メディアグランプリ

ライティングゼミを受講する一要因となった川口浩探検隊


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【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田尚良(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「遂に隊長が重い腰を上げ、ボンネットを開けたその時であった!」
「その時! 我々の目に何かが飛び込んできた!」
「これによって我々は、更なる事態に巻き込まれるのであった!」
「ついに緊張の糸が切れた!」
「この探検は失敗に終わってしまうのか!」
 これらは今から30年から40年ほど前にテレビ朝日系列でゴールデンタイムに放送されていた「水曜スペシャル、川口浩探検隊シリーズ」のナレーションのフレーズである。
若い人は知らないかもしれないが、もうすでに亡くなっている川口浩さんという俳優が南半球のジャングルや秘境に探検隊を連れてUMA(未確認生物)を探し求めるという視聴率も高く、ものすごい人気番組で家族で食い入るようにテレビを見ていたことを憶えている。
結局のところ、「やらせ」が多かったこと判明して、8年ほどで中止になってしまったのだが、音楽も「ロッキーのテーマ」を使って盛り上げたりして「エンタメ要素」をかなり盛り込んだ構成で番組が作られていた。
探検することはもちろんのこと、この音楽とナレーションの効果は絶大なものがあったと思う。
 
 話は変わって私が中学一年の秋ごろだったと思うが、体育祭が終わった頃、その体育祭の作文を書けという課題が与えられた。
とりあえずクラスメート全員に原稿用紙が数枚配布され放課後を向かえた。
「さあこれから部活だ」と準備を始めた時、小学校時代からの遊び友達のMが私に声をかけてきた。
「なあ、この作文で面白いことやれへんか?」
「何? 面白いことって」
私は「こいつ、また変なこと思いついたな」と思いながら、そう返答した。
「あのな、作文の中に水曜スペシャルの言葉入れてやるんや」
「水曜スペシャル? 探検隊か?」
「そうや、あの緊張の糸が切れたとか、ああいう言葉で作文書くんや」
「うーん、まあ面白くない作文の宿題やし、その方がちょっと楽しめるかな」と思った私は快く承諾した。
  
 作文を書き始めた私は、ふんだんにナレーション言葉を作文に盛り込み、さらにその当時「タイガーマスク」で盛り上がっていた「新日本プロレス」の古舘伊知郎氏の実況中継の言葉まで盛り込んだ。
そして「水曜スペシャルナレーション+プロレス実況中継」の体育祭作文が完成した。
 
提出前にお互いの作文を見せ合いっこしたが旧友Mの作文はただのパクリ作文でしかも短く作文にはなっていなかった。
「なんじゃ、これは」と思いながらも私はケチはつけなかったがそのまま二人で提出することにした。
 
数日後、私はクラスの担任に授業後「ちょっと、職員室にこい!」と言われた。
「職員室に呼ばれる時はろくなことがない」と思いながらしぶしぶ私は職員室にいくことになった。
担任の先生は「この作文な、ちょっとこことここを書き直せ、この表現はこう変えるように」と言った。
私はこれが何を意味しているのかさっぱりわからず「はあ、そうですか」というふうに「作文のことで怒られているのかな」と解釈し素直に文を訂正していった。
意味がわからずそのまま訂正した後、担任の先生は「よし! これでいい、これ全校集会で朗読発表な」
「えっ」
私は驚いた。
「ということはこの作文評価されたということか」
職員室に呼ばれた時は叱られると思っていたのが作文が評価されていることがわかってなんともいえない気持ちになったことをよく憶えている。
「ナレーション風の作文を書くと評価されるのね」という率直な感想を持った。もちろん旧友Mの文では論外だろうが。
 
 こうして全校集会を向かえた私は緊張しながら檀上に登り、マイクで全校生徒の前で「例の作文」を読むこととなったのである。
全校生徒の前で作文を朗読することは他の優等生の例でもあったし特別なことではないのだが、当時中学一年生の私にとっては上級生である中学二年生や三年生はとても大人に見えた。
自分が他の生徒の作文発表を聞いている時は退屈でしかなかったので上級生の前で発表するのはなんかただの「生意気なやつ」にならないか不安でもあった。
そうしてたかが体育祭なのにナレーション風作文の朗読が始まった。
「緊張の糸が切れた!」
「その時であった!」
私流ナレーション節が朗読で炸裂した。
「どっ!」なんと読んでいる最中に笑いが起きているではないか。
「やった! うけてるで」
おそらく芸人が笑いを取ったのと同じ充実感が朗読しながら込み上げてくる。
「いままで、こんな生徒みたことないぞ」
とこの時私は変な達成感に満ちたことを忘れない。
多感な時期である中学生時代のこの経験は私にとって自信になったできことであった。
もう半世紀近く生きている私がライティングゼミにて文章を書いてみようなどとは、この経験がなければなかっただろうと思う。
もちろん自分の書く文章が最上のものなんて露ほども思ってはいない、でもこの中学時代の経験が自分の中の自信を形成していることは間違いないのだ。
ライティングゼミでは文章を書く上での「エンタメ的要素の大切さ」をさらに学ぶことになった。
これがこの先どう生きてくるかは未知数だが、また何かの機会にこれが新芽の蕾のように顔を出すことがあるかもしれない。

 
 
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2018-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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