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メディアグランプリ

里親カフェは幸せな犬や猫が集まる場所だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:多田有紀(ライティング・ゼミ日曜コース)

「あのわんちゃんかわいい!」
これは、犬や猫を飼いたい人が集まる里親カフェのひとコマだ。
どの犬・猫もとても元気で幸せそうにみえる。
しかし、ここにいる犬や猫は、飼育放棄で保健所に連れて行かれた子、繁殖用に飼われたあと捨てられた子など、不幸な生き方をしてきた子ばかりだ。

実は、私は里親カフェに行くのがとてもこわかった。
なぜなら、不幸な生き方をしてきた犬や猫を見るのが辛かったからだ。
みんな怪我をしていたり、気性の荒い性格の子がいたりするのだろうか……。
そんなことをいつも考えていた。

そもそも私はなぜここまで不幸な生き方をした動物が気になるのか書いてみたい。

私は現在3匹の猫を飼っている。
昔住んでいたハイツの庭で保護した猫だ。
住んでいたハイツは、ペット禁止だったので飼えなかった。
だから、そっと窓から子猫たちを眺めていた。

でも、私が子猫たちを見つけたのは、冬真っ只中。
雪が降っている日もあった。
このままじゃ子猫が死んでしまう……。
そう思い、私は本格的に里親探しをはじめようと思っていた。

そうこうしているうちに、子猫たちは、ハイツの庭を走り回るようになった。
近所の人はあまり猫が好きではないらしい。
ほうきで追い払う様子をよく見かけた。
猫が嫌いな人はとても多い。
庭でトイレをするので、その点は私もしょうがないことだと思っている。
しかし、一刻も早く里親をみつけないと。

ある日、仕事から帰っていつものように窓から庭をながめていた。
そのときだった。
「ピンポーン」玄関のベルがなった。
ドアをあけると近所の人がそこにいた。
その人はこう言った。
「庭に猫が住んでいますよね。おたくの猫ですか?」と。
私はちがうと答えた。次にその人はこういった。
「保健所に連れていきたいんですけど、いいですよね?」
私は言葉が出なかった。
返事をしないうちに、近所の人は家に帰っていった。
このままだと本当に子猫は保健所に連れていかれてしまう。
なんとかしないと。

そこで、私は次の日から猫を捕獲することにした。
母猫は、とても人間嫌いだった。
もちろん子猫たちを守るために、一生懸命威嚇してくる。
私は心の中で
「ごめんね。でも今捕獲しないと、あなたたちは保健所に連れていかれてしまうの」
そう話しながら、涙目で子猫たちをつかまえた。
子猫たちの中には、風邪をひいて目が開かない子、震えがいつまでも止まらない子がいた。

その後、私は一生懸命里親を探した。
しかし、なかなかみつからない。
インターネットで募集すると、多くの人が声をかけてくれる。
でも、私はだれも信じることができなかった。
そのころ里親詐欺が多かったからだ。

「こうなったら私が引っ越すしかない」
その日のうちに大家さんに来月引越しすることを伝えた。

それからもう10年以上経っている。
その猫たちは私のとなりで、いびきをかきながら寝ている。
この子たちを毎日見ていると、とても幸せな気持ちになれる。
だから、もっと多くの不幸な子を救ってあげたい。
でも、わたしにできることは限られている。
この思いがずっと頭の中をよぎっているのだ。

こういう経験があるから、私は里親カフェに行くのがこわかった。
ある日、私は友達と一緒に勇気を出して行ってみた。
私の想像とははるかに違った。
どの子もとても元気で、性格のいい子ばかりで、とても愛情に飢えている。
私が椅子にすわると、「だっこして。なでて」と代わり代わりに飛び乗ってくる。
この姿を見て、私はこころの底からほっとした。
しかし、どの子も身体に傷があったり、病気を持ったりしている。
これまでどんな風に育てられていたのかということを考えると辛くなった。
でも、どの子もそんな姿を少しもみせたりしないのだ。
たまたまなのかもしれないけれど、人間嫌いの子は今までひとりも見たことがなかった。

里親カフェは、不幸な犬や猫が集まる場所ではない。
幸せになるために、大切にしてくれる飼い主を待っているのだ。
だからみんなとても人間が好きな子ばかり。
入り口から、人が入ってくると全身を使ってよろこんでいる子も多い。

ある日、里親カフェで新しい里親さんがお迎えに来ているのをみかけた。
そのあと里親さんが帰るときに、お店の人とお客さんみんなで「おめでとう」と声を掛ける。
そのとき私は、犬の顔をじっと見た。
信じられないかもしれないが、にっこり笑っているように見えるのだ。
きっと今度は新しい飼い主の家で幸せな生活を送れるんだろう、と思うと涙がでてきた。

「今まで、人間の勝手でひどい生き方しか送れなくてごめんね。
でも、これからはきっと新しい飼い主さんが、あなたを一番大切に思ってくれるよ」
だから、もう安心してね。と、私はこころの中でつぶやいていた。

里親カフェは、不幸な動物が集まる場所ではない。
人間も動物も幸せになるために集まる場所だと私は思っている。

私ができることは、今飼っている猫を最後まで見届けること。
そして、できればあたらしい子を迎えたいと最近思っている。

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2019-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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