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メディアグランプリ

人生というオセロゲームに勝つために


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:平野謙治(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「また今日もダメだった……」
 
昨年秋頃のこと。帰りの電車で毎日このようなことを思っていた。
 
新卒で、広告会社に就職した。小さい会社なので入社してすぐに法人営業を任せてもらえた。今まで何をやってもそれなりに上手くいっていた僕は、当然仕事も上手くできるだろうと思っていた。
 
ところが、その考えは甘かった。僕は人生で初めての挫折を味わっていた。
電話をしてもなかなかアポイントがとれない。商談に行っても自分よりずっと目上のお客様と打ち解けることができず、なかなか進まない。当然契約はほとんどとれなかった。失敗ばかりを重ね、何をやっても失敗するイメージが浮かぶようになってしまった。
 
「どうせ上手くいかないから」
「これ以上傷つきたくない」
 
そうして僕は、仕事においてだんだんと挑戦することをしなくなっていった。新規へのアプローチをやめ、既存顧客のアフターフォローや、自分のペースで進めることができる書類作成に逃げた。
そのような姿勢で仕事をしていれば、当然周囲から指摘される。仕事の内容に関してはもちろん、心持ちや考え方に対しても厳しい指摘を受けた。社内ミーティングのたびに、自分だけが責められているような心地がした。存在そのものが否定されているような気持ちになった。
 
だんだんと気分は誤魔化せないほどに落ち込んでいった。社内に居場所は無いように思えた。周りからは「最近暗いね」と言われることが増えた。ひとりで電車に乗っていて突然泣いてしまうこともあった。そしてその度に「どうしてこんなに自分は弱いのだろう」と自分を責めた。
 
「もう辞めてしまおうかな」
 
そう思ったことも何度もあった。しかしこのままの弱い自分では、他社に移ったとしても通用しないのではないかとも同時に思った。ただ、入社してから今に至るまで散々積み重ねてきた悪いイメージに打ち勝つのは既に不可能なようにも思えた。毎日悩んで暗い気持ちになり、その度に自分が嫌になった。
大袈裟でなく、どうすれば前向きになれるかわからなくなってしまった。
 
それでもなんとか辞めずに通勤し続け、迎えたある日の平日。この日は、久しぶりに高校時代の友人と飲みに行く約束をしていた。友人は大学で哲学について勉強していた。そのような彼に相談すれば、何かきっかけが得られるのではないかと僕は期待していた。
 
「最近、気分が暗くて……。
仕事しなきゃと思うのに、仕事したくないって思っちゃうんだよね……」
 
僕は素直に、近況を伝えた。話しながらも心の中で、なんて情けないのだろうとまた自分を責めていた。
そして一通り話した後、彼は言った。
 
「仕事したくないって思ってもいいんじゃないかな。
暗くても悪くないと思うよ」
 
内心、目の覚めるような厳しい言葉を期待していた僕は動揺した。
 
「いや、明らかに良くないでしょ!
いいよ、無理に慰めなくて……」
 
「いや、暗くなってしまうことそれ自体は悪いことじゃないと思う。
そうじゃなくて、暗くなってしまうことを悪いことだと思ってしまうのが悪いことなんじゃないかな」
 
こう言われて、さらに僕は動揺した。最初はどういう意味かわからなかった。
しかし彼の話を聞いているうちに理解できた。暗くなってしまったり、マイナスなことを考えたりしてしまったとしても、最後にそのような自分を肯定すればいい。「気分が暗くて、何もしたくない」と思ったとき、今まで僕は「そんな風に思ってはダメだ」と自分自身を責めていた。しかし、そうやって自分を否定してしまったらさらに暗くなってしまう。そうではなく、「そう思うときがあってもいいよね」と思うようにする。そうすることでどれだけ後ろ向きなことを考えていたとしても、最後は前を向けると友人は言いたかったのだ。
 
さらに言えば、自分の中にある矛盾すら肯定していいと彼は言った。僕は「仕事をしなければならない」と思うと同時に、「仕事したくない」とも思っていた。そしてそのような矛盾に苦しんでいた。しかし、その矛盾すら受け入れてしまえばいい。「仕事をしなければならないと思う自分」も、「仕事したくないと思う自分」も確かに存在している。「そう思う自分がいてもいい」くらいに思えばいい。
 
「どれだけ暗かったとしても、最後に肯定できれば前を向けるよ」
 
今までそんなこと考えたことなかった。何をするにも悪いイメージが離れなくて、そんな自分がダメだと思っていた。そうではない。ダメだと思うことがダメだったのだ。
その日から僕は、彼が教えてくれた「前向きに生きるコツ」を実践した。悪いイメージが頭に浮かんでも「そういうことがあってもいい」と肯定した。胸につかえていたものがとれて、楽になった気がした。
同時に、人生はオセロのようだなと思った。「仕事で失敗をしてしまった」、「また今日もダメだった」と悪いイメージが続いたとしても、最後に「そういう日があってもいい」と思うことで結局は前を向ける。どれだけ黒いオセロが並んでいたとしても、最後に白いオセロさえ刺せればすべてが白に引っくり返る。そう考えると、「今前向きになれるかどうか」がすべてを決めるのだ。
 
未だに営業には慣れない。日々、失敗ばかりする。時には下を向きたくなることもあるが、もう電車で泣いたりはしない。
失敗をしても「そういうときもある。次に活かせばいい」と、気分が暗くても「そういう日もある。また明るくなれる日も来るさ」と、前を向く術を手に入れたから。
 
また今日もダメかもしれない。それでも最後の最後に白のオセロを刺せるように。また前を向こうと思う。
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 http://tenro-in.com/zemi/70172

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2019-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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