仕事をしている。顧客である経営者や、組織の従業員のお悩みを解決することが仕事だ。
また、自分の所属する会社では、管理職という役割を担っている。大きな売り上げで会社に貢献したり、10年後まで通用するような新商品開発など、管理職の役割も色々あると思う。色々な役割の中で私が大切にしているのが、周りの社員が機嫌よく働いてくれる環境を整えることだ。そうすると、社員からのお悩み相談が増えてくる。
結果、社内でも社外でも、色々な人から寄せられる悩み事に埋もれていることになる。もはや悩み事は日常生活の一部であり、切っても切れない関係である。
そして、そんな生活はかれこれ13年目を迎えている。
 
自分の日常をこのように紹介すると、ほめられたり、あきれられたり様々な反応をいただく。なかでも一番多いのが、よく嫌な顔せず続けられるなという驚きの反応だ。
 
偉そうにこんな自己紹介をしながら、お恥ずかしい話だが、数年前までは悩み事を聞くのが苦痛だったことがある。日々寄せられる悩み事に対して断りたいと思っていた。困っていそうな人を見ても、他の相談で手一杯だからと、見て見ぬ振りをしたこともある。
 
その頃はと言うと、寄せられる悩み事に対して、今よりももっとバカ正直に向き合っていた。「相談されたからには、必ず自分が解決策を伝えなければ」
「相談してくれる人は弱っているから、否定しちゃだめなんだ」
「最悪、本人が解決できないときは、自分が代わりにでも解決してあげなきゃ」
あれやこれやと自分に言い聞かせて、相談者はもっと辛いんだからと自分を奮い立たせて、悩み事に向き合っていた。
今でも思い出すたびに、小さな世界で一生懸命だった自分が可愛くて笑ってしまう。
本当に真剣だったなと思う。
「他人の悩み事」に。
 
今でこそ分かるのだが、そんな一生懸命だった頃は、悩み事の相談を受けるたびに、「私の悩み事」が増えていった。私はただ相談を持ちかけられただけなのに。私自身を振返れば何一つ困っていることなど無いのに。
 
数年前まで苦痛だった、と書いたが、私の感覚ががらりと変わる瞬間があった。
とあるセミナーで「結局、健太君は他人の悩み事が大好きなんだよね」と、とても明るい笑顔で伝えられたのだ。
 
いやまさか。
そんなはずないって。
などなど、自分の中では否定する言葉が渦巻いた。しかし丁寧にこんがらがったひもを一本一本ほどいてもらうと納得してしまったのだ。
 
当時の私は、自分には価値がないと思いこんでいた。
そんな私は誰かから相談を受けると、全力でそれに応えていた。自分の価値をアピールする絶好の機会だ。これを逃す手は無い。
受け取った悩み事に対して、私が相談者の立場ならどうするか、私は第三者の立場で何をすれば解決できるか。誰よりもそのお悩みについて頭を働かせていた。それは「他人の悩み事」であるにも関わらず。
つまり何をしていたかといえば、私は「相談者の悩み事」を奪っていたのだ。
 
しかし、落ち着いて考えればすぐわかる。これはお悩み相談ではない。
とても小さな自己実現をしていたのだ。お悩み解決というアクセサリーを身にまとっていたのだ。決して相談者のためではない。価値のない自分を、少しでもマシなものに見せるためだ。
 
当時の自分を思い出すとなんだかとても恥ずかしくなる。
真剣に悩み事を抱えて、声をかけてくれた人を見て「しめしめ、ぐっふっふ」とでもほくそ笑んでいたに違いない。あの頃に戻れるなら、ハリセンで自分の後頭部に一撃くれてやりたいくらいだ。
 
そのセミナーを聞いてからは、「他人の悩み事」との付き合い方が変わった。
今ではもう、「他人の悩み事」を解決したいとは思わない。最終的に解決するのは本人なんだから好きにすれば、とすら思うようになった。
 
「他人の悩み事」を利用して自分を着飾りたいとは思わない。他人が解決しないままでいることに寄り添えるようになったと思う。
その感覚を持ち始めてから、自分に寄せられる相談事の種類が変わってきた気がする。
 
これまでのように、何でもかんでも寄せられるのではなく、自分と一緒に考えることで少し新しい、楽しい世界が見えるような相談だ。
 
自分をマシに見せるためではなく、相談者と一緒に新しい世界をのぞいてみたい。
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2018-10-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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