メディアグランプリ

埼玉県は「ダさいたま」だと思っている人が知らない埼玉県のカッコよさ


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記事:田中 翠子(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
今年2月に公開され話題になった映画、『翔んで埼玉』をご存知だろうか。
魔夜峰央の同名のマンガを映画化したものだが、埼玉をひたすらこき下ろし、いじり倒すエンターテイメント作品だ。
東京都民から虐げられる埼玉県民を描くこの作品。埼玉県民は通行手形がないと東京に入れなかったり、埼玉の地名を耳にした東京都民が気絶しそうになる場面があったりと、普通ならここまでこき下ろされた埼玉県民はさぞご立腹だろうと思われる。
しかし、実は観客動員数は埼玉県民が1番で、しかも1番楽しめる(笑いどころがわかる)のも埼玉県民なのだ。
私も埼玉県民になって今年で4年目になるが、大変楽しく見させていただいた。
 
さて、この『翔んで埼玉』の主題歌になっている『埼玉県のうた』の中に、こんなフレーズが出てくる。
 
「ダさいたま」
 
これは、「埼玉県」と「ダサい」をかけ合わせた造語だ。
埼玉はダサい。なぜそんな風に言われるようになってしまったのか。
確かに、わざわざ遠くから来てみたくなるような観光地がない。埼玉県といえばこれ、という名物がない。海がない。県のゆるキャラが目立たない。
他にもさまざまな「ダサい」の積み重ねがあって、今日の「ダサい」イメージが定着したのだと思われる。
しかし、本当に埼玉県は「ダサい」のだろうか?
 
実は、埼玉県には知られざる「カッコいい」一面もある。
 
それは、弱い立場の人のために新しい取組みをしているチャレンジャーという一面だ。
 
たとえば、どんな取組みか。
ひとつは、子どもの学習支援事業(アスポート事業)である。
埼玉県庁は平成22年から、全国に先駆けて生活保護世帯の中学生を対象に学習支援事業をスタートさせた。平成31年現在は、生活困窮世帯や、小学生から高校生まで支援の手を広げている。
 
日本で貧困問題と聞いて、ピンとこない方もいるだろう。
しかし、最近ニュースなどでも取り上げられているように、日本の子どもの貧困率(2015年)は13.9%。ひとり親家庭の貧困率は50.8%にもなる。
この数字は、先進国の中でも最悪な水準だといわれている。
日本の子どもの7人に1人が貧困という計算になり、かなりショッキングな数字だ。
 
貧困家庭では、貧しいことが原因で子どもの教育が不十分になり、進学をあきらめて貧困から抜け出せなくなるという負のスパイラルにはまってしまう傾向にある。
その負のスパイラルを断ち切るために、県や市区町村が子どもの学習を支援して進学をすすめ、貧困から抜け出す力を子ども自身に身につけてもらおうという取組みが、子どもの学習支援事業(アスポート事業)だ。
今でこそ目を向けられつつある問題だが、埼玉県がこの事業を始めた平成22年といえば約9年前。当時は、まだ認知度が高い問題とは言えなかったのではないか。
そんな時期に、埼玉県はこの取組みをスタートし、さらにパワーアップさせてきた。
 
地味に、地道に。
 
「ダさいたま」といじられる一方で、みんなの知らないところで困っている人を助けている。
これはマンガのキャラクターにできそうだ。
 
そして、弱い立場の人のための新しい取組みの事例をもうひとつ。
それは、「児童相談所と警察の間で虐待情報を全件共有すること」だ。
 
昨年3月、東京都目黒区で5歳の女の子が虐待死した事件をきっかけに、虐待対策として児童相談所と警察の連携を強化することが重要だと言われるようになった。
それを受けて、同じ年の6月に、埼玉県知事は県が管轄する児童相談所が把握した虐待情報(疑いもふくむ)をすべて、県警と共有すると発表した。
 
このスピード感! カッコいい。
急に出てきた話で、おそらく実務を担う現場サイドはご苦労をされたと思う。
でも、人の命がかかった待ったなしの問題に対して、このスピード感で決断できるのはなかなかのチャレンジャーだと思う。
 
ちなみに、まるで県庁からの回し者のように、県行政よくやった! という内容を書いているので怪しまれる方もおられるかと思うが、著者自身は県行政とは無関係だ。
 
ただ、これらは埼玉県民の税金によって行っている取組みだ。
だから、埼玉県民は誇っていいと思う。
 
魅力的な観光地がある。おいしい名物がある。海がある。かわいいゆるキャラがいる。
 
たしかに、そういう見栄えのいい魅力も大事だ。憧れる。正直ほしい。
 
でも、外から人を呼び込むための魅力だけが魅力ではないはず。
いま埼玉に住んでいる人が、もっと住みやすく、もっと生きやすくなっていくこと。
それは地味だけれど、とても大切な魅力だ。
 
目立つだけがすべてじゃない。
いじられても、逆にそれをおもしろがれるおおらかさを持っていて、やるべきことをマジメにちゃんとやっている。
 
そういう、おくゆかしいカッコよさがもっと広まると、埼玉は「ダさいたま」を卒業できるのかもしれない。
 
 
 
 
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2019-04-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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