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メディアグランプリ

手塩にかけていい塩梅


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松本 ようこ(ライティング・ゼミ火曜コース)
 
また今年もこの時期がやってきた。年に一度の梅の大仕事。
 
我が家は夫と分業制で仕込みの仕事がある。夫は、味噌とポン酢の仕込み。私は梅と山椒、そして栗の加工担当だ。始めは「どうやって作るんだろう?」という好奇心から始まった。作ってみると、これがまたとてつもなく「美味しい!」のだ。我が子自慢ならぬ、まさしく手前味噌。
 
自家製のものを作っている、というと「大変でしょう」と言われることがあるが、そうでもあり、実はそれほどでもない。コツと段取りをきちんと把握するまでは大変に思うこともあるが、そのポイントを押さえればかなり手際よく短い時間で仕込みを進めることができる。
 
私担当の梅は、カリッカリの小梅の梅干し、梅シロップ、そしてカリカリの甘い梅干しの3種類を仕込む。どれも外せない。どれも美味しいから。でも、どれか一つ作れるだけの量の梅しかなかった時、私は迷わずカリッカリの小梅の梅干しを作る。娘の大好物でお弁当に欠かせない一品。我が家で作るこの梅干しほどのカリッカリ具合の梅干しに店頭で出会えることは稀だ。しかも旬のものなので、後で足りないからと追加で作れないのだ。1年分の消費量を推測して仕込まねばならない、大きな賭けのようだ。
 
梅なら何でもいいかというとそうではない。カリッカリの小梅の梅干しは、出始めの青い固い梅を、シロップには少し熟したいい香りの梅を、私は使っている。だから毎年、この時期は気が抜けない。馴染みのお店に並び始めるタイミングを虎視眈々と注視する必要がある。
 
先日、お店に買い物に行った時、「松本さん!今日、今年初の小梅が入りましたよ」と声をかけて頂いた。今買うべきか、少し先送りにするか。手際よくできるようになったとはいえ、半日は時間を確保したい。そして、買ったら即仕事に取り掛かりたい。鮮度も重要なのだ。しばし考え、時間が取れると判断。会計を済ませて店を出ようとして、「おっと、いけない!」 梅の次に重要な塩を買い忘れている!カリッカリの梅干しを作るには、梅の総量に対し10%~15%の塩を使う。
 
さて、いきなり難関の大仕事をする羽目になる。だがこの作業は全行程の7割だと言っていい。ここを根気よくやりおおすことができれば、ほぼ作業は終わっているといって過言ではない。小梅のヘタをとる。爪楊枝を使って、弾くように。小梅の1㎏と中梅の1㎏では、ここの大変さが大きく違ってくる。もう1㎏の小梅は、半端ない個数なのだ。しがみついてるように梅にはりついているヘタもあって、木の爪楊枝なら、2本も3本も替えて使わないと途中で用をなさなくなる。
 
このヘタとりだが、ただ大変なだけではない。無心になってやっていると、一種の瞑想状態になることがある。思いがけず、忘れていた昔のことを思い出したり、いいアイディアを思いついたり。有益な時間になることもあるので、そちらを期待したい。
 
山頂を目指すようにヘタを取ったら、次は気持ちも軽やかに下山をするのみ。まず梅は優しくさっと洗って、たっぷりの水に1時間~2時間浸す。それ以上浸すと、実が水を吸ってしまってカリカリの仕上がりにはならないので、要注意だ。水に浸したら、ザルに揚げて水を切る。水気がきちんと切れてるほうがその後の作業がスムーズにいくとは思うが、神経質になる必要はない。
 
大きめのボールに梅を入れ、35度の焼酎をふってまんべんなく絡める。大きすぎるかな、と思うくらいのボールのほうが作業は楽だ。焼酎は殺菌と早く梅酢を上げることが目的だ。カビなどを生やして失敗しないための策だ。
 
そしていよいよクライマックの作業に入る。大変な作業はもう終わっているが、作業の肝はここからだ。分量の塩を入れる。そして梅を傷つけないように塩を強く押し付けるようにして揉む。始めは若草のような緑だった梅が、だんだん夏の深い緑のような色に変わり、じんわり汗をかいてくる。水が出てしまうとしぼんでしまうのでは?と思うかもしれないが、ここでしっかり塩もみすることがカリッカリに仕上げるポイントだ。揉み方が甘いと、予想に反してフニャフニャの梅干しになることは体験済みだ。手に塩、手塩にかけて5分間もやれば十分だろう。
 
梅干しを入れておく瓶の容器は煮沸を忘れずに!1㎏の小梅には3ℓの瓶で十分だろう。煮沸をした瓶に塩もみをした小梅を入れる。蓋をして、冷暗所に置いておく。午前中に仕込んだら、夕方にはもう梅酢が上がった来る。毎日2~3回容器をゆすって上下を返す。梅酢が全体にいきわたるようにする。1週間もすれば出来上がり!
 
この状態では黄緑のような色のまま。これを赤く、かわいい小梅に仕上げるには赤紫蘇にご登場頂かなければいけないのだが、赤紫蘇が出回る時期ももう少し後なのだ。赤紫蘇が出てきたら、塩もみしてアクをとり、絞ったものを小梅の上に乗せる。じんわり赤い色が梅に移っていくが、時々上下を返すと全体的にきれいに赤い色になる。
 
最後に重要なポイント。カリッカリの梅干しは、普通の梅干しより使用する塩の量が少ないので傷みも早い。天日干しもしないので、常温保存しているとじんわり水分が出てきてしまって、カリッカリでなくなるのだ。小分けの瓶に移して、冷蔵庫の住人になってもらうのが、最高の状態を維持する方法だ。
 
どんなにお弁当作りで忙しい朝も、白いご飯の上に乗っている梅干しを見ると、惚れ惚れと見とれてしまうことがある。カリッ、カリッ。食感のいい歯ごたえと、口に広がる酸っぱさと梅の香り。いい塩梅だ。
 
 
 
 
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2019-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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