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数学教師は日本語教師


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記事:嶽キヨミ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「はーい、注目♪」
これが、わたしの高校時代の担任であり数学の先生の口癖だった。
 
この言葉が出た後の先生は、なぜだか胸をはり、微笑みながら、それでいてどこか芝居じみた感じでピシッと立っている。
 
その様子があまりに不思議で面白く、この言葉が出ると、つい先生に注目してしまうのだ。
 
この変わった元高校数学教師。
 
70才になる彼は、現在 タイで日本語教師をしている。
 
「は?????」
 
「なにそれ????」
 
「えーーー意味わからないーーーー!」
 
「あははははーーでもやっぱりなんかわかる気がするかもー」
 
その事実を知ったときの私の感想だ。
 
高校時代、私は数学が大の苦手科目。
 
全くやる気も興味もなかったため、いつも追試組で、全く授業の内容も覚えてない。
 
そんな私にさえ、はっきりと口癖を覚えられているなんて、まったくこの先生、ある意味 あなどれない。
 
そんなぶっとんだ先生の人生を知ったのは、数年前の「学年大同窓会」のお知らせがきっかけだった。
 
高校は好きだったが、卒業後は同窓会に出席することもないまま、いつしか東京に拠点を移したため、同窓生とも音信不通の人生を歩んで20年以上たっていた。
 
そんなある日、初めて学年全体での大同窓会をする企画が持ち上がり、有志たちが、散り散りになっている同窓生とのつながりを少しずつ埋めてくれたのだった。
 
その糸の端と端に、この先生との音信が繋がった。
 
Facebookという便利なツールのおかげもあり、高校生のときは、「センセイ」という「別の生き物」だと認識していた先生がが、同じ時代を生きる人としての彼を知ることになる。
 
わたし自身、就職したこともなく、扶養されているわけでもなく、奇跡的に変わった生き方をしてきていると思っていたけれど、人間としての先生は、わたしの想像を遥かに超えて面白い人生を歩んできていたのだった。
 
数学教師だった先生は、人生を折り返したいつのまにかに劇団俳優になっていて、50才を軽く超えたなんて、きっと考えてもいなかったのだろうな、白塗りになったり全国で舞台を飛び回ったり、アーティストとして作品を作ったりしていたそうだ。
 
先生が誰よりも楽しそうに、若い団員たちと舞台に立っている様子は衝撃的だった。
 
カウンセラーという肩書も持っている私は、ふだん「やりたいことが見つからない」という相談や「年齢による将来の不安」などをお聞きすることがとっても多い。
 
この先生を見ていると、そんな不安はどこ吹く風のような笑顔がはじけていて、私よりもよっぽどそんな方たちの勇気になりそうな気がするほどだ。
 
そして彼はさらに、定年を超え、先生はモンゴルで日本語教師になった。
 
なんでも、教師の経験が長いため、本来は数学教師だけれど、日本語教師の資格が通常よりも簡単に与えられる制度があるとからしい。
 
日本語教育は、アジアではそれなりに人気があるらしく、その後 いくつかのアジアの学校を渡り歩き、今はタイにいるというわけだ。
 
本当に人生とは自由で面白いものだと思う。
 
数学教師はアジアで日本語の先生。
 
人生にどれだけギャップを作れるか、という意味で、やっぱりまだわたしは先生に追いついてはいないなと思う。
 
それは、私にもまだ、やりたいことでためらっていることがあるからだ。
 
先生とネットで少し話す機会があったけれど、高校時代の先生と、びっくりするくらい変わっていない。
 
むしろ、同窓会で合った同級生よりも若いのではないかと感じるほどだった。
先生は、「人生100年時代」のトップランナーとも言える人。
これからはこういう人がどんどん出てくる時代になるのだろう。
 
年齢の壁を軽やかに超えて、次々とチャレンジする姿勢は、わたしにとっても大きな指針になった。
 
先生は、やっぱり先生だった。
 
本当は、年を重ねるごとに、心が自由になっていくべきなのかもしれないと思う。
 
そして、ジジイ・ババア、というのが、蔑称であった時代はもう終わらせないといけない。
 
それには、年を重ねていく自分たちがセルフイメージを変え、自由に、楽しく、本当の意味でかっこよく、生きる責任があるのだなと先生との再会で強く感じた。
 
自分のシゴトの一つとしても、シニア世代のパワーを引き出す活動をしてみたいと思えた再会だった。
 
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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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