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絶対に後悔しない生き方。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【6月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ゆうき(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「私、東京に行くことに決めた」
 
「東京? なんでまた?」
 
びっくりする私に、
 
「ここで終わりたくない」
 
と彼女は真っ直ぐな瞳で私の方を見つめ、きっぱりと言い切った。
 
東京で仕事が決まっているわけでもなかった。
今まで福岡県内を離れて生活したこともなければ、東京に親戚がいるわけでもなかった。
 
なぜ、彼女は福岡で10年近く続けた職を辞めてまで、東京に行くことを決めたのか。
 
彼女を東京へと向かわせた理由はただ一つ、
 
フットサルだった。
 
彼女は私が大学時代に所属していたサッカー部の先輩。
九州代表に選ばれるほどの技術の持ち主で、サッカーの技術もセンスも抜群。
多くを語らず、自ら率先して行動して周りを引っ張っていき、さらにユーモアもあって心優しい彼女は、4年生の時にはキャプテンも務め、男女問わずみんなに好かれて、いつもキラキラと輝いていて、皆の憧れの的だった。
 
そんなパーフェクトに見える彼女だが、一つだけ苦しんだものがあった。
 
怪我だ。
 
膝の靭帯断裂、腕の骨折など、多くの怪我が彼女を襲った。
 
その度に、彼女は手術や入院を繰り返し、リハビリに励む毎日を過ごして大学4年間を送った。
こんなにもサッカーが好きなのに、こんなにも怪我に苦しむなんて。
神様は無情だと私は感じた。
 
そんなサッカーが大好きな彼女が大学卒業後に出会ったのが、フットサルだった。
 
サッカー経験を存分に活かせるフットサルが、彼女の第二の輝ける場となった。
仕事をしながらも福岡のフットサルの強豪チームで練習に明け暮れた。
休みの日はもちろん、仕事の後も練習に通う毎日が続いた。
 
そんな生活が5年以上続いたある日、
 
「私、東京に行くことに決めた」
 
そう、フットサルをしに彼女が東京へ行くのだ。
福岡を出て、関東のよりレベルの高いチームでフットサルを極めたい。
もっと、フットサルが上手になりたい。
そして、レベルアップして、また福岡でフットサルがしたい。
 
その一心での決断だった。
 
東京では仕事も家も決まってなかった。
 
ただ、決まっているのは
 
フットサルが上手くなりたい。
 
その気持ちだけだった。
 
それから彼女は、関東のいくつもの強豪チームの練習に参加し、入団チームを決めた。
すると、タイミング良く仕事が決まり、家が決まった。
人望の厚い彼女は、福岡にいる友達やフットサルのチームメートに惜しまれながら、東京へ旅立っていった。
 
「必ず、フットサルが上手になって帰ってくる」と涙ぐみながら。
 
それからの関東での彼女の生活は、
 
千葉から都内へ満員電車で、通勤する日々。
秘書として働くことになった彼女は、着慣れないフォーマルな服装、満員電車のストレスに毎日苦しんでいた。
 
仕事が終われば、すぐに千葉へ帰ってフットサルの練習へ通う日々。
彼女が所属したチームは全国でも有数の強豪チーム。
そのレベルも今までとは桁違いで、練習量や練習内容もとてもハードだった。
それに、土日やまとまった連休には、日本全国を遠征や大会で飛び回る。
 
とにかく、引越し費用や遠征代にお金がかかった。
上京した1年目は、コンビニで100円のガムを買うことすらためらうほどお金に苦しんだそうだ。
 
それでも、彼女は遠征費を捻出するために、日々節制して生活した。
 
彼女にたまに会うと、
「やっぱりこっちはフットサルのレベルが高い。私はまだまだ全然だ」
と嘆いていた。
 
試合にも出れないという。
チームメートや監督には練習中も散々怒られて、ベンチにも入れないこともあるそうだ。
 
福岡では、チームの中心だった彼女。
その彼女が、試合に出られない、チームメートに怒られるなんて、私には信じられない事実だった。
 
でも、彼女のその目の奥には、まだ強い意志が燃えているのが私には感じ取れた。
 
フットサルがもっと上手くなりたい。
 
彼女は、高いレベルのチームの中でひたすら練習し続けた。
自分のレベルとの違いや、自分の技術の不甲斐なさに、練習の帰り道、泣きながら自転車を漕いで帰ることもあったそうだ。
 
それでも、彼女は諦めなかった。
持ち前の運動センスと、誠実で思いやりのある人柄が少しずつ開花され、チームの中にだんだんと溶け込んできた。
試合にも少しずつ出れるようになった。
 
彼女の存在は、私にとってもとても良い刺激だった。
彼女が一途な想いで、全てを捧げてフットサルに全力を尽くす姿に、私も彼女の周りの人たちも勇気をもらっていた。
 
私は、嫌なことがあった時、自分の追いかけている夢を投げ出したくなった時、彼女のことを思い出したり、彼女に連絡を取る。
 
「私は、全然まだまだ下手くそ。もっとフットサルが上手くなりたいし、上手くなれると思っている」
 
そう、悩みもがきながらも自分を信じて真っ直ぐにフットサルに立ち向かう彼女の泥臭さは、人間味にあふれてキラキラ輝いてみえた。
 
久しぶりに、千葉に彼女の試合を見に行った時、コートに立って精一杯声を張り上げ、走ってプレーしている彼女の姿に、胸が張り裂けそうに熱くなった。
 
薄っぺらい良い方かもしれないけど、とにかくかっこよかった。
上京してから数年、ベンチにも入れなかった彼女は堂々とした姿でコートで躍動していた!
 
そして数年後には、彼女はキャプテンマークを巻くほどになった!
そう、チームにとってなくてはならに存在に彼女はなっていたのだ。
 
そして、この春、彼女は福岡に帰ることを決めた。
何ヶ月も悩んだ上での決断だったそうだ。
上京する前の決意通り、福岡のチームに戻って、そのチームメートたちと一緒にフットサルをすることに決めたそうだ。
 
私は、彼女の引越しの荷造りをしに彼女の千葉の自宅を訪れた。
 
福岡での新たな生活への不安を口に出しつつも、荷造りする彼女。
 
福岡に帰る前に、千葉のチームメートや彼女を応援してくれた人たち、関東でできた友人たちとこの1ヶ月はたくさん会って話したそうだ。
 
「こっちを離れるのが寂しい」
 
そう呟く彼女は、見ず知らずの新しい場所で、新しくできたチームメートや友人に愛され、確かに彼女の居場所を築いていた。
 
まさに彼女の挑戦はゼロからの挑戦だった。
悔しい思いや辛い思いを味わうことが多い日々だったかもしれない。
それでもフットサルを上手になるという強い決意と、日々の努力の積み重ねが彼女の関東での数年を色濃いものにした。
 
人生でも忘れられない、絶対に後悔しないであろう日々を彼女は確かにこの地で送ったのだ。
 
荷造りを終えた彼女は、爽やかな笑顔で私を見送ってくれた。
 
その笑顔を見て思った、
 
私も自分の気持ちに正直な選択をして、そしてひたむきに一歩ずつ自分の人生を積み上げていこう。
 
それこそが、自分の選択や人生に後悔をしない方法なんだと。
 
 
 
 
***
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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