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どこまでなら休める?


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記事:落合健太(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
あなたは、どこまでなら休める?
 
ある日、テレビのショッピング番組を見ていると
「忙しい現代人。仕事もプライベートも、なかなか落ち着いて休めない毎日が続きますよね。そこで、今日ご紹介するのはこちら!」
という語り口で青汁を紹介していた。
 
この流れで青汁を売るのか、とそのときは思ったが、数日後に見た別の番組では、同じ語り口でうなぎの蒲焼を紹介していた。
また翌週は、同じ語り口でベッドマットを紹介していた。
 
さすがにこれだけ重なると気になるもので、ネットで色々探してみると、出るわ出るわ。
休めない現代人向けの商品。
豪華焼肉セット、ビタミン剤、枕、布団、入浴剤やアロマオイル……。
 
現代人は、一体どれだけ疲れているんだ。栄養を取らせて、よく眠らせ、精神もリラックス。
一つの語り口であれこれ売ってしまう番組の、商魂たくましさに呆れるが、確かに。とも思った。
実際のところ、なかなか休めないのだ。
 
幼い頃から思い返してみる。
例えば幼稚園、小学校、中学校、高校。部活や塾、英語にピアノ、友達との約束もなかなか休めない。
 
大学に入り自由になったかと思ったら、今度はアルバイト、ゼミ、就職活動、卒論。
やはりなかなか休めない。
 
社会人になると、ノルマの厳しい営業、明らかに間に合わない納期が押し寄せてくる。
それ以外に会社行事、懇親会、外部研修といった具合で、まだまだ休めない日が続く。
 
年齢を重ねて子供ができると、一気にイベントが盛りだくさん。
運動会、保護者会、クリスマスにお餅つき。きりがない。
 
 
さて、あなたは、どこまでなら休める?
 
 
休めない理由は山のように思い浮かぶのに、休める理由はどうだろう?
 
たとえば子供が産まれる、身内に不幸があった。
これらは比較的休みやすい理由だと思う。どちらにしても一生に一度のイベントだからだ。
しかし、ブラックな職場では、妊婦も休めないというニュースがあった。
また、私の職場では、仕事が忙しすぎて妻の出産に立ち会えず、延々と嫌味を言われ続けている先輩を知っている。しかも一人や二人じゃない。
人はなかなか休めない。
 
もう少し難易度が上がると、家族の事情だろうか。
子供の運動会や、体調不良での看病。
直接自分に関わるものではないが対応しなくてはならない。
「そんなことで休むのか」という声が、少し周りに増えそうな気がする。
 
最も難易度の高い理由は、自分自身に関わるものだろう。
「少し熱っぽくて……」なんて言おうものなら、
「甘ったれるな!」と怒号が飛んでくる職場もあるかも知れない。
これが体調ではなく気分に関するもので、
「なんかテンションがあがらないんで、今日は休みまーす」と気楽に言い出せる職場は、世の中にあるのだろうか。
 
 
さて、あなたは、どこまでなら休める?
 
 
しかし時代は多様性。
あんな理由もこんな理由も休める世の中になってきた。
色々な会社で色々な休暇制度を導入している。
 
有名どころではバースデイ休暇。誕生日は休んでいいらしい。
あるいは失恋休暇。恋に破れて気持ちが落ち込んでいたら休んでいいらしい。
他にもペット忌引休暇や、親孝行休暇、理美容半休なんてものもある。
 
忙しい現代人を休ませるために、様々な会社で様々な工夫が凝らされている。
しかしこれらは、制度がないと「こんな理由では」休みづらいという裏返しではないだろうか。
 
人には色々な背景がある。
背景の数だけ優先順位がある。
休めるハードルも、きっと人によって色々あるのだ。
仕事と家族、仕事と恋人、仕事と体調、仕事と気分を、それぞれ天秤に乗せたときに、様々な側に傾いているのだろう。
 
しかし人は、自分中心に物事を考えてしまう。自分と相手の優先順位が違うことに気づけない。きっと相手も、自分と同じ側の天秤が傾くはずだと信じて疑わない。
何を隠そう、私が散々言われ続けてきたのだ。
「そんなことで?」「そんな理由で?」
何度も聞かれ、何度も説明を繰り返してきたが、なかなか理解してもらえなかった。
それもそのはず。背景が異なるのだ。優先順位が違うのだ。
理解してもらえると思うほうが、おこがましいのかもしれない。
 
そうなると、その先は「大切さ」との勝負になる。
仕事と比べて、家族は、恋人は、体調は、気分はどれほど大切か。
休む・休まないは、会社の制度が決めるものではなく、大切さで決まるものだと思っている。
仕事よりも大切なら休むだろうし、仕事のほうが大切なら休まない。
それだけだ。
 
10年ほど前の、若手だった自分。
当時は「うちの会社ってなかなか休めないよね」なんて同期と愚痴っていた。
自分が仕事を選んだだけなのに、ドヤ顔で会社の制度を批判していた。
もし目の前にいたら、スリッパで頭をはたいてやりたい。
 
今になって、ようやく理解できる。
結局、私は私の大切なものを選んでいたのだ。そのときは仕事が大切だった。
今はどうだろう。
次に休みたくなったときは、どんな理由で、何を大切にするだろうか。
今から楽しみだ。
 
さて。
あなたは、どこまでなら休める?

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2018-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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