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メディアグランプリ

サクラサク~浪人生に告ぐ~予備校で学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:後藤里誉音(ライティング・ゼミ平日コース)

仕事で立ち寄ったJR下館駅、次の電車まで随分待つなあと寒いホームで電車を待っていた時、ふと見上げた電車到着案内の電光掲示板にメッセージが流れた。

「受験生のみなさん、最後の最後まで諦めず、志望校合格目指して頑張ってください。下館駅社員一同、心より応援しています!」

最初は目を疑い、もう一度メッセージが流れるのを待った。やはり間違いなかった。

東京では、毎日のように人身事故による電車遅延の情報が流れる電光掲示板に、この駅では思いもかけないメッセージが流れていたのだ。これには、受験生でなくても、何だかとっても温かく豊かな気持ちになった。

自分が受験生だったのは、もう遠い昔の事。電車を待ちながら、その頃のことが思い出された。

「高校生活を謳歌する!」と宣言した通りに謳歌した結果、受験した大学全てから不合格通知を受け取り、人生で初めて厳しい現実を知った。

一緒に謳歌した友人たちは、なんだかんだ皆合格通知を持って大学に羽ばたいていった。
35年前の女子高校では、まだ浪人する人は少なかった。

決して裕福な家庭ではなかったけれど、親は予備校に行かせてくれた。ただし、1年後に入学する大学は自宅から通える国立大学に限るという条件付きだった。

もう全てを受け入れる以外、自分に選択肢は何もなかった。一方で、文字通り高校生活を謳歌してしまい、精一杯受検勉強をしたとはいえなかったので、これから1年勉強して、ちゃんと大学生になるぞと心に決めた。

その予備校は入学前に試験があり、学力でクラスと座席が決められ、担任の先生もいた。
座席が決められると友達が出来やすい。女性も2割くらいいた。すぐに仲間が出来た。

予備校に通うことは、外国旅行の気分だった。
予備校には寮があり全国から浪人生が集まってきていた。埼玉の山沿いで育ち、それまで県外の人と話す機会は殆どなかったので、まずは世界が広がっていく気分だった。女子校時代は親と担任と駅員さん以外の男性とは口をきいたことがなかったような3年間だったので、男性と席を並べることもドキドキ。話をしてみたいけれど話せない。まるで外国旅行をしている気分だった。

予備校は講師陣も一流だった。予備校での1年間は本当によく勉強した。授業も楽しかった。受験のテクニックというのも存在はするのだが、名の通った講師陣が教えてくれたことは学ぶことの楽しさだった。短期講習ではテクニックを教えることが重視されるのかもしれないが、1年間にわたり勉強していくのであるから、興味をもってその分野を探求していくことの楽しさを存分に教えてくれた。

予備校はオアシスのようでもあった。クラスメイトは、皆楽しく集っているけれど、少し前の同じ時期には同じ絶望を味わっている。絶望の砂漠を孤独に彷徨っていたのち、ここに集まってきたのだった。その気持ちが共有できることは、見えないけれど強い絆となっていった。

一緒に自習室に通い、一緒に帰る。一緒に頑張る仲間が出来たことは本当に心強かった。

秋風が吹くころ、志望校を絞り込む時期、思っていたように成績が伸びなかったり、えも言われぬ不安に襲われたり、とても辛い時期があった。さすがに二浪は経済的に許されないだろう。自分としても、あと一年勉強するのは辛い。それなりに勉強してきた。でも合格の保証なんてどこにもない。

その辛さは皆同じだった。でもそこで出来ることは勉強しかなかった。少しでも弱点を減らし、自信が持てる領域を増やすこと。皆ちょっと口数が少なくなりながら勉強した。

年が明けると、授業はなくなり、仲間とは電話で連絡を取りながら頑張った。

寒く厳しい冬を駆け抜け、優しい光が差し込む春が来た。ほとんどの友人たちは、前年の春とは違う春の陽を浴びていた。

一緒に鎌倉を卒業旅行した。合格の暁に、春の海を皆で一緒に見ることは我々の夢だった。高校の友人たちとの卒業旅行には参加出来なかったので、卒業旅行のリベンジだった。19歳、2年間の受験生活を終えて、春の海を眺める皆の横顔はすがすがしく、美しかったことを今でも覚えている。

その後、みんなでスイートピーの花束を持って、担任の先生のところにお礼に行った。
1年前、全国から集まった仲間は、また全国に散らばっていった。

次々と不合格通知を渡された時には、人生の脱落者のように感じた。ことに女性にとっては1年の遅れは、これからの人生すべてに乗り遅れたような言われ方もした。もしかしたらそれも事実かもしれない。

でも少なくとも、その後の長い人生を生きてきて、浪人したことはむしろ財産に感じている。

あのまま順調に大学に合格していたのなら、私はもっと傲慢になっていたと思う。弱いものの気持ちも分からないままだったかもしれない。勉強も不足したままだった。

あれから35年、今でも時々集まっている。久しぶりに会うと、話をしなくても、横に座っているだけで安心感がある。辛い時期を共有した絆は、時を経ても変わらない。仲間同士でカップルも誕生し、結婚式に皆で参加したこともあった。

桜の便りが届きはじめるこの頃、受検の結果の明暗に様々な心模様で過ごしている受験生とご家族がいることであろう。

もしも絶望の春を迎えている人がいたら、伝えたい。一緒に浪人生活を過ごした仲間たちは今、皆それぞれ、素晴らしい人生をおくっていることを!

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2019-03-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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