メディアグランプリ

変わり者は、人生のドアマン


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記事:嶽キヨミ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「あーここ、間違ってる。もいっかいほどいて縫いなおして」
 
ファッションデザイナーになることが夢だったわたしのはじめての服作りは、中学の家庭科の教室から始まった。
 
作っているのは、完全に流行遅れのデザインのパジャマ。
 
ちょっとでもかわいくしようとピンクのギンガムチェックの生地を選んでみたけれど、全くモチベーションがあがらない。
 
やる気が出ないと、必然的に間違いも増える。
 
そこで、
 
「あーここ、間違ってる。もいっかいほどいて縫いなおして」だ。
 
担任でもあった家庭科の先生は、仕事も家事も完璧にこなす ”デキるお母さん” という感じの人だった。
 

縫ってはほどいて縫ってはほどいて……の作業ほど、縫いものを嫌いにさせるということを、彼女は知っていたのだろうか。
 
ぜんぜんお気に入りじゃないパジャマをなんとか仕上げたと同時に、このとき私の心には「縫いものなんて嫌いー、ミシンは苦手ー!」という観念がしっかり植え付けられてしまったのだった。
 
縫い物が嫌いなままデザイナーになることなんて出来るのか?
 
そんな心配を吹き飛ばしてくれたのは、次に出会う、高校での家庭科の先生だった。
 
彼女はある日、前任の先生が産休のために臨時講師として私の通う高校にやってきた。
 
白衣を着た彼女は、家庭科、というよりも、どちらかというと理科の先生のような雰囲気だ。
 
高校での最初のソーイングの実習はスカートである。
またしてもダサーいデザインのスカートにモチベーションゼロ。
 
ただ、そんな私の耳に、今でも忘れられない衝撃的な言葉が飛び込んできた。
 
「みんな、間違えてもほどかないで! そのまんま私のところに持ってきてくださいねー。なんとかしますから」
 
「は?!」
 
「え?!」
 
「どういう意味???」
 
たぶん、多くの女子がそう思ったに違いない。
 
彼女曰く「縫い物は、解くから嫌いになるんです。丈を間違えたら短いスカートにしたらいいし、間違えたところはそのままアレンジして完成すればOK!」
 
正直、目からウロコだった。
 
「だよね、だよね、そうだよね!」
 
またしても縫い間違えたスカートを、そのまま先生のところに持っていき、ほどかずデザインを変更してそのまま完成させたのだった。
先生のその言葉に、激しく共感した私は、その日から突然、縫い物が楽しくなったのだった。
 
この先生は、客観的に見ると、きっと「変わり者」の先生だったんだろうと思う。
 
ほかの授業では、高校生のわたしたちに向かって
 
「わたし、この本(たしか『危ない化粧品』という本だった)を読んで、メイクやめたんです。なので、もしメイク道具欲しい人あげますので言ってください」と、授業中に口紅やらファンデーションやらを広げて見せてくれたりもした。
 
「それ、おかしいよね? 危ないから自分はやめたのに、生徒にあげる???」と、心の中で突っ込みを入れながら、なんだかそんなことを平然な顔をして言うこの先生がなんだか好きになっていた。
 
わたしは、このちょっと変わり者の先生のおかげで、いつのまにか縫い物が好きになっていた。
 
それだけではない、創作にとって本当に大切な「自由」の観念も教わったのだった。
 
わたしは、今思えば、ちょっと変わり者の先生とよく出会う。
 
担任もまたちょっと変わった先生だった。
 
わたしはその頃ロックバンドをやっていて、学校よりも音楽で頭のことがいっぱいだった学生だった。
 
そんなある日、ライブハウスに出演するため「具合が悪いから早退します」などと適当な理由を担任に告げると、「今日、ライブでしょ。頑張って!」などと言って黙って早退させてくれたりするような先生だった。
わたしは、この先生のおかげで、無意味に反抗的な生徒になることなく、自由に音楽活動にいそしむことが出来たのだった。
 
「変わり者」それは、人生の「ドアマン」だ。
 
誰かをちょっと楽にしたり、自由にできる才能を使って、誰かの人生の次のステップへとドアをそっとあける人なのだ。
 
わたしは、そんな人に出会う確率がものすごく高いように思う。
 
もしもそれに意味があるとしたら、その理由は一つ。
きっと私自身もまた、誰かのドアマンになるべきだ、ということなのだろう。
 
おそらく、だれしもがそうなのかもしれない。
 
自分の変な部分、ちょっと変わったとろは、意外と誰かの道を開くきっかけになるかもしれないのだ。
 
そう思うと、変わった恩師たちのおかげで、ちょっとくらいおかしな自分でも、もっと自由に愛せる、そんな気がしているわたしです。
 
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2018-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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