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メディアグランプリ

心に武器を持て


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:服部動生
 
母の仕事の関係で、生まれてからずっと原宿という町に住んでいる。親がアパレル関係の仕事をしているわけではないが、母の知り合いにはデザイナーさんなどが多く、奇抜な人がたくさんいた。
私の同級生の親にも、デザイン関係の仕事をしている人や自分のブランドを持っている人が何人もいた。そういう環境だったので、小学校の頃、ファッションセンスのない私は随分といじめられた。
まず彼らはランドセルなど小学校2、3年生でもう背負わなくなる。私のように6年間もランドセルで頑固を通したのは学年でも二割ほどだと思う。ダサいというのはそれだけで罪なのだ。
親の趣味なのか、本人の好みかはわからないが、彼らは小学生ながら自分の格好に強い自信を持っていた。一方私はというと、親が安売りで買ってきた服を適当に着るだけの毎日。唯一言われていたことは、上着とズボンの色は分けること、というよくわからない約束事だけだった。
小学生ながらダメージジーンズを履きこなす同級生たち。決して背伸びなどではなく、ちゃんと似合っている。髪型もバッチリ決まり、寝癖のまま登校することさえあった私には居心地が悪い空間であった。
友達もいるにはいるが、彼らはファッションに関しては素人の集まり。要するに、ダサいとは言い切れないが……、くらいの連中でつるんでいた。
大人になった今、出身地が原宿というとそれなりに反応がいい。だが、肩身の狭い小学校時代を、今でも忘れることはできない。
 
さて、中学校に上がったとき、私は天に感謝することがあった。それは制服が登場したことだ。制服は強制的に来ていかなければいけない。故に個性が出ない。カッコつけようがない。着崩せば即ち校則違反だ。
世の中には制服というものに対して抵抗感を覚える人もいるかもしれないが、私は嬉々としてそれを受け入れた。どんなにダサくても「制服」の一言で言い訳が立つからだ。
だが中学校でも結局いじめられた。おそらく小学校以来自分に自信がなかったからだろう。結局学校が変わってもあまりいい方向には頃場はなかった。
しかしここで予想外の事件が起こった。小学校の同窓会だ。理由は今でもわからないが、大して仲良くもなかった「女子!?」に誘われてカラオケやら何やらに行くことになる。しかもその女子は当日中学の同級生を連れてくるという。考えようによっては人生初の合コンであるが、私は気が気ではなかった。
そもそも誘われた理由が不明、当日は知らない人がいる。私はパニック寸前。だが、とある妙案が脳裏をよぎった。
 
「制服を着て行こう」
 
もはや自分の私服がダサいのはしょうがない。ただでさえモテない私がダサい私服を披露でもしたら、最悪場の空気に水を差すことになる。となれば、学校に用事があったふりをして制服を着ていくことで、多少ごまかせると踏んだ。
そして当日、私を誘った女子からは「なんで制服なの?」と半笑いされたが、話はそれで終わった。手厳しいツッコミや陰口は聞こえてこない。上手くいったぞ。思惑通りに運んで私は上機嫌になりカラオケでも歌いまくった。
結局、他のメンバーの趣味に合う選曲ができなかったりしたので服装以外ではことごとく失敗し、以後呼ばれることはなかった。しかし、こと服装に関してだけは確かな手応えを掴む。これが私の大きな転換点となった。
 
その後、私は常に制服で生活をした。休日でも制服に袖を通すところから始まる。あまりの極端さに呆れた祖父が、昔着ていた背広を一着くれた。私の制服はブレザーだったので背広を着ることにはなんの抵抗もなく、すんなりと受け入れた。
その後は、親戚から使わなくなったネクタイや若い頃の背広などを集めてコレクションを増やしていった。友達と遊びに行くときも、学校行事で私服行動が許されるときも、常にスーツで臨む。中学生でスーツを着ているのは私だけだったので、いつしかスーツとネクタイが私のトレードマークとして同級生たちに認知されていった。
この頃には自信がついてきたためかいじめも下火になって、いじめてきたガキ大将と友達になり、今でもたまにつるんでいる。
中学三年生の冬、スーツに合うようにと、親がトレンチコートを買ってくれた。真っ黒でシュッとしたそれは、中学生の心を掴んで離さない。だが、いざ着てみると何かが足りない。鏡を見つめてじっと考えていた。
不意に、母が当時被っていた派手めの帽子を頭に乗せてみた。あ、これだ。これが足りなかったのだ。コートで全身を覆ってしまうと黒一色となり、髪の毛も黒いから、ただ一つの塊のようになってしまう。これではダメだ。せめてもう一色欲しい。そのために以後帽子をかぶるようになった。
 
コートは冬限定だが、帽子はどの季節でもいける。高校は私服だったのでずっと帽子をかぶって過ごした。そして私のあだ名は服部の名前をもじって「ハット」となった。もはや誰も私のセンスにケチを付ける奴はいない。
 
ただ、客観的に見れば、私の服装はあまりにも奇抜過ぎたはずだ。それでもどうして批判する人がいなかったのだろう。大人しくしていた小学校時代の方がむしろ目をつけられることは多かった。
きっと、ファッションは実際に似合っているかどうかよりも、「似合っている」と自分を信じられることのほうが大事なのだ。似合っていると思えば、自然と背筋も伸びて姿勢も良くなる。
これを読んでいる人の身近にも、奇抜なのにそれを指摘されない人がいるのではないだろうか。彼らはきっと、堂々としているからこそ下手に指摘すれば反撃されると思われている。
ファッションは心の武器となり、私たちを守ってくれる存在だ。せめて顔が良くなくても、襟を正して生きていきたい。
 
 
 
 
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2019-05-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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