メディアグランプリ

平成最後の満月と、ライティング・ゼミ最後の言葉をふりしぼる夜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【1月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《土曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

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【1月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《土曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:田中 眞理(ライティング・ゼミ朝コース)
 
 
「今日の月、見るべき」
離れて暮らす娘からラインがきた。
12月22日深夜。もうすぐ23日になろうとしていた。
スマホを持って外に出た。
 
「平成最後の満月だよ」
明るい。空は深い藍色で、青みがかった雲がくっきり美しい。
雲は月を取り巻いたり、背景になったり、月の一部を隠したりして、流れている。
水墨画を動画で見ているようで、思わず「おお」と声が出た。
 
しばらく上を見上げたまま、ときどき撮影をしながら、時間を過ごした。
 
心が旅に出た。
 
2018年がもうすぐ終わる。
と同時に、ライティング・ゼミが最終回を迎える。
 
どんなことでも、2000字のネタになる。
そう信じて9月から、もがいてきたのだけれど、
その手ごたえはどうか。私は書ける人になったのか。
答えは否、だった。
 
毎週苦しいのだった。
「毎日書き、その中から一番よいのを選ぶ」
ワードの画面の左下に、打った文字数が出る。
数百になったところで少し安心し、週末にそれらを継ぎ合わせたら2000字になるかもしれないという小さな希望を抱く。
そして迎える週末は、悲惨なのだ。
自分の日々の表現をつぎはぎにしても、まったく一つにならない、ということが証明されるだけだった。
残念だけど、数百の文字を全部なかったことにして、一から何かを書く。
心のどこかで「もったいない」という気持ちが残る。
 
締め切り間際に追いつめられるこのざわつき。
これは今も何なのか、謎だけれど、このざわつきがやってきて、初めて書くことに対して正面から向き合えるざわつきだ。
 
そして書き終えると、つかの間の幸福感がやってくる。
「出せた」
「できた」
1週間のクライマックス。
 
そして間もなく次の感情がやってくる。「ちゃんと書けていたのだろうか」
コメントを見て
「あーダメだった」
「あー読んでもらえる文章だった」
 
また、書きとめる日々が過ぎ、苦しい週末がやってきて……。
そんな2000字生活を送ってきた。
 
書くことは、私にとって人生の棚卸。
「私」というストーリーは、自分で考えていたよりも、シンプルだった。
自分の中のいやらしい部分も、書き出してみると、それは目に触れ空気に触れ酸化する。文字にして眺めてみたら、たいしたことはない。という気持ちになってくる。
すべては今の自分を形作る大切な自分の一部なんだとも思える。
ライティング・ゼミで、ひーひー言いながら文字を絞り出す作業によって、向き合えていなかった自分、気づいていなかった自分に、何度も出会うことができた。
 
これはもう、何にも代えがたい体験。
 
自分の引き出し、自分の持ち駒が、自分が想像していた以上に少なかったことも発覚した。
ほんの少し残念だったけれど、気持ちが軽くなった。
 
もしかしたら、これからが私の第一歩?
 
「目の前のどんなことでもネタにして、どんなことでも2000字書ける人になりたい」。
最初の目標だった。
 
習ったときの感覚では、ABCユニットという公式に何かを当てはめるような、やや規則的な理論的な方法で、そのコツを手に入れられるような、そんな気がしたものだ。
 
そして、その公式に、自分の言葉、自分の気持ちを当てはめようとすると、まったく文字が進まなかった。無理やり公式の中で完結しようとすると、ふんぎりのつかない、集中力のない、やり切った感じのない文章になった。
 
自分の中から出てくる感情はたくさんある。それを文字しながら、「偶然ABCユニットになっていた」というとき、「なんか書けた気がする」そんな気持ちになった。
 
その偶然を偶然じゃなくて、自分の力で書けるようになったとき、きっとそこに、一つの道があるような気がする。
9月からやってきて、今やっと、自分のスタートラインを見つけたような気がするのだ。
 
遅い自分。
昔から変わらずだ。
小さい時、親からの「こうあるべき」。きょうだいからの「こうあるべき」。
「べきべき人生」を20数年にわたって、送ってきた。
そうじゃない。人生は「べき」じゃない。気づいてからも、「自分の価値観」「自分のしたいこと」は、突然わかるものではなく、ずっと迷走と試行錯誤を繰り返してきた。
少しずつ自分の足で歩いている実感を持てるようになり、「べき」を押し付けてきた両親きょうだいに対して、心から感謝の気持ちを取り戻せたのは30代後半になってからだ。
「べき」は彼らからの愛のカタチ。「べき」をそのまま自分の人生にしてしまったのは紛れもなく自分だった、というシンプルなことがわかるまでに、20年近くの月日を要したのだ。
 
ABCユニットをちょっと習ったくらいでは、わからなくて当然だ。
じわじわ、0.1ミリずつわかっていく自分に、またまた気づくことができた。
そうそう、私、遅いけどしつこいんだった。
 
輝く月、流れる雲、静寂。
心が旅から帰ってきた。
 
おこがましくも私は月。流れる雲は思考。静寂は決意。ぼんやりと、そして徐々にくっきりと姿を見せる。
 
夜はしんしんと冷えてくる。
うちに入ろう。
 
ライティング・ゼミとの出会いに感謝します。
そして私のライティング・ライフは、これからも続いていきます。
 
***

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2018-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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