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メディアグランプリ

最高の友人と最低の恋人、あるいは男女の友情


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:上野建(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「2週間くらいまえに、彼氏と別れたの」
A子と会ったのは1ヶ月ぶりくらいだった。
(ゲスな詮索される前に断っておくが、私とA子は男女の関係にない)逆算すると、その時会ったときは彼氏がいたわけだが、彼氏の話は全く聞かなかった。というか、彼氏がいたことさえ知らなかった。
話が出なかったのは、そのときは、うまくいっていたのか、話せる状況になかったのか。
 
まあ、それで、2週間くらいまえに別れることになって、え? 原因? なんだろう、向こうがもう無理! ってなったのかな、とA子は笑う。
で、でも、まあ、そのときは、お互い、まだ好きって気持ちがあって、けど、疲れたって感じで……。
「うん、うん」
私は静かにうなずいた。
お互い、未練みたいのがあったから、その別れ話のあと、とにかく、「今日は飲もう!」ってなって……。
ここまではありがちな話だが、A子がここで絶対に終わるはずはないと、私は顔には出さないようにしていたが、心の中では期待を膨らませていた。
 
「で。最後、2人で、お互いのパンツを公園で燃やしたの」
思わず、コーヒーを吹き出しそうになった。
なんだよ、それ。
「未練を成仏させようと思って」
え、きみたちの恋愛の未練って、パンツにとり憑いているているの? いや、考えてみると、たしかに『恋愛の未練はパンツにとり憑いている』というのは何やら真理めいた気もしてきた。未練がましく関係を持ってしまう優柔不断な男女など、パンツのせいかもしれない。
 
そういえば、誰かが『失恋したときは下着を全部捨てて買いかえる』という話をしていたのを思い出した。
それは、新しい恋人に前の恋人に見せた下着を見せるのが嫌だったり、前の恋人に縛られることなく新しい恋人を探す準備みたいなゲン担ぎだったり、するらしい。
 
「最近、焚き火とか厳しいじゃん? すぐ通報されたり……」
私がきくと、A子は平然と言う。
そうなの。警察が来て「何してるんだ!」って。
私は笑ってたずねた「んで?」
今日で、私たちは別れることにして、今、お互いのパンツを燃やしてました。って正直に言ったよ。
「正直すぎだよ! で警察はなんて?」
よく覚えてないけど、「ここでパンツを燃やすな」って怒られた気がする。
ここで……?? そもそもこの世界にパンツを燃やす場所などあるのだろうか。
 
別の日、A子と会う用事があった。
土曜日の朝だ。
私とA子の最寄り駅は偶然にも同じで、駅で待ち合わせをしていたのだが、前日、酒を飲む予定のあったA子から、何時に起こして、と言われていた。
その時間に連絡すると「起きてるってか、結果ほとんど寝てない」と、すでに家を出ていた私は冗談半分で、「じゃあ、家まで迎えにいくよ。それまで休んでて」と言ってみた。最寄り駅が同じということは知っていたが、A子の家は行ったことがなかった。するとA子から住所だけが届いた。
 
住所を頼りに、グーグルマップで調べながら歩き、部屋につくと、電話した。が、出なかったため、ここがA子の部屋か不安があったがインターホンを押した。インターホンからのA子の声を待つと、いきなり玄関の扉が開いた。
「おいっす」というA子は玄関の姿見で化粧をしていた。
「あがっていい?」
「いいけど、散らかってるよ」
 
確かに散らかっていた。
多分、誰に聞いても「散らかっている」と答えるだろう。
散らかっているがあまり、A子の部屋をきょろきょろと見回した。
どこに視線を置くのが自然なのか分からなかった。
どうも気が散る。
積み上げられたネット通販の空き箱、弁当の容器、空き缶、使用済みの紙皿
ゴミ箱はなく、いわゆるポリバケツ用の大きなナイロン袋が直接その役目を果たしていた。
 
「最近、引っ越してきたばかりだよね? ホコリがすごくね? 前の家から連れてきちゃった?」
そうなんだよね。多分、それもあるんだけど、人からラグをもらったら、そこからホコリが無限に出てくるの。
もし、ホコリが足りなくて困っている人がいたら、このラグをあげればどれだけ喜ばれるだろう。
 
「見て、このパンツ」とA子はパンツを広げて笑った。
幼児がはくようなパンツで毛玉だらけだ。
「どこで売ってると思う?」ユニクロ? 無印? と答えると「しまむらでしたー」と何故かA子はきゃっきゃとはしゃいでいた。「このパンツは、今日は絶対にエッチしないって日にはくの」
 
なんだよ、その宣言。
全然、最初からそんな気はなかったが、その説明をされた俺って、と男として少し悲しくなり苦笑いした。
「俺に変な予防線張ってない」と笑うと、
「考え過ぎだから」とA子も笑う。
「ちなみに、俺の理想のシチュエーションは、俺が誘ったら「今日は可愛い下着じゃないからダメ」って断られるんだけど、そこを少し強引に押し倒す、ってパターンだから」
「うるさいよ! バカ!!」とA子は大笑いする。
 
男女の友情が成立するかという問いがある。
個人的には「人と場合による」と思っている。
具体的には、私にとってA子を最高の友人だ。良き友である。
しかし、絶対に恋人にはしたくない。こんな恋人、最低だ。
 
向こうもそう思っているだろう。
そんな時、男女の友情が成立するのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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