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メディアグランプリ

「令和初の誕生日」

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:若葉(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「令和初の誕生日、お休みとって夫婦でどこかに行こう!」
 
新しい元号になって、初の誕生日を5月半ばに迎える。わたしはその日に仕事を休ませていただき、夫と二人でデートしようと密かに決めていた。
 
わたしたち夫婦は結婚するまで大阪と東京の遠距離恋愛。結婚を決めたのもお腹に新しい命が宿ったからで、結婚後の最初の誕生日にはすでに子どもが生まれていた。だから意外にもこれまで二人きりで誕生祝いをしたことがない。
 
世の中では「亭主元気で留守がいい」なんて言われている。それなのに二人でお祝いしたいなんて思うのは、昨年わたしが生まれてはじめて健康診断で再検査になったからかもしれない。
 
わたしの知り合いにがんが見つかり、子どもたちを残してあっという間に旅立っていった人がいる。まさか次の年の誕生日を迎えられないとは思ってもみなかっただろう。再検査になったことで、自分も来年アタリマエのように誕生日を迎えられないかもしれないと感じたのかもしれない。
 
人生いつ何があるかわからない。もし来年自分がこの世にいないとしたならば、人生最後の誕生日をどう過ごしたいか?
 
そう思ったら、夫婦水入らず過ごす誕生日がいいなと思ったのだ。
 
子どもたちと一緒に家族でお祝いしてもらうのはもちろん嬉しい。しかし子どもたちも大きくなり、それぞれの生活が忙しくなっている。二人でお祝いしてもバチは当たらないだろう。何より自分自身がそうできたら嬉しいなと思ったのだ。
 
平成最後の誕生日に二人ではじめてランチを食べに行った。鎌倉の新緑が生い茂っているカフェで美味しいコーヒーを飲みながら色々なことを話した。霧雨が降っている中、時々テーブルに小さな虫が雨宿りしにくるテラスで、たわいもない話ができることがなんと幸せなことなのだろうと思った。
 
だから令和初となる誕生日も夫婦で過ごしたいなと思って、一人わくわくしながら、誕生日にどう過ごそうかを考えていた。
 
そんなある日、夫からLineで
 
「もしかしたら、今年の誕生日は仕事になってしまうかも……」
 
と連絡があった。夫は昨年仕事で大きな受注をしてから、これまで以上に朝早く出掛けて、日付が変わる時間に帰ってくる日々を過ごしているので当然仕事が入ることも予想された。とは言え、心のどこかできっと休みにしてくれるに違いないと信じていた。
 
しかし期待は見事に裏切られた。10連休という大型のゴールデンウイークの真只中、私たちは家族で旅行をしていた。その旅行中の何気ない会話の中で夫が
 
「今年の誕生日は出張で泊まりになってしまってごめんね」
 
と言った。
 
「えっ? 聞いてない」
「え、言ったよ」
 
となり、今までにないガッカリ感が急に襲ってきた。実際は言っていたのではなく、Lineで「泊まりになりそう」と伝えてくれていたのだが私は自分に都合の良いように解釈していたのだろう。全くその情報が頭に残っていなかった。
 
「ごめんね」
 
と謝る夫に私は感情に任せて
 
「そういう人だって、わかったから。もう、いいよ」
 
と捨て台詞のように吐いた。もう、せっかくの楽しい旅行が台無しだ。
こうなるともう自分の気持ちを一旦受け止めて、整理しないとどうしようもない。
わたしはその夜に自分にどうしてそんな感情が芽生えたのかを問いかけてみた。
 
自分の中に誕生日は特別な日という気持ちが強いこと。その特別な日に夫と一緒に過ごしたいと思っていたのに仕事で泊まりになり、全く一緒にいられないことにガッカリしたこと。別の日にお祝いしようと言われたことで自分は大切にされていないのではないかという解釈に至ったことなどがわかってきた。
 
自分の感情を丸ごと受け止めた。すると不思議と少し気持ちが楽になった。
 
決まったことはどうしようもない。自分が大切に思ってくれていないと感じただけで、相手は大切に思ってくれているとしたら、今の状況をどう感じているだろう?と問いかけてみた。
 
すると、きっと私と同じように悲しい気持ちになっているだろうなと想像できた。
 
どうしたら自分も家族もみんながハッピーな気持ちで誕生日を迎えられる?
 
そう問いかけて少しずつ見えてきた。変えられない事実にやきもきするのではなく、その気持ちを認めて、自分が心からやりたいことをやろう。もっと素直になってみよう。
 
気持ちがだいぶ軽くなった。
 
今年の誕生日はずっと行けなかった献血に行って、応援したい団体に寄付をして、美味しいランチを食べながら、これからの未来について考える時間を持とう。帰りに本屋さんや雑貨屋さんをみてまわり、どんなものにココロが動くかを感じてみよう。
晴れていたら、帰りに江ノ電に乗って夕日を見て、駅で次男と合流して2人で美味しいものを食べて帰ろう……
 
こうして自分と対話することで悶々とした気持ちがいつの間にかなくなって誕生日がくるのが楽しみになっていった。
 
次の日普通に夫婦で会話する私をみて、娘は
 
「仲直りしたのね」
 
とからかって言った。いや、ケンカはしていない。
わたしが一人で怒っていただけだ(笑)
 
令和初の誕生日は夫婦で過ごせないが、自分と対話し心からやりたいことをすることで思い出に残る1日になることだろう。
 
今は早く誕生日が来ないかなと待ち遠しい。
 
 
 
 
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2019-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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