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メディアグランプリ

「現代人のエネルギー不足問題について」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:いあいゆり(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
体が動かない。
 
朝起きたら体が重く、起き上がれない。
起き上がらなければと焦るほど、私の中のもう一人の私が意地でも起き上がらせまいと戦っているようだ。
疲れた。 「エネルギー切れ」という言葉がふと頭に浮かんだ。
そういえば、2週間連続出勤、最近の睡眠時間は数時間だったか。
納期が迫っていた。いや、 それ以前から人手不足で残業時間は月100時間を超えていた。
きついのはみんな同じだ、おまえだけさぼるな。 有給休暇を申請したとき部長に言われた言葉だ。
 
「行きたくない」
 
つぶやくと同時に涙が流れる。 疲れた、辛い、苦しい、死にたい、消えたい、今まで見て見ぬふりをしていた感情が一気にあふれた。
自分はなんてだめなのか。 今日休んだら同僚や先輩に迷惑をかけてしまう。 締め切りに間に合わないかもしれない。 それでも……
 
「もう、いやだ」
 
もう一人の私が必死に訴えてきているような、そんな感覚だった。
始業時間ぎりぎりに会社へ電話し退職を申請した。
 
その後は、罵倒されたかと思えば、 ほめられたりなだめられたり、 あの手この手で引き留められたが、 1週間ほどであきらめたのか、 引継ぎや手続きに必要な書類のやりとりになり、電話から2週間たったその月の末日で退職となった。
 
その間に心療内科に行く。診断名は「適応障害」
ストレスにより精神状態が不安定になり日常生活に支障が出ている、というものだった。
精神安定剤を服用し始めて数日もすると、 体のだるさが少し楽になったと感じた。
それでも、在職時と同じ時間に目がさめたり、 仕事を途中で放り出したことへの罪悪感だったり、 誰かに責められている気がしたり、 と毎日が苦しくて仕方なかった。
 
そんなとき医者のすすめでカウンセリングを受けることになった。
 
カウンセラーは初老の男性だ。
初めての相手は緊張する。 会社員時代よくしていた愛想笑いをするが、 カウンセラーは笑っているのかいないのかわからないほぼ無表情で、 言葉数は少なめだった。 けれど、 私の発言にそれほど反応せずに会話をする彼の態度のおかげで冷静に話すことができた。
毎回とりとめのない世間話から始まり「好きなことを話してください」や「どうですか?」と言われカウンセリングがスタートする。
 
当初は話すことが浮かばず、無言の時間が続いた。
必死に考えて話し出したことは「何を話していいかわからない」というときもあった。
次第に自分の症状のことや日常の苦しいこと、 退職した会社や周囲のことを、
さらに回数が進むにつれ、 自分の生い立ちや家族のこと、 思い出話などをしていった。
 
しかし、 自分の話をすることはとてもやりづらかった。
 
今まで私は会話といえば聞き役に回り、 自分の話は必要最低限にして、 相手のほしい相槌を、こんな人であってほしいという希望を把握してうまく会話を回しているとうぬぼれていた。 身のない会話であってもその場がまとまり終了時間までやり過ごすことができていた。
カウンセリングだとそうはいかない。自分の気持ちをごまかしてはいけないような雰囲気、 暗くて汚い感情とも向き合ってそれを言葉にするというのは、終わった後とても疲れる。
ただ嫌な疲れではなかった。 自分の気持ちを誰かにきいてもらうことで府におちたからだ。 私は怒っている。 私はそれが嫌いだ。 外に出てきた気持ちはなぜかすっと小さくなった気がした。
 
カウンセリングを続けて1年をたとうというころ、私の中で一つの疑問に答えがでていた。
「なぜ、 いつもエネルギーがたりない、 つかれている、 と感じるのか」
 
人と話をするときうぬぼれていた私は、 相手の期待にこたえたいがために自分の言いたいことを言わないで、 求められた人物像になろうとしていた。
それはできているかできていないかにかかわらず、 ものすごくエネルギーを使う作業だ。
相手の顔色を見て、 どの言葉を求めているのか考えて、 自分の立ち位置や空気を読んでおかしくないか客観的に考えて、 とにかく考えて考えて脳をフル稼働して求められた人物となって会話をする。
 
疲れますよね。 そんなことしていたらどんどんエネルギーを使ってしまう。
 
だからエネルギーが切れている、 足りないといつも感じていた。
体が重くて行かなきゃならないのに動けない、 このときいつも「エネルギーが切れている」ともう一人の私が言う。
 
相手の期待にこたえていい時ももちろんあると思う。
けれど自分自身がどうしたいか、 何を言いたいか、 言いたくないことを言っているのではないか、 いい人と思われたいのではないか、 と求められる人物像を考える前に自分の気持ち、 感情を感じてみてはどうだろうか。
 
そんな意識を持って会話すると少しだけ楽になっている自分に気づいた。
正解とは思わない、 けどいつも疲れたと人とのコミュニケーションが苦手な人にはぜひ試してもらいなと思う。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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