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メディアグランプリ

いつも助けてくれる優しい上司は毒にしかならない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:古川 馨(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「前はもっとできたのに、どんどんできなくなっている」
前職の部下から、そんな相談を受けた。僕が会社を辞める前に採用したスタッフの話だ。技術面に関しては、徹底的に教え込んだはず。それほどヒドイ状況ではなかったはずだ。しかも、「どんどんできなくなっている」とは、どういうことだろうか。詳しく話を聞いてみる。すると、どうやら新しい店長が「優しい人」らしい。何でも代わりにやってくれるそうなのだ。
 
いつでも助けてくれる、頼れる上司っていうのは、心強いし、安心できるだろう。でも時にはそれが部下の成長を妨げることになる。今回に至っては、成長を妨げるどころか、退化してきているらしい。「優しい上司」が常に助けてくれるため、これまでできていたことも段々できなくなったのだろう。そして、気がついたらその「優しい上司」がいないと仕事ができない状態になってしまう。まるで毒親が子供の面倒を見すぎたために、自分で何もできない子供に育ってしまったかのようにだ。
 
以前、こんなことがあった。私の前職はメガネ屋で定期的に配置転換があった。移動先は当時、社内でもトップクラスの技術者が責任者を努めていた店舗だ。まだまだ技術に関しては勉強中だった私は、その店舗に移動することに緊張していた。「検査や加工、調整の技術なんかも、きっとすごい人たちばっかりなんだろうな」そのスタッフを自分が指導していくという重圧を少なからず感じていた。とはいえ、こちらはまだ社歴も少ない。気持ちを切り替えて、逆にいろいろと教えてもらおうと思っていた。そして、いざ赴任した初日。事件は起こる。
 
スタッフがお客さんに眼鏡の納品作業。そして、お客さんの顔に合わせて、書け具合の調整をしていた時だった。「そうじゃない!」ちょっとイラ立った声が聞こえた。どうやらお客さんとスタッフがもめている。「どうしました?」とかけ寄る。お客さんに挨拶し、状況を確認する。どうやらメガネの掛け具合が何度調整しても上手く行かずに、お客さんがしびれを切らしたようなのだ。とりあえず、交代し調整し直す。すると「おぉ、ぜんぜん違うね」と納得し、その場は上手く収まった。メガネの掛け具合調整は、実はとても難しい。人によって顔の形が違うからだ。左右の耳の高さや左右の顔の幅すら違う場合がある。それらを総合的に判断し、調整するのだ。だから、いわゆる「難しい顔」に当たったときは苦労する。しかし、そのお客さんの顔は特に調整しづらいほどでもなかった。にも関わらず、なぜそんなに時間がかかったのか。
 
スタッフに状況とどんな手順で作業を行ったのかを確認する。すると驚愕の事実が判明した。なんと、店長が出勤している日は店長が検査、加工、その他の技術的なことすべてを行っていたというのだ。しかも、ほぼ技術的な指導はされていなかった。私よりも勤務歴が長い人でも遥かに技術レベルが低いこと判明したのだ。これには参った。技術力が高い店長の下に長年いたにも関わらず、新人に毛が生えた程度しか仕事ができなかったのだ。
 
話を聴くと店長はものすごく優しかったようだ。難しい加工があれば、代わりにやってくれる。「いいよ、やっとくから」調整も「いいよ、俺がやるから」口癖は「いいよ、やるから」だ。すべてやってくれる。スタッフは店長が休みの時以外は、技術的な仕事はほぼしていないのだ。それでは何年経とうができるようにならない。当たり前の話だ。結局、新人に教えるような日々がスタートする事となった。スタッフからしらた、一見頼れる上司のような印象に映るのかもしれないが、僕から見たら毒親だ。毒上司だ。確かに、自分がやった方が早く仕事が終わる。失敗してクレームになることも無いだろう。でもそれではスタッフができるようにならない。結局、自分一人だけが忙しくなるだけなのに。
 
この教訓から指導をする場合は、手助けはしないことにした。もちろん、放置という意味ではない。具体的にどうしたらいいかは教えるし、やって見せることもある。でも、やってはあげない。交代はしない。あくまで、アドバイスをするだけ。やってあげることは結局、そのスタッフの成長をストップさせる。何でも助けてくれる上司が良いとは限らないのだ。ほどよいスパルタが人を成長させる。これだけは間違いない。サポートはするけど、手助けはしない。今もその精神は変わらない。だから僕の口ぐせはこうだ。「とりあえず、やってみましょうか」
 
 
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2018-12-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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